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化学機械

圧力容器の強度計算書を一瞬で見抜くためのポイント

強度計算書 化学機械
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圧力容器(pressure vessel)のメンテナンスをしていく中で、板厚の管理は非常に重要です。

図面と強度計算を眺めつつ、板厚測定に望まないといけません。

何も知らない設備の強度計算書を見せられて、「すぐに板厚がどこまで許容できるか判断して欲しい」という相談をされたときに使えます。

板厚測定しましたが、このまま使っていいか教えてください

割とマニアックな状況でしょう。

ここで困らずに、強度計算書を即答するためのポイントを紹介しましょう。

なお、本例で使った数値は計算結果をしたわけではありませんので、ご注意ください。

計算書のどこを見るかということの例のために、数字は仮定を大きく置いています。

計算書の構成

圧力容器の強度計算書は一般に複数の紙で構成されています。

ここから必要な情報をピックアップする作業が最初にあります。

  1. 内圧計算(本体
  2. 内圧計算(本体
  3. 外圧計算(本体
  4. 外圧計算(本体
  5. 内圧計算(ジャケット
  6. 内圧計算(ジャケット
  7. 付属品

ユーザーの簡易設計なら1~6がだいたい問題ないことを計算して終わり。

ちゃんとした強度計算をした場合、付属品などの計算書がいっぱい添付されます。

最初の課題は、この中から主要な計算結果がどこにあるかをピックアップする作業です。

通常は書類の頭の方にありますが、並びがちょっとずつ違ったりします。

計算板厚と胴径

どんなに瞬間的に回答を求められても、計算に使用している板厚胴径だけはチェックしましょう。

照合元は機器の図面です。

本体胴が板厚10mmで胴径500mmという前提で計算がされているとして、それが図面でも同じように書いているかはチェックポイントです。

本体胴の計算のつもりでジャケット胴の計算を見ていた、なんて間違いが普通に起こりえます。

とにかく、板厚胴径をチェック!

結果の確認

ターゲットとなる書類を定めたら、さっそく結果を見ましょう。

結果は以下の表記になっているはずです。

  • 計算板厚
  • 最小板厚
  • 設計圧力

これらの情報が、計算シートには必ず記載されています。

  1. 設計圧力 → 計算板厚 < 最小板厚
  2. 仮定板厚 → 許容耐圧 < 設計圧力

という2パターンの計算が考えられます。特に鏡部が注意。

具体例をちょっと見てみましょう。

設計圧力 → 計算板厚 < 最小板厚

本体胴が板厚10mmで同径500mmで設計圧力が100kPaの時に、

設計圧力100kPaに対して計算を走らせて計算板厚が3mmとなりました。

板厚10mmは公称板厚のことであり、板厚の許容差を考えると9.5mmが最小板厚です。

計算板厚3mmが最小板厚9.5mmより小さいので問題ありません。

設計圧力が変わると計算板厚も変わり、判定が変わります。

特に本体は内圧よりも外圧の方が計算がシビアになるので、3mm < 9.5mmという差は普通にあり得る数値です。

仮定板厚 → 許容耐圧 < 設計圧力

逆に鏡では逆側の発想で計算されることがあります。

10mmの板厚の許容差9.5mmに対して、9.3mmくらいの板厚で耐えることのできる圧力を計算しました。

結果は1000kPaでした。

板厚9.5mm確保していれば1000kPaまで耐えるので、設計圧力100kPaは余裕で問題ない。

こういうロジックで計算されます。

計算シートの上の部分下の部分かどちらを見ればいいか、ちょっと悩むでしょう。

9.3mmと9.5mmギリギリの板厚で計算するわけでなく、6.0mmくらいの中途半端な計算をしている場合もあります。

腐れ代

計算シートには腐れ代を書いている場合と書いていない場合があり、注意が必要です。

ステンレスなら考慮せず鉄鋼なら考慮する、というのが一般的です。

とはいえ瞬間的に判断しようとしたら材質のチェックが疎かになります。

計算シートには腐れ代を何mmに設定しているのか、0mmなら0mmと記載するようにしておきたいです。

データの整理

計算書類と結果を見比べて、一枚の紙に書き写しましょう。

本体ジャケット
公称板厚10mm6mm
最小板厚9.5mm5.5mm
計算板厚8mm5mm
計算耐圧100kPa500kPa
設計圧力100kPa500kPa

こんな感じで、板厚の部分だけ赤字で囲うなどして目立たせます。

鏡側ではちょっと計算が違う場合があるので、一応分けておきましょう。

本体ジャケット
公称板厚10mm6mm
最小板厚9.5mm5.5mm
計算板厚9.3mm5.4mm
計算耐圧1000kPa550kPa
設計圧力100kPa500kPa

この場合は、本体の9.3mmとジャケットの5.4mmが一応の閾値となります。

仮に閾値オーバーをしていたら、再計算をする方向だな・・・とアタリを付けていきましょう。

最小板厚の計算

ユーザーが圧力容器のメンテナンスをする上で、最小板厚がいくらなのかというのが最も興味があります。

10mmの板厚が3.0mmまで持つのか9.0mmまでしか持たないのか、それを判断材料にして板厚測定をします。

ここで、9.5mmなら1000kPaまで持つというような結果を貰っても、何もうれしくありません。

申請上は問題がなくても、計算ソフト的には問題がなかったとしても、実用上は問題です。

計算に明るい保全担当者ばかりではありません。

ウェブ上に出回っている計算ソフトや社内で作っている計算ソフトを、使いこなせるとも限りません。

そこをフォローするために納入前の図面チェックをして、結果の情報が不足していればユーザーが再計算をする必要があるでしょう。

新しい圧力容器の設備を導入するたびにこういう相談を受けるので、隠れたニーズかもしれませんね。

参考

圧力容器の計算は設計者の基礎知識の1つです。

現場で即決する本方法も大事ですが、基礎的な知識は下のような書籍でも学習しましょう。

関連記事

強度計算についてさらに知りたい方は、以下の記事をご覧ください。

最後に

圧力容器の強度計算結果を即興で見て、メンテナンス時の板厚測定の参考にするために見るべきポイントを解説しました。

計算結果を熟知しているわけでなく、大量のデータの中から必要な情報を抽出するというだけで、スキルと言えるのが保全現場です。

要はどういうこと?と聞かれたときに本質を答えられるのは、エンジニアとして重要だと思います。

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