化学プラントの機電系エンジニアという、レア職場を目指そうとする機電系学生の方々への情報としてまとめました。
化学プラントの機電系エンジニア(オーナーエンジニア)はいろいろな理由で、競争率が非常に低いです。
学歴やバックグラウンドである知識を、深く問われません。
何tのなく機械の知識があるだけで、採用される確率はグッとあがります。
なぜそういう状況にあるのか、背景の部分を説明したいと思います。
各社の採用HPに書いてある先輩社員の情報と、同じ感度で扱っていただければと思います。
(HPに自分が載ることなんてないから、代わりにここで主張しているだけとも言えますけど・・・)
化学プラントでの機電系エンジニアの立ち位置
化学プラントでの機電系エンジニアの立ち位置を最初に紹介しましょう。
この辺は採用活動でもあまり語られない部分ですね。
少数精鋭
化学プラントで機電系学生を代表するときに使う便利な表現。
少数精鋭。
正しいのは、「少数」という部分だけ。
少数というのは色々な背景を予想できる単語です。
- 学生にとって人気のない職場
- 会社にとって必要性が少ない職場
- 従業員にとって魅力的でない職場
学生・会社・従業員という3つの軸で見ても、こんな表現が可能です。
少数であって精鋭ではないというのは、機電系エンジニアの学歴を見る方が速いでしょう。
- 院卒よりも大卒の方が多い(いれば目立つ)
- 旧帝出身者はほぼいない(いれば目立つ)
旧帝国大学の院卒というとそれだけで圧倒的な立場を取りえます。
化学系の技術者たちが旧帝国大学や院卒の人だらけなので、相対的に見れば精鋭ではないことは明らかです。
せめて学歴だけでも同じ大卒・院卒にしておいて劣等感を植え付けさせたくない!
こんな思いが人事含めた採用側にはあります。
大事にされる
化学プラントは設備産業の1つなので、設備に関するニーズは強いです。
化学系の学生は他にも学ぶべきことがいっぱいあって、周辺知識としての設備という位置づけですが、できるなら他のことを優先して勉強したいと彼らは考えます。
専門家である機電系エンジニアがいるから任せていればいい
こんな思いを持っています。
少数精鋭で自分たちが専門的な知識を持っているという立場にあるから、結構大事にされます。
「忙しいところ悪いですね・・・」
こんな感じで相談を持ち掛けられるのが普通です。
依頼者の方が本当は忙しいのですけど、そんなことすら気が付かないで「自分たちは忙しいんだ!」って被害者ぶる機電系エンジニアもいるくらい(笑)
出世競争が緩い
少数であるがゆえに、化学会社の中でも出世競争は緩いのが機電系エンジニア。
化学系学生が課長に上がるためには狭い枠を勝ち残っていかないといけませんが、機電系学生は母数が少ないので枠を取り合うなんてことにはなりません。
課長くらいまでなら年次の差こそあれ、大きなミスをしない限りは昇進しますが・・・。
若いうちに課長に上がるかどうかはモチベーションに結構影響を与えます。
高学歴の機電系学生にとってはぬるま湯で良い職場だと思っています。
私が学生時代も、周りの人はいかにして緩い職場を見つけるかを考えている人が多かったから(笑)
その代わり意識高い系の方々には辛いですよ。
知らなくて当然
化学プラントで機電系学生は何も知らなくて当然という下駄を履いた状態で見てくれます。
化学系学生は、学校で学んだから化学プラントのことなんてある程度知っているだろう、と見られますが
機電系学生は畑違いであることを認識してもらえます。
これって結構なメリットです。
会社に入ってから勉強するだけで十分カバーできます。
車やバイクなら大学の勉強で学ぶ知識以外に、自分で調べたり使ったりして入社前に理解を深められます。
そういうバックグラウンドが機能しやすい業界に比べて、化学プラントはバックグラウンドが皆無(笑)
大学の勉強をしっかりしただけで十分な優位性が出ます。
就活での大きなアピールポイントです。
機電系の知識と機電系エンジニアリングの関係
機電系学生が大学で学んだ知識が化学プラントの機電系エンジニアリングでどういう風に活かせれるか見ていきましょう。
幅広い基礎知識を学ぶ機電系学生だから、当然化学プラントでも使えますよ。
潰しが効く機電系学生のメリットですね。
流体力学
流体力学は四力の1つです。
四力とは材料力学・熱力学・流体力学・振動工学のことです。
流体力学は流体をフル活用する化学プラントでは、重要度が高い学問です。
とはいうものの、現実的に使用するのは圧力損失だけですけどね^^
それでもスキルとしては立派なもの。
ポンプの設計での配管摩擦損失計算や熱交換器の摩擦損失計算など、計算式は文献を引用すればいいですが、検証するためには流体力学的な考えが必要です。
材料力学
材料力学も四力の1つです。
機電系エンジニアとして化学プラントで、常時フル活用するスキルではありません。
ですが、至る所でこの考えを使っています。
- タンクの強度計算
- 配管ラックの強度計算
- 作業架台の強度計算
- 振動機器の強度計算
- 架構の強度計算
化学プラントにある設備の強度という時、材料力学が必ず必要です。
応力・ひずみの関係や、梁のたわみの計算式など
材料の強度を決めるための各種仕様の概念を知っていることは、機電系エンジニアとしては非常に強いです。
架台の柱の大きさを土建が決めるのを待たないと、配管の施工ができない
こんなケースはありがちですが、機電系エンジニア側で概略の計算を行って「200mmを越えることはないから、この範囲で配管を通してほしい」といった条件付けをその場で行うことができます。
使いこなせれば便利です。
材料学
材料学は、材料に関する知識のことです。
汎用的な名称は何でしょうね?良く分かりません。
私の学生時代は材料基礎学なんて言い方をしていましたっけ。
- 鉄やステンレスがどういった組成であるか
- 腐食のパターンってどういうものがあるのか
- 材料の分子構成がどうなっているか
いろいろ暗記することが多い科目で、好きではありませんでした。
化学プラントでは、鉄やステンレスは日常的に使いますし、腐食も大きな問題になります。
これは会社に入ってからも勉強できますが、学生時代に知っていると大きなアドバンテージになります。
「この内容、見たことがある!」って某通信教育の漫画の一コマと同じような展開を体験できますよw
制御工学
制御工学は古典制御、特にPIDに関する知識です。
化学プラントではDCSを使った制御をするので、制御工学は大事です。
機械設備設計エンジニアであればほぼ使いませんが、制御エンジニアはフル活用するでしょう。
機械設備設計エンジニアでも制御エンジニアでも、いつ製造部の管理者になるか分かりませんからね。
その時になって慌てても遅いですよ^^
制御工学は極めて数学的な概念なので、機電系エンジニアの方が得意なはずです。
化学プラントの製造部の人が得意気な態度を取っていますが、物怖じする必要は全くありませんよ。
経験する機会の差だけの問題です。
化学の知識は最低限
化学の知識はプラントエンジニアでも最低限必要です。
これは高校化学レベルの話です。
大学に入学するまでに化学をちゃんと学んでいれば十分です。
あとは会社に入ってから化学工学を学べば十分に活用できます。
化学のことは知らないから化学会社はちょっと・・・
なんて敬遠する必要はありませんよ。
志望する機電系学生みんな化学のことは知りませんから。
化学プラントの機電系エンジニアの学歴
化学プラントの機電系エンジニアの学歴分布を紹介しましょう。
設計は大卒
設計は大卒が多いです。大卒もしくは修士卒です。
高卒・高専卒は0%、博士卒も0%露骨です。
工場内の化学系の学生と学歴だけでも揃えておこうという意思表示です。
設計の仕事は
- 複雑な計算が必要
- 全体を俯瞰する能力が必要
- 勉強をいっぱいしないといけない
というイメージがあり、大卒者のイメージにピッタリ当てはまります。
実際に高卒・高専卒がこの仕事をできないというわけではありません。
でも、傾向としては明確に出ています。
高卒・高専卒で設計を担当しても、長続きしません。
年々この傾向は強くなっていきます。
学歴だけを整えても、設計者は大学の差で能力ギャップを感じます。
化工系学生だった人はあれだけちゃんとしているのに、機電系学生だった私は何てこんなにできないのだろう。
本当に多いです。
現在では非常に大きなテーマになっています。
保全は高卒
保全は高卒が非常に多いです。
大卒・修士卒は数%、高卒・高専卒が99%以上。
こちらも露骨です。
保全の仕事は
- 現場・現物主義
- 製造部・メーカー・工事会社と橋渡しをする
- 考えるより先に行動
という側面が強いからです。これも高卒・高専卒のイメージだそうです。
それ以上に、保全が「体を動かせばいい」というマッチョ思想が問題です。
保全を学問的・体系的にとらえようとしない思想は、日本の製造業のほぼすべてに浸透しています。
私が働いている会社でも、保全の価値を上げるべく大卒者を入れようとしていますが、
大卒で保全を担当しても、長続きしません。
保全という立場を明確にして学術的・技術的な意義を設けてあげないと、院卒なのに保全というワードが劣等感を生むだけの結果になります。
保全を学んだ後で設計に活かせればいいのですが、その橋渡しが中途半端であることも問題。
入社して最初に保全を学びきってしまうと会社の勉強はこんなもんで良いのだと勘違いして、いざ設計をしようとしたら思考力が追い付かない、なんてことも起こりえます。
機電系エンジニアに大卒は不要
化学プラントの機電系エンジニアに大卒が必要ないと私は考えます。
課長クラスでも同じ考えを持つ人は結構います
大卒クオリティの低下
そもそも大卒者のクオリティは恐ろしい勢いで低下しています。
これは日本の教育の問題と直結しています。
- 素直すぎる
- 自己主張はするが論理性はない
- 分からなくても調べない
この辺の本人の資質的な部分の低下が、目立ちます。
私の周りの人間が、たまたまこういう人たちなのでしょうか。
かなり共通しています。
大学で習得すべき知識を問題にしているわけではありません。それ以前の問題です。
まぁ、大学で習得した知識も疑わしいものがありますが、会社に入ってから学ぶことの方が多いのであまり問題視していません。
上で述べた資質的な部分は、会社に入ってから鍛えられるようなものではありません。
高卒者の方が頭が固くなっていないという意味で、まだ成長できる可能性が高いです。
4年間学んだ成果が低いなら、高卒者から4年間かけて社内で育てた方が良いという意見は真っ当です。
大卒の優秀な学生は化学プラントを応募しない
大卒の特に機電系専攻者は、就職先が非常に多いです。
無理して別畑である化学プラントなんて目指す必要がないくらいです。
そうすると、化学プラントに入社する機電系専攻者は、自ずと優秀ではない学生が集まりやすいです。
他に行ける会社が無かったからなんて理由が成立するくらい。
昨今の教育の結果から、地元愛が強い大卒の人も増えています。
日本全体としては好ましいですが、企業としては好ましくないですよね。
リクルートをしていると大企業に対して平気で「地元が良い」と発言する高学歴大学の人がいるくらい。
機電系学生なら無理して化学プラントに応募しなくても、機電系の知識を使える場所はいっぱいありますからね。
この選択肢の多さに対してより都会の候補がある場所を探すという選択肢は、当然のことでしょう。
高卒の優秀な人を募集できない
大卒者の募集を継続していくと、高卒者の採用ができません。
- 募集枠の問題
- 高卒者が入社しても気後れする
- 学歴マウンティングが起きる
大卒者に限定することが、デメリットとなります。
高卒の上位層 > 大卒の下位層
これは間違いないです。
高卒者はその地域の専門高校でみっちり学習しています。
その選りすぐりを採用することができれば、社内でじっくりと鍛え上げることができます。
幅広い地域の大学から募集しても反応がないのであれば、近くの優秀な人を探す方が良い。
こう思うのですが、なかなか状況は変わらず・・・。
編入なんて気にしない
少数精鋭である化学プラントの機電系エンジニアでは、編入なんて気にする余裕は全くありません。
有名大学とその付属大学が合併して、最終学歴が有名大学だった
っというケースは何度も見てきました。
最終学歴があっていれば何でもいいと思っているでしょう。
化学系学生と機電系学生を同じ学歴に統一させることに、会社は全力を費やしているとしか思えません。
大学や高校で失敗したけどワンチャンスに期待して大手会社に勤めたい
と思う人にはこのパターンは使えます。
編入生だから・・・なんて劣等感を感じずに就活できると思います。
ただし、入社後は要注意ですよ!
なんだかんだ言って学歴は入社後の成長速度に影響しますので、入社してから劣等感を感じる編入者は多いです。
早いうちに見切りをつけて保全に選任する人もいれば、10年くらい設計を続けてようやく劣等感に目覚めた人も。
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最後に
機電系学生と化学プラントの機電系エンジニアの関係について解説しました。
機電系エンジニアの化学プラントでの位置づけと、機電系学生が学ぶ知識の活用例を紹介しました。
機電系エンジニアの学歴にも触れ、大卒信仰の危うさも解説しています。
高学歴機電系エンジニアには割とおススメですよ。
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