化学プラントの建設が年々減少し、プラント業界は大きな転換期を迎えています。人材不足や新製品開発の困難さに加え、老朽化設備の延命が主戦場となる中で、機電系エンジニアにはこれまでと異なるスキルや視点が求められています。
本記事では、今後のプラントとエンジニアの将来像を整理し、求められる力や生き残り戦略を解説します。
化学プラントでエンジニアとして長期間働きつつ、最近のプラントの状況を眺めながら今後のことを考えることが最近多くなりました。
この記事は、機電系エンジニア性質シリーズの一部です。
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プラントの環境
プラントの置かれている環境を考えます。
日本のどこでも状況は似ていると思っています。
プラント建設は減少傾向
プラント建設は今後確実に減少します。
人が少なくなるから明らかですね。
新たなプラントを建てずに、既存プラントをいかに長く使っていくかがポイントになります。
一度建てたプラントは補修を適切に実施していけば、長期運転が可能となるケースが多いです。
補修の質を少し落としても、限界年数が少し変わる程度。
であれば、既存プラントをいかに長く使うかが、生き残りの重要テーマとなります。
保全が主役としてもっと目立たないといけませんね。
新製品の開発はとても難しい
新製品の開発は、年々難しくなっています。
いろいろな製品をすでに開発していますからね。限界はかなり近いです。
新プラントを建てる大きな理由は、新製品が導入されるとき。
新製品が導入されないとなると、新プラントが建設されにくくなります。
作業員・エンジニアは不足
新プラントを建てることが難しいのは、新製品の問題だけではありません。
作業員やエンジニアが不足していることも大きな問題です。
新プラントを建てたくても、建てるためにはコストと時間が掛かり、断念するというケースが増えています。
起こりえる将来
プラントの起こりえる将来について考えてみましょう。
新プラントが建たないと、どういうことになっていくでしょうか。
安く作れる場所に移ってしまう
新製品があっても新プラントを建てる機会がない。
こういう時には、安く作れる場所で新製品が導入されているかもしれません。
機電系エンジニア目線だと工場内に寄生している感覚になりますが、本社目線だとどの工場に注文を出すか、という目線で考えます。
典型例が海外。
国内でも安い投資案を提示してきた事業所に導入されるでしょう。
見えるようで見えない競争が起こっています。
機電系エンジニアとしては、所属する事業所を長持ちさせるべく優れた投資案を考えないといけませんね。
ところが、これも難しくなっています。
案自体を練る人が少なくなっています。改善する見込みは少ないでしょう。
工場はどんどん縮小傾向にならざるを得ないですね。
買い叩かれる
工場に新プラントを導入したり新製品を導入しようとしても、理想的な条件での導入が難しくなります。
それでも導入しようとしたら、徹底的に買い叩かれます。
製品の一部分だけを作って、残りは別の場所で作るというような展開が考えられます。
この結果、工場としては確実に技術力が低下します。
- 長い工程の製品を作る経験をしなくなる
- 一部の設備は使われず、運転や保全の経験がなくなる
- 複雑な稼働計画を練る人が居なくなる
いきなり個別プラントや工場全体を無くすという発想ではないですが、完全にジリ貧の世界です。
生き残り戦略
プラントが建つわけでなく、ジリ貧になりえる環境。
この中で、機電系エンジニアとして生き残りを考えるには、どういう方法が良いでしょうか。
英語を学ぶ
安く作れる場所でプラントを建てるという可能性がありそうなら、英語を学びましょう。
海外出向などのチャンス。
海外での展開を増加させていく様子なら、複数回の出向も考えられます。
1回だけでも相当の経験が得られるでしょう。
貴重な人材として、その後も重宝される可能性があります。
国内でしがみつく
国内でしがみつくという戦略は考えられます。
この場合、保全の方が確率は遥かに高いです。
ジリ貧になっていく工場で、最低限の運転ができるように整備していく。
やりがいは確実に感じられませんが、生き残るという可能性はあるでしょう。
転職する
転職するという方法は生き残りの戦略になります。
- エンジニアとしてプラント建設などのプロジェクトに関わるには海外
- 保全に特化するなら国内でしがみつき
- どちらでもないなら転職
こんなパターンをざっくりと考えると、大きな設計はしたくない・保全としてしがみつきたくない、と考える場合には、転職した方が良いかもしれません。
プラントエンジ会社だけでなく各種派遣会社として、生き残れる可能性はあります。この道も大変ですけど、あくまでも可能性の1つとして考えられます(私はもうこの道は選ぶつもりはありませんが)
参考
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最後に
プラント建設が減る現代において、機電系エンジニアには新たな力と視点が求められます。保全力・海外志向・柔軟な転職戦略といった選択肢を前向きに捉え、自身の生き残り方を見つけましょう。未来を切り拓く鍵は、変化を恐れずに動く姿勢にあります。
新製品が導入される確率は減り、安い場所で導入されたり技術力が低下していく方向にしかなりません。
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