化学設備の圧力容器で大事な”圧力設計”と保安装置の”安全弁”・減圧弁の設定圧力との関係を徹底解説

安全弁減圧弁設定化学機械

安全弁“・減圧弁と関連する”圧力設計”の基本的な考え方を解説します。

安全弁というと化学工場の主要安全装置の1つで、とても大事なバルブです。

一圧・高圧ガスが多い連続プラントなら安全弁は結構真剣に考えます。

法規性が比較的緩いバッチプラントなら安全弁に対しては相対的にルーズです。

配管図ができて、必要な資材を購入する段階になって初めて検討してどうしようもなかった。

こんなパターンが結構散見されます。

本当なら、装置の設計をしながら同時に仕様を決めに掛かるくらいでちょうどいいです。

専門のメーカーに依頼するだけですから、早めに依頼することに気が付くかどうかだけがポイントです。

そこで安全弁・減圧弁に関してメーカーと話をするうえで最低限知っておいた方がいい考え方や、対象の設備に対する保証について基本的なことをまとめました、

フロー

安全弁減圧弁容器の系列については以下のフローを対象にします。

安全弁フロー
  • 減圧弁で0.5MPaから0.1MPaに減圧
  • 安全弁は0.18MPaで作動
  • 容器は0.2MPaまで耐える

こんな感じで設計するでしょう。

“安全弁”

安全弁に関しては以下の3つの設定圧力の概念が存在します。

  • 吹始め圧力
  • 吹出し圧力
  • 吹止り圧力

この考え方はボイラーの安全弁も同じです。

これらの圧力と吹き出し量のイメージを下に示します。

吹出し吹下り

吹始め圧力

吹始め圧力は「出口側で流体の微量な流出が検出されるときの入口圧力」のことです。

微量な漏れっていうのがまた微妙ですよね。

吹始め圧力はガス液体に対して規定します。

蒸気は対象外です。

バッチプラントでは安全弁は蒸気に対してのみ興味を持つので、吹始め圧力を意識している人は意外と少ないです。

吹出し圧力

吹出し圧力は「弁体が大きく上昇して流体が勢いよく吹出すときの入口圧力」のことです。

蒸気またはガスを対象にしています。

安全弁が作動する圧力として一般に認知されるのはこの圧力でしょう。

設定圧力と同じ認識されますが、違います。

  • 設定圧力は安全弁の圧力に関する仕様の総称として使うもの。設計上の数値ですね。
  • 吹出し圧力はその安全弁が実際に作動するときの圧力。

吹出し圧力は設定圧力に対して許容差を持っています。

例えば、蒸気用安全弁でボイラー以外なら許容差は±3%です。

上の例では、設定圧力と吹出し圧力は以下の関係になります。

  • 0.18MPaが設定圧力という仕様
  • 0.175~0.185MPaの範囲内で吹出し圧力を調整

吹出し圧力が設定圧力を越えることが許されない場合は0.178MPaなどマイナス側で調整します。

吹止り圧力

吹止り圧力とは「安全弁が作動した後に入口圧力が下がって弁が再密閉する圧力」のことです。

吹出し圧力と同じく、個々の安全弁に対して実際に作動する圧力です。

吹出し圧力 > 吹止り圧力

という関係があってしかるべきで、(吹出し圧力)ー(吹止り圧力)のことを吹下りとも言います。

  • 吹下り   0.03MPa
  • 設定圧力 0.180MPa

この条件で吹止まり圧力をいくらにすれば良いでしょうか?

(設定圧力)ー(吹下り)= 0.180 ー 0.03 = 0.177 MPa

としてしまいそうですよね。

ここで設定圧力が仕様であることに注意。

吹出し圧力を0.175MPaに設定していた場合は、

吹出し圧力0.175MPa  吹止り圧力0.177MPa

というおかしなことになります。

この場合は、設定圧力ではなくて吹出し圧力で吹下りを考えて、吹止り圧力を0.172MPaとすることで、

吹出し圧力0.175MPa > 吹止り圧力0.172MPa

となります。これなら安心ですよね^^

減圧弁

減圧弁は以下の圧力をちゃんと区別しておきましょう。

  • 設定圧力
  • 締切圧力

減圧弁は一次側圧力と二次側圧力だけで規定できると思っていたら、実は違います。

減圧弁

設定圧力

設定圧力は安全弁と同じく仕様の総称。

二次側の圧力を設定圧力と呼ぶユーザーもいるでしょう。

上のフローの例では0.10MPaが設定圧力です。

一次側圧力と二次側圧力をちゃんと明示したいですね。0.50/0.10MPaのように。

締切圧力

締切圧力は減圧弁に流体が流れていない時に、二次側で上がる圧力のことです。

締め切った状態なら減圧弁はオープン状態なので、二次側圧力は一次側圧力まで到達すると考えがちですが、そうではありません。

この辺は、減圧弁の機構そのものの話になります^^

締切昇圧という概念で減圧弁に設計されています。

例えば、二次側圧力0.1MPaで締切昇圧0.125MPaの場合、締切圧力は0.225MPaとなります。

ここで注意が必要です。

減圧弁の締切圧力 > 安全弁の吹出し圧力

となっていると、バッチ運転ではかなりの確率で吹き出します。

減圧対象の物体が止まったり動いたりするからです。

あるタイミングで締切圧力まで到達します。

減圧弁の設定圧力だけを見ていると見落としがちです。注意。

その他用語

減圧弁にはその他の用語がいくつかあります。

専門的な内容は弁メーカーにお任せで良いですが、概念として以下の2つは知っておきたいです。

  • 差圧        :(一次側圧力)ー(二次側圧力)のこと。流量に依存する弁抵抗。
  • 二次側圧力調整範囲 : 減圧弁で設定できる二次側圧力のこと

減圧弁は特定の圧力に特化した設計をしてそうに見えて、二次側圧力の調整範囲は結構合ったりします。

諸々の事情で二次側圧力を調整したい場合に、既存の減圧弁の調整で対応できないか考えるメンテナンスマンは多いと思います。

容器

使用先である容器の圧力について、知っておくべき用語をまとめました。

容器の耐圧を測る指標として、以下の指標があります。

  • 設計圧力(最高使用圧力)
  • 気密試験圧力
  • 水圧試験圧力

設計圧力(最高使用圧力)

普通は設計圧力(最高使用圧力)に対して、安全弁や減圧弁の設定をします。

今回の例なら、こんな感じ。

0.10MPaの蒸気を使い、0.18MPaの安全弁があるから、0.20MPaくらいの設計圧力にしよう。

設計上は 容器 → 減圧弁 → 安全弁 となりがちですが、罠があります。

  • 安全弁の吹出し圧力 > 容器の設計圧力
  • 減圧弁の締切圧力 > 安全弁の吹出し圧力

減圧弁安全弁は弁メーカーにセットで依頼したらちゃんと調整してくれます。

問題は容器側と設計が分断されていること。

容器の設計をする段階で、弁メーカーに少し依頼してみて、安全弁減圧弁との組み合わせに間違いがないことを確認しておきましょう。

容器の標準的な設計圧力を決めておけば、安全弁や減圧弁も大きな外れを引くことはなくなります。

とはいえ安全弁や減圧弁のメーカーが仕様を変えるケースはあるので、標準化したら見直しをしないという思考は危険です。

標準化が全てではありません。

気密試験圧力

気密試験の圧力は法的規制と社内規制で分けて考えると良いでしょう。

法的規制としては例えば以下があります。

  • 高圧ガス : 設計圧力以上
  • 圧力容器 : 水が不可の場合
  • 消防法  : 設計圧力の1.25倍 

これらの規制を見ながら、配管・装置に対してどれくらいの圧力まで気密を掛けるかを選びます。

社内規制で厳しく設定している場合もあるでしょう。

最も重要なことは、圧力をかけすぎないこと。

超大事です。

気密試験は危険です

低圧だから大丈夫。配管に対して日常的に行っているから大丈夫。

そんな甘えが罠になるかもしれません。

気密試験は失敗したときのダメージがとても大きいです。

PV=一定の法則の範囲内でも、気密に失敗して大気中に拡散したら体積が5~10倍に急膨張します。

気密試験の目的は漏れです。

気体で行うのは漏れの確認がしやすいから。

気体の方が液体よりも密度が小さく漏れやすいですからね。

耐圧試験圧力

耐圧試験圧力も気密試験圧力と同じように、法的規制と社内規制で分けて考えると良いでしょう。法的規制としては例えば以下があります。

  • 高圧ガス : 設計圧力の1.5倍
  • 圧力容器 : 設計圧力の1.5倍
  • 消防法  : 設計圧力の1.5倍 

これらの規制を見ながら、配管・装置に対してどれくらいの圧力まで気密を掛けるかを選びます。

細かく言うと、条件は細分化されています。

でも、実用上は結構面倒です。

エイヤーっと設計圧力の1.5倍で統一しても許されるのは、圧力が低いバッチプラントだからでしょう。

水圧は設計圧力の1.5倍と認識してもいいのですが、1.5倍以外は絶対に許されないと固定観念を持つのは危険です。

これは若手にありがち。

化学工場のエンジニアリングではとにかくバランスが大事で、極端に振れると危険ですよ。

圧力容器設計の基礎図書

圧力容器の考え方を勉強するとき、まずは圧力容器の設計の基礎から勉強しましょう。

この本が有用です。

座右の銘としたいですね。

最後に

安全弁・減圧弁・圧力容器の設定の基本的な考え方を解説しました。

安全弁は吹出し圧力と吹止り圧力と設定圧力があり、減圧弁も締切圧力と設定圧力があります。

使用先の容器の設定圧力を決める段階で、安全弁や減圧弁の仕様を決めておかないといけないので、設計の順番には注意が必要ですね。

この記事が皆さんのお役に立てれば嬉しいです。

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