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計装設計

ロードセルに関係する機械設計者向けポイント知識

ロードセル 計装設計
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ロードセル(loadsell)について解説します。

タンクやホッパー内の重量を高精度で測定したい場合に使用します。

化学工場クラスでは最高レベルの精度

ロードセルは計装設備なので、計装単独で設計や工事をするとして認識されがちですが、機械・土建の3者が協力しないと達成できない難しい設備です。

縦割りな思考で設計を進める初心者が、中級者にステップアップするためには越えないといけない壁です。

ここをクリアした機械エンジニアは設計の幅が広がります。

ロードセル(loadsell)の原理

ロードセルの原理はひずみゲージです。

ひずみゲージは力→電気の信号変換を行う変換器です。

原理は下図のようなものです。

ひずみゲージ(loadsell)

ひずみゲージに力が加わると、ゲージにひずみが発生します。

ゲージはホイートストンブリッジを組んでおり、ひずみが発生した分だけゲージ部の電気抵抗は増えます。

この電気抵抗の変化分を電気信号として検出すれば、力→電気の変換が可能です。

差圧式液面計や電磁式流量計なども原則的には同じです。

ロードセル(loadsell)の特徴

ロードセルの最大の特徴は精度です。

化学プラントで規定量を管理するために最も信頼性が高いのが重量

実は、液面流量は重量よりも1ランク精度が落ちる情報です。

重量 = 密度 × 体積

という大事な計算式が関わっています。

正式な取引は基本的に重量で行います。

会社間をまたぐやりとりは基本的に重量ですね。

密度も体積も掘り下げると別のパラメータの影響を受けます。

密度液体の組成温度が変わると密度が変わる密度計・流量計
体積温度が変わると体積が変わる液面計・流量計

流量計だとそれなりに測定精度がありますが、液面計は精度としては高くありません。

流量計では密度も同時に測れるコリオリ式意外だと、密度を別に測定しないといけなくて信頼性が落ちます。

ローリーからタンクに液を受け入れる場合のやり取りを考えると

  • ローリー・・・トラックスケールで重量変化を測定
  • タンク ・・・液面計の増減と、サンプリング液の密度計測

という方法で帳尻を合わせようとします。

両者の数字が合わない確率が高く、液漏れなどいろいろな可能性を疑ってしまいます。

受入タンク側にロードセルが付いていれば、ややこしい問題を減らすことが可能です。

使用方法

バッチ系化学プラントでのロードセルの使用方法を紹介します。

粉体ホッパー

圧倒的多数が粉体ホッパーです。

粉体ホッパー内の粉体量を体積で測るのは、極めて難しい。

粉体はかさ密度という概念があり、粉体が緩んでいる時と閉まっている時で体積が変わります。

家庭の調理棚にある、砂糖や塩を見れば一目瞭然。

重量が変わっているわけではないのに、体積は変わります。

音波や電波などの体積を頼りにする測定器では、粉体の実容量は測定することができません。

質量保存の法則にあるように、質量が最も根本的な物理の1つですので、これを使った測定は非常に効果的に作用します。

原料タンク

化学プラントでは液体の原料タンクでもロードセルを使う場合があります。

特に反応物については重量で測定することが多いでしょう。

というのも、反応物の量を規定しないと反応熱で膨大な熱が発生して暴走して、制御不能になる可能性があるからです。

だからこそ、反応物を徐々に添加していきます。

添加量が固定化されるように、液体のタンクから、ヘッドで仕込むことが多いです。

そこで調整弁と流量計を使って制御します。

この仕込みは厳密性を高めれば高めるほど安心です。

原料タンクの原料濃度が変われれば、同じ重量でもモル数が変わり反応速度が変わります。

これが化学の怖いところ。

原料タンクに液面計を付けて、液面計と重量計でダブルチェックすればかなり確実です。

普通は手固く攻めるにも重量計だけで、液面計と重量計を同時に使うことはないと思います。

まともな会社なら、原料受入時にCoAだけでなく、原料分析をかけますので、原料タンクの原料密度が変わったということが、突然起こることはないでしょう。

運転条件を変えて濃度を変える場合も、事前に試験をします。

その結果を、ロードセルの設定値に掛ければいいので、ロードセルだけでも十分に機能します。

計量秤

ロードセルは計量秤としても使用します。

秤は秤と別個に考えるかもしれませんが、ロードセルという原理を使っている意味で同じ。

体重計も最近は基本的にロードセルです。

昔はバネ式が一般的でしたけどね。

スペック設計

ロードセルの設計というとき、最初に思いつく単語は秤量とか測定精度とかそんな単語かも知れませんね。

計装エンジニアとしてだけでなくロードセルを考えるときに最初に決めるべきスペックです。

秤量・精度というような見方を最初にしてしまうと、そこから先は細かな設計をして完了しがちです。

秤量・精度はあくまでスペック設計です。

例えば液体の比重や容量から液重量を計算したり、タンクの空重量を計算すれば、秤量は計算できます。

プロセス部門からの要求事項として数値データを聞けばおしまい。

測定精度も同じように、プロセス部門に聞けばおしまい。

設計と言っても本当に大したことがありません。算数の世界です。

ロードセルの主要スペック
  • 最大重量
  • 精度
  • 風袋

この辺りの主要スペックは製造のニーズに合わせて最低限達成しないといけません。

と言いつつ、ニーズが厳しくて難しくなってきていますけどね。

フィールド設計

スペック設計に対してフィールド設計がロードセルでは大事です。フィールド設計は私が勝手に呼んでいる単語。

ロードセルの場合、以下の要素を設計する必要があります。

  • 校正重量
  • 設置場所の傾き
  • 校正作業性
  • 運転員の使い方

ブラケット据付

ロードセル付きタンクの据付の基本形を紹介します。

ロードセル据付(loadsell)

この設置方法は以下の特徴があります。

  • タンクの重心とほぼ同じ位置にブラケットを取る
  • ブラケットは3本もしくは4本とする

タンクの重心にブラケットを取る理由は、ロードセルにモーメントが掛かりにくいようにするため。

ブラケットは3本の方が支持反力的に安定しますが、実際に受け梁を作るのは結構難しいです。

支持方法(loadsell)

土建屋の想いを反映させるなら、ここは4点で支えるのが妥協案。

何も考えずに、3点が好いから3点にしてほしい

こんな声を計装屋が出すときもあると思いますが、放っておいても良いパターンが多いです。

計装屋としては精度が多少ズレるかもしれませんが、運転面では許容可能な範囲、土建屋・機械屋的にも間違いが少ない構造

全体最適を目指すようにしましょう。

4点支持の場合は機器の受け梁を設けずに、小梁にちゃんと受けるようにしたいです。

これは計量精度に影響を与えます。

4点支持の向き(loadsell)

脚式はNG

ロードセル付きタンクの支持はブラケット式にするのが基本です。

これを脚式にせざるを得ない場合、その選択肢は正しいでしょうか?

脚式(loadsell)

私は基本的にNGです。

脚式にするくらいなら、架台を付ける方が遥かに良いです。

というのも重心から遠い位置に秤があって、設備の転倒モーメントの影響を受ける可能性があるからです。

脚式はブラケット式に比べて精度が落ちると思っていた方が良いでしょう。

梁のたわみ

ロードセル付きタンクを設置するために、据付上要求される事項がいくつかあります。

  • ロードセル受け梁のたわみはできるだけ小さくする
  • ロードセルのジャッキアップ用のスペースを作る

ロードセルの受け梁がたわむと、ロードセルのひずみが変わるために、誤差の原因となります。

梁のたわみ(loadsell)

梁の大きさを通常より1ランク以上アップさせる必要があります。

ロードセル付きタンクはタンクを設置するときはダミーのロードセルと付けます。

これを正式なロードセルと切り替えるためには、ジャッキアップしないといけません。

これはロードセルの設置部のベースプレートを大きくする工夫が必要です。

普通の設備の課題とは違った工夫が必要となります。

配管にフレキシブルチューブ

ロードセル設計上は配管にフレキシブルチューブを繋げることが大事です。

フレキで逃がす(loadsell)

配管を何も考えずに固定させる場合、天井や床とサポートを取ります。

この瞬間に配管だけでなく装置も建屋と連結されます。

タンク内の液体の重量をちゃんと測りたいのに、荷重がサポート側に逃げてしまいます

配管の荷重をタンクと縁を切るためにフレキシブルチューブを使うことが一般的です。

校正重量

ロードセルは校正という作業があります。

重量を適正に測れているかどうかを定期的に確認し、異常があれば修正する作業です。

こう書けばあっさりしていますが、実際にはかなり難しいです。

20kg程度の標準重量をロードセルに乗せて、秤量の最小値から最大値まで測っていきますが、

標準重量を載せる場所が少ないという問題があります。

5tonの重量を測るロードセルで500kgまでしか標準重量を置けるスペースがない、なんてことも。

そんな時にはタンクに水を張って補正せざるを得ませんが、これってロードセルの精度を犠牲にする発想。

それならロードセルなんて使わずに流量計と液面計で十分では?ってたまに思います。

重量計の方が精度が出ているという安心感を買っているだけですから^^

この辺りまでは計装エンジニアも考えます。

校正作業性

この辺りから先はほとんどのエンジニアが考えません。

1つ目が校正作業性。

構成で20㎏の標準重量を載せるということは述べましたが、これってどれだけ大変なことか想像していますか?という問題です。

スペック設計だけをしていると、実際の作業に注目が行かないかも知れませんね。

けど、相当大事なことです。

20㎏の重りを上げたり下げたりするって作業負荷が高いですよ。

腰を痛める可能性高いですよ。

そもそも標準重量を現場に持ち込むだけでも大変ですよ。

  • 腰を痛めないように作業性を緩和する設備はありますか?
  • 現場に標準重量を持ち込むための昇降設備は準備していますか?
  • 現場に標準重量を置くスペースはありますか?
  • 高温高所に対する対策は取っていますか?

考えるべきことは多いです。

運転員の使い方

運転員がロードセルを使うかどうかも確認ポイントです。

運転員が校正や確認作業のために秤を使うことはありませんか?

これは運転員が校正作業者とは違うという視点で見ています。

校正作業者のように筋肉が発達している運転員ばかりではありません。

腰を痛める可能性は運転員の方が遥かに高いです。

毎バッチ標準重量を載せるというようなプラント運転方法を取るケースもありますので、作業性を楽にするような構成は考えておきたいですね。

ロードセル上に標準重量を載せる台を設けて、そのすぐ近くで力学的に縁を切った場所に標準重量を置いておき、使う時は少し横にずらすだけ。

こんな風に作業性をちょっとでも楽にすることは考えられます。

良く使う台は腐食や劣化を考慮して、鉄製ではなくステンレス製にしておきたいですね。この辺も考えるべきポイントです。

関連記事

さらに知りたい方は、以下の記事をご覧ください。

最後に

化学プラントで使うロードセルの設計について紹介しました。

重量という高精度の情報を扱えるのが特徴で、粉体ホッパー・タンク・計量秤などに使います。

容量・精度というスペック設計に終始せず、タンクの支持方法や梁のたわみ・校正の方法など関連作業を幅広く考えましょう。

計装設計者が機械・土建と関わりレベルアップする重要なチャンスです。

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