圧力容器の強度計算に使用する設計圧力のかんたんな考え方

図面化学機械

NEONEEETです。

化学工場の設備で特徴的な圧力容器。

高圧の危険物を取り扱ったり、そこまではいかなくても危険物を漏えいさせないようにしたりするために圧力を保持する容器が重要となります。

細かい計算方法はJISに定められていますが、その前提となる設計圧力の考え方をバッチ系化学工場を例に紹介します。

ジャケットなしタンクの設計圧力

設計圧力とは強度計算をする上で使用する圧力を考えて良いです。

実際の運転で使用する圧力が使用圧力です。

当然ながら使用圧力よりも設計圧力と同じか高くなければいけません

この設計圧力考える上でどういうことを考えないといけないでしょうか?

ヒントは大気圧です。

Full Vacuum~100kPaG という設計圧力を個々では考えます。

図面上は相対圧力で取り扱いますが、ここでは絶対圧力で考える方が都合が良いです。

0kPaA~200kPaA

外圧に対する設計圧力

タンクは負圧・加圧どちらの条件で使うかで考え方が分かれます。

特にバッチ系化学工場では、同じタンクなのにある生産では負圧・別の生産では加圧で使うというケースも存在します。

どちらの条件にも耐えれるように設計しないといけません。

まずは外圧側から考えましょう。

タンク内が負圧の場合、大気圧という外圧をタンクは受けます。

完全負圧(Full Vacuum)の条件では、タンクは大気圧の力そのものを受けます。

  • タンク圧:0kPaA
  • 大気圧:101kPaA
  • 差圧:-101kPa

このとおり、101kPaの外圧を受けるタンクという設計圧力を考えることになります。

内圧に対する設計圧力

同じようにタンク内が99kPaGの圧力を保持している場合の設計圧力を考えましょう。

外圧の時と同じ発想です。

  • タンク圧:200kPaA
  • 大気圧:101kPaA
  • 差圧:99kPa

このとおり、99kPaの内圧を受けるタンクという設計圧力を考えることになります。

相対圧力は絶対圧力から大気圧を引いたものなので、違和感はとくにないでしょう。

ジャケットありの設計圧力

ジャケットなしの設計圧力はごく当たり前の結果ですが、ジャケットありの場合は少し勝手が違います。

本体の外圧に対する設計圧力

ジャケットなしと同じようにジャケットありの場合でも本体の外圧に対する設計圧力から見ていきましょう。

上鏡部はジャケットが付いていません。

ジャケットなしと同じ発想で、101kPaの外圧を受けます。

胴部や下鏡部はジャケットが付いています。

ンク内が完全負圧でジャケット圧力が400kPaAの条件が、ジャケットから本体が受ける最大外圧となります。

  • タンク圧:0kPaA
  • ジャケット圧:400kPaA
  • 差圧:400kPaA

このとおり、400kPaの外圧を受けるタンクという設計圧力を考えることになります。

大気圧が400kPaAになるだけで混乱はしないでしょう。

本体の内圧に対する設計圧力

本体の内圧に対する設計圧力はジャケットが完全真空のケースを考えます。

こちらは本体圧力が200kPaでジャケット圧力が0kPaの時が、最大内圧となります。

  • 本体圧:200kPaA
  • ジャケット圧:0kPaA
  • 差圧:200kPa

このとおり、200kPaの内圧を受けるタンクという設計圧力を考えることになります。

ジャケットが真空なんてありえないと思うでしょう。

ありえます。

スチームを張った状態でジャケットを締めきれば起こりえます。

スチームの温度が大気で冷やされていくと凝縮していきます。

完全真空とまではいかないかも知れませんが、負圧にはなります。

400kPaAの圧力がジャケットに掛かる場合で、ジャケットの設計圧力を101kPaA~400kPaAと考える人がたまにいますが、要注意です。

設計圧力299kPaと書くとそれっぽく見えますからね。

ジャケットの外圧に対する設計圧力

本体と同じようにジャケットも見てきましょう。

ジャケットの外圧は本体の外圧と同じ発想です。

  • ジャケット圧:0kPaA
  • 大気圧:101kPaA
  • 差圧:-101kPa

このとおり、101kPaの外圧を受けるジャケットという設計圧力を考えることになります。

タンク本体と同じです!

ジャケットの内圧に対する設計圧力

ジャケットの内圧に対する設計圧力は、ジャケットが400kPaAで大気圧が掛かる条件を考えます。

  • ジャケット圧:400kPaA
  • 大気圧:101kPaA
  • 差圧:299kPa

このとおり、299kPaの内圧を受けるタンクという設計圧力を考えることになります。

まとめ

ジャケットなしとジャケットありの設計圧力の比較をしてみましょう。

ジャケットなしジャケットあり
本体内圧99kPa200kPa
外圧-101kPa-400kPa
ジャケット内圧299kPa
外圧-101kPa

外圧には「-」の符号をつけています。

ジャケットの圧力が加わるとちょっとややこしくなりますよね。

落ち着いて場所ごとに分ければ難しくはありません。

タンクの内圧外圧以外は考慮しなくて良いか?

タンクの強度計算をするときにプロセスの内圧外圧の議論はよくしますが、それ以外の要素は考えなくて良いでしょうか?

現実的には無視可能です。

タンクの自重

タンクの脚に掛かる自重圧力が一番影響が大きそうです。これを調べましょう。

タンクの脚にはタンクの空重量+液重量が加わります。

タンクの胴や鏡にも当然ながら作用します。

(タンクの空重量+液重量)/(脚の断面積)自重圧力として計算してみました。

これを引張強さという指標で見ていきましょう。

  • タンクの強度計算:引張強さの10%程度
  • タンクの自重圧力:引張強さの3%程度

強度計算上の暗黙のルールとしてこの程度の圧力で設計するように決まっているようです。

自重圧力の影響は強度計算上は30%程度効いてくることになります。

これは当て板を付けたり脚の大きさを変えたりして圧力を分散させることで無視可能となります。

人・原料荷重

人や原料は一時的に発生する荷重です。

これは建物や作業架台に対する荷重として考えます。

一般には100kgf/m2などのオーダーで考えます。

圧力の単位では1kPa

設備に、こういう荷重がかかったとしてもほぼ無視可能です。

100kPa規模の圧力に耐える設備に対して1kPa程度の圧力とは1%の影響度しかないので無視可能という意味ですね。

配管荷重

配管荷重は、1m2あたり1kPa程度です。

1m2あたり50Aの配管が10本として考えます。

配管の重さ50A1本で1mあたり5kg、満水状態で8kg程度なので10本で80㎏

フランジや断熱の重さを考えても10本で100㎏程度

1m2あたり50A10本で100㎏なので、100kgf/m2

圧力の単位では1kPa

人・原料の荷重とほぼ同じで寄与度が1%程度です。

最後に

化学工場の圧力容器計算上必要な設計圧力について解説しました。

本体・ジャケットそれぞれに負圧・加圧の条件を考えて大気圧の影響も考慮します。

プロセス圧力以外の影響は自重・配管・人や原料がありますが、強度計算上は無視可能です。

この記事が皆さんのお役に立てれば嬉しいです。

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