機電系エンジニアの仕事は設計や保全だけでなく、意外にも多くの事務作業が伴います。大手企業ではエンジニアの5割から8割が事務仕事をこなしている現実もあるほど。しかし、パソコンスキルが苦手なエンジニアが多く、その事務作業を効率よくこなせる人は決して多くありません。
本記事では、機電系エンジニアにおける事務仕事の実態と、そのスキル不足が現場に与える影響について詳しく解説します。
事務仕事もエンジニアリングの技術的能力と言ってしまいましょうか。それくらい大事。逆に言うと事務仕事のスキルが高くて、エンジニアリングもできる人は重宝されます。
この記事は機電系エンジニアにとってはかなり耳の痛い内容です。日々勉強していかないとどんどん差が開く分野ですので、私も含めて意識して勉強したいですね。
パソコンが苦手
機電系エンジニアはとにかくパソコンが苦手です。
メンバー内でパソコン能力の幅は出やすいですが、高い層でもいうほど高いものではありません。
一部の人はブラインドタッチができません。
そこまでひどくはなくても職場全体の8~9割ができていない部分をターゲットにします。
Excelが苦手
機電系エンジニアはExcelが苦手です。
極端に言うとExcelさえできれば事務仕事はベテランと言える世界。
そのExcelができないということは事務仕事ができないということ。
- コメントを打てない
- 使える関数は四則計算のみ
- フォントはデフォルトしか使わない
- 半角と全角が混じっている
- ハイフンとマイナスの区別がつかない
- とにかくセルを結合する
- グラフが作れない
Excelのレベルとしてはかなり致命的ではないでしょうか。
以下のようなことをするだけで、「神扱い」されます。
- SUMを使う
- 条件付き書式を使う
- IF文を使う
- その他の特殊な関数を使う
- TRUE/FALSEを使う
- それっぽいグラフを作る
- ピポットテーブルを作る
- 社内のPIデータを引っ張ってくる
- 複数行を使って、微分方程式を禁じ計算する
いや、もう、何とも言えませんよ。。。
マクロなんて夢のまた夢。
保全業務なら紙と電卓で計算することも。
フォルダ整理ができない
機電系エンジニアはフォルダ整理ができません。
フォルダの体系を一元管理しようとせず、闇雲に作っていくため整理ができません。
パソコン内でデータは整理せずにサーバー内でデータを共有するようにしていても、
どこにデータが格納されているか分からないという致命的な問題が起きます。
誰かが休みの時に代わりの人がフォローできるように整理しておくべきなのに。
そんなことには思いを寄せずに、自分勝手に情報を整理しようとする人ばかり。
自室の部屋を整理できない人・机の上を整理できない人も同じような傾向にあります。
デスクトップがごちゃごちゃしていたりショートカット集を作ってなかったりしますね。
一度体系を作り上げたとしても、すぐにカオスな状態になっていきます。
計算ソフトが作れない
機電系エンジニアには計算ソフトの類が必要ですが、これを作れる人が激減しています。
四則計算しかできないのであれば当然の結果ですね。
- 圧損計算
- U値の計算
- 強度計算
- 撹拌計算
この辺の汎用的な計算は以前はExcelで簡単な計算ソフトを作っていました。
今ではその計算ソフトを使うだけで、改良したり新たなソフトを開発することはできません。
そんなスキルを持った人がいません。
一般的な科学技術計算ならネットに転がっているかもしれませんが。
ちょっとした痒いところに手が届かないような計算ソフトは、自分たちで作るしかありません。
できなければどうするか?
誰かに依頼するしかありませんね。
設備メーカーや図面屋さんに依頼します。
今では図面屋さんの方がよっぽどまともな科学技術計算をしています。
転記の類を自動化するソフトを作るという発想も乏しいです。
実作業工数を減らせる分かりやすい部分なのに。
今まで手で転記していたから、何も疑わずに手で転記。
計算条件をいくつか試すといった頭を使う系はほぼ絶望的です。
与えられた条件に対してソフトに入力して計算結果が出れば終わり。
結果の検証なんてしません。できません。
これが機電系エンジニアの実態です。
図面を作れない
機電系エンジニアは図面を作れません。
P&IDや略フローならまだ大丈夫ですが、スケルトンレベルになるとかなり怪しいです。
私がこのブログで書いている図面レベルは超高級と言えます(笑)
それくらい図面を作る能力がありません。
Excelだから難しいというわけでなく、CADが扱えるわけでもなく、手書きでもできない。
とにかく話し言葉だけでその場を乗り切ろうとするエンジニアばかりです。
図面屋や工事屋に対して口頭で指示して、結果を見て合否を判定する。
エンジニアとは言い難いですね。
ググれない
出オチの予感がしますね。
ググるという基本的なことをしようとする人が非常に少ないです。
なぜかサーバー内を検索かけて終わりという人が多いです。
機械エンジニアの業務で何か問題があったとき、専門用語が問題になるケースは非常に多いです。
この専門用語の具体的な意味は?定義は?
そこに立ちかえることで解決策がでることは多数あります。
- ググらずに・誰かに聞かずに・紙の書類を調べずに、頭の中で必死に考えて時間を使う。
- 分からなければ早めに相談をといっても相談しない。
- 相談したと思えばすぐに答えを求める。
これが機電系エンジニアの実態です。
答えではなくて答えの探し方を自分の中で確立するのが大事でしょうに。
データの概念を持っていない
機電系エンジニアはデータという概念を持っていません。
パソコンで生成した物はすべてデータであり、このデータを他のデータと合わせて有効に活用するのが、パソコンを使う意味。
ところが、パソコンを手入力の代わりとしてしか認識せず、保管資料を削減した程度にしか思っていません。
だからこそ入力ルールや保管ルールなどに思いを寄せようとすらしません。
半角カタカナとか、全角の数字とか見ていると気分が悪くならないのかな・・・。
文章を作れない
機電系エンジニアは文章を作るのが苦手です。
分かりやすい文章を作るというチャンスが極端に低いです。
卒業論文や修士論文の作成時に鍛えるべきスキルですが。
なぜか育っていません。
- 一文がA4の3~4行に渡る
- 話し言葉をそのまま書き起こす
- 不必要な修飾語が多い
- 主語述語関係が分かりにくい
文章の作り方を学ぼうとしないエンジニアが多いから、最低限でも箇条書きだけを徹底するようにしています。
そうすると長文を作るということは夢のまた夢に・・・。
大見出し・中見出し・小見出しのような概念も薄いです。
見やすい文章を作ることはほぼ不可能です。
タスク管理ができない
機電系エンジニアはタスク管理ができません。
プロジェクトにおいてタスク管理は基本中の基本。
というか仕事において優先順位を決めて管理するのは特殊なことではありません。
ところがタスク管理ができないようです。
工程表は作って満足
機電系エンジニアにとにかく工程表を書かせるのはタスク管理のためです。
作ったきり見直さないので意味をなさない工程表だらけですが。
工程表といっても、マスタースケジュールのようなものしか作りません。
個々のジョブについてステータスを明らかにして期限を決めるようなことはしません。
そのジョブが自分にボールがあるのか相手にボールがあるのかも曖昧。
相手にボールを渡すと渡したまま管理せずに忘れ去っていることも。
かといって個別のスケジュールを作ろうとしたら工数が掛かっていきます。
プロジェクトレベルならそれでもいいですが、個々の簡単な仕事の集まりでもそれをやろうとするのはちょっと無理があります。
バッチ系化学プラントのオーナーエンジニアで完結する程度の簡単なジョブなら、変に管理するよりは個々のタスクを即決即断する方がよっぽど確実です。
こういうことを理解せずに、DXでスケジュールツールの導入と見える化とかやりがちなのがJTCですよえん。
付箋をパソコンに貼付
タスク管理って一般的にどうするでしょうか?
機電系エンジニアは原則的な方法としての付箋を多用します。
付箋がパソコンや机の周りにいっぱい貼ってあります。
これでタスク管理なんてできているのだろうか?
疑問に思います。
案の定タスク管理はできていません。
パソコンに付箋機能があるよって言っても「なんか紙の方が安心する」って言って紙の付箋を使うくらいです。
付箋では足りないからメモ帳を机の上に置いてある人も。
催促メールに頼る
タスク管理ができない機電系エンジニアは催促メールに頼ります。
週報や月報などの定期的に行う事務処理も催促メールが来ない限り対応しません。
タスク管理ができず他人に依存している格好です。
定期処理の管理ができない以上、非定期のプロジェクト管理なんて無理に決まってますよね。
とにかく電話
機電系エンジニアはとにかく電話を好みます。
- 電話は緊急性があるときのみ。
- 電話は相手の時間を奪う
こんな発想はおそらく持っていません。
相手の都合なんて気にしてられないからお互い様。
そこまで毎日追い詰められた仕事の仕方をしているの?って疑問に思います。
保全業務で時間との勝負になる場合があるのは分かりますが、それにしても電話に頼りすぎな印象があります。
会議中でも電話が出れば平気で抜け出して対応します。
そこまで緊急性がある内容なら上司に報告があってもおかしくないのに、報告はありません。
会議の時間の前後に調整できる内容ではないのか?疑問です。
小さな工場では現場の対応を優先せざるを得ない部分はありますが。
電話を拒否してメッセージを送るなんて高等テクニックは使いこなせませんからね!
とにかく口頭
機電系エンジニアはとにかく口頭で対応する人が多いです。
口頭が確実だからなのか、パソコンなどのスキルが無いからなのか
卵が先か鶏が先なのか良く分からなくなってきました。
いずれにそろ、パソコンのスキルを向上させるという方向にはなかなか移りません。
現場を移動し口頭で対応し、不可能な場合は電話で対応する。
こうやっていると忙しい感は出て、ある種の満足感は得られるでしょう。
けど、そんな満足感は長続きしませんよ。
参考
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さらに知りたい方は、以下の記事をご覧ください。
プラントエンジニアに向いている人
機電系エンジニアと学歴
機電系学生を幅広く求める理由
オーナーエンジニアの立ち位置
設備保全のキャリア
保全こそが生き残る
新卒と転職
転職者のキャリアパターン
生産技術がつらい
言語化が大事
教育方針
最後に
機電系エンジニアにとって事務仕事は不可欠な業務の一つですが、多くの人がパソコンスキル不足で苦労しています。Excelの基本操作からデータ管理、計算ソフトの改良、図面作成、タスク管理まで、幅広いスキルが求められています。
これらのスキルを磨き、電話や口頭だけに頼らない効率的なコミュニケーションを取ることが、現代の機電系エンジニアには必要不可欠です。パソコンスキルを向上させることで、仕事の質とスピードを大きく改善できるでしょう。
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