機電系エンジニアにとって苦手なテーマである、広い視点。
普段、部品などの細かい点に目を向けないといけないため、少し広くものを見ようとする訓練ができにくいです。
ビジネスというと一般に広いイメージを持ちますが、機電系の仕事も立派なビジネス。
視野を広げるためにも、一歩広げたものの見方をしてステップアップしたいものです。
機電系エンジニアの仕事で、少し広い見方をしようとするときには「分かりやすさ」が1つのポイントだと思っています。
具体例を使って説明していきましょう。
故障履歴
視点の話で真っ先に思いつくのが保全の故障履歴です。
保全では設備に関する多くのデータを扱います。
例えば故障履歴が典型的な例でしょう。
昔ながらの紙で整理していたり、設備管理システムを導入していたり。
そのとぢらでも、故障原因の分類の問題が起きます。
機器 | 故障原因 | 費用 |
P-1 | 摩耗 | 10万円 |
P-2 | 運転ミス | 20万円 |
P-3 | 閉塞 | 10万円 |
P-4 | 冷却不足 | 30万円 |
細かい原因に分類する例
機器 | 故障原因 | 費用 |
P-1 | 寿命 | 10万円 |
P-2 | 運転 | 20万円 |
P-3 | 運転 | 10万円 |
P-4 | 運転 | 30万円 |
原因を絞った分類をする例
故障原因として、一般に多くのワードを設定することが可能です。
おそらく20~30くらいは可能でしょう。
発生した設備トラブルに対して、どのワードが適切かを選ぶだけでも結構大変です。
原因をちゃんと分析していないと、いつまでも入力ができません。
分析にはメーカーに依頼して時間が掛かること(泥沼にはまること)もあります。
そうしているうちに、データは蓄積していきます。
よくある例として、思い切って適当に選んでしまいますが、何のためのデータ整理なのか分からなくなります。
であれば、故障原因の設定の仕方がおかしい、と考えるのが視野の問題です。
多くのワードの中から適切な物を選ぶのが難しければ、その数を少なくして分かりやすくすればいいでしょう。
ここで故障原因を分類するのは何のためなのかを考えることになります。
ケースバイケースでしょうが、今保全をしている人の中でこれを簡潔に答える人は少ないと思います。
今回は、①設備の寿命と②運転の失敗の2つに分けてみました。
これは①通常の使い方でも消耗していくものだから定期的な交換が必要なものと②使い方をちゃんとしていれば防げたもの、という仕分けをする目的です。
メンテナンスの周期を決めて、その通りに進めていけばトラブルがゼロに限りなく近づいていくだろうという考えですね。
生産技術部と製造部の2つのどちらに責任があるか、と責任の押し付け合いのようにも見えてしまうので、表現とその考え方はしっかりしておかないといけません。
設備の仕様
設備の仕様は、標準化・ユニット化していく方が良いでしょう。
保全をしていく上で、多くの設備が均一化できればやりやすいと誰もが一度は考えたことがあります。
その分かりやすさはとても大事なことですが、意外と進まないですよね。
簡単そうに見えますが、意識して行動するのはかなり難しいです。
例えば、P-200というポンプがあって、これを更新しようとしましょう。
動力は3.7kWです。
使用条件は変わりません。
こういう前提なら、普通は3.7kWで能力設定して更新していくでしょう。
ところが、そのプラントには同じようなポンプがいくつもあて、例えば以下のような状態だったらどうでしょうか。
機器 | 動力 |
P-1 | 5.5kW |
P-2 | 5.5kW |
P-3 | 5.5kW |
P-4 | 5.5kW |
P-5 | 5.5kW |
・ | ・ |
・ | ・ |
P-200 | 3.7kW |
P-201 | 5.5kW |
これなら、5.5kWのポンプで何とかしようと思いませんか?というのが視点の問題です。
視点なのか視野なのか判断が難しいかもしれませんが、設備エンジニアなら通常は担当するプラントを俯瞰して見るので、気付くことは可能です。
ただし、上司や周りの人の意見も聞かないといけないので、統一化が難しい場合もあります。
1つのプラントで統一化できれば、他のプラントとも合わせていく、というレベルになれば視野とか視座というように少しずつ意味合いが変わっていくでしょう。
こういう風に展開を広げていけば、昇進の可能性は非常に高くなっていきます。
長期更新計画
長期更新計画は設備の数と年数という2つのファクターが入るので、複雑度が急に増してきます。
こういう時に、1つ1つをじっくり見て考えようとするエンジニアはとても多いです。
その結果、膨大な時間が掛かっていることに気が付いても止めることなく進んでしまい、後でとんでもないことになるというパターンです。
ここでは、分かりやすさで仕分けするのがとても大事です。
仕組みを作らないと運用する人は戸惑ってしまいますが、仮に仕組みがちゃんとしてもその考えが引き継がれないとやはり運用時に失敗します。
その点で、とても難しいです。
パターン化
更新計画はパターン化を最初に行います。
TBM,CBM,BMで有名な保全方式がここに当てはまります。
これだけだと、現実的には上手くいきません。
機器 | 保全 |
P-1 | CBM |
P-2 | BM |
P-3 | TBM |
T-1 | TBM |
T-2 | BM |
よくある保全方法の実際
機器 | 保全 |
P-1 | CBM |
P-2 | CBM |
P-3 | CBM |
T-1 | BM |
T-2 | BM |
保全方法の統一
現実的には左のような例はとても多いです。
TBM,CBM,BMを設定したけど、機種ごとにバラバラ、なぜそうなっているのか誰も分からない。
これは思想なく保全方法を設定して、設備が変わっても見直しをしてなかったり、保全方法を見直してもそのログを取っていなかったりするからです。
とりあえず、それぞれの設備にほぼ無機質に保全方式を設定しましょう。
これがパターン化です。
この後で、個別設定をしていくことになります。
考え方はいくつかありますが、どれか1つ~2つの軸で見るくらいで良いと思います。
複数の目で見れば見るほど、パターン化の意味が薄れてきます。
工程で分ける
個別設定の最初の例として工程で分ける方法を見ましょう。
例えばT-2というタンクをメンテナンスして、今まで4年周期だったものを3年にした方が良いという結論になったとしましょう。
機器 | 保全 | 系列 |
T-1 | 4年 | A |
T-2 | 3年 | A |
T-3 | 4年 | A |
T-4 | 4年 | B |
T-5 | 4年 | B |
周期を1つ見直した例
機器 | 保全 | 系列 |
T-1 | 3年 | A |
T-2 | 3年 | A |
T-3 | 3年 | A |
T-4 | 4年 | B |
T-5 | 4年 | B |
工程全体を見直した例
ここでT-2だけを見直す例はとても多いです。
ところが、同じ工程で同じような液を扱うT-1,T-3はTBM周期4年のままで、見直してなかったりします。
こういう設備ほど、後でトラブルのもとになります。
分かりやすさという意味では問題があったものだけチェックするということは間違っていませんが、工程全体で見直すというのも分かりやすさの意味ではあまり変わりありません。
その設備だけを見ているか、プラント全体を見ているか、という視点の問題ですよね。
エリアで分ける
エリアで分かる考え方は、ほぼ工程で分ける考え方に近いです。
特に連続プラントだと、エリア=工程とほぼ同じ見なし方ができます。
バッチの場合だと同じエリアで異なる工程が混在するのが普通なので、工程で分ける方が良いのか疑問が出てきます。
他には、配管スタンドのように多くの配管が集合していて、工程では分けれなく個々の配管を更新するよりは、一式更新する方が分かりやすいという場合もあります。
部品で分ける
工程やエリアで分ける以外に、部品で分けるという考え方もあります。
これは大きな設備に限定されるでしょう。
例えば、撹拌槽なら撹拌槽一式を交換するという場合もあれば、モーターだけ・ベアリング周りだけ・撹拌翼周りだけというように交換するパーツが違います。
長期計画を立てるときに部品も含めた仕分けをしていないと、問題が起きたときに困りますね。
ポンプのようにメンテナンスをするときは、メカニカルシールとベアリングをセットで変えると割り切っている場合は、こういう設定は不要でしょう。
設備のサイズや特性に応じて、1段階細かく設定するかどうかという視点です。
仕訳要素が増えてしまい分かりにくくなるので、あまり手を広げ過ぎないようにしましょう。
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最後に
機械エンジニアが少し広いテーマを扱う時に、分かりやすい目線で手を付けていく方が良い例を紹介しました。
パターン化はいくらでも可能ですが、設備数が多く運用に困ることが多いです。
仕訳が何の目的で行うのか、分かりやすい方法(分け方)はないのか、と考えると答えが見えてきます。
視野を広げることができれば、仕事の仕方も変わってくるでしょう。
部品を眺めるのも結構ですが、それだけでは
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