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デジタル化

DX時代でも紙とExcelが必要な理由― 化学プラント設計のリアルなエンジニアリング資料作成 ―

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手書きとexcel デジタル化
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化学プラントの設計現場では、3D CADや高度なシミュレーションツールが当たり前になりました。DXが進む中で、「設計はすべてCADで行うもの」と考える人も増えています。

しかし実務では、設計の初期段階や能力確認、トラブル検討において、紙とExcelが今なお主役です。むしろ、ここを疎かにすると「CADは引けているが、設計意図が説明できない」状態に陥ります。

この記事では、なぜDX時代でも紙とExcelが化学プラント設計に不可欠なのかを、現場・設計・オーナーエンジニアの視点から整理します。

CADなどの作図方法

現在では図面を書くといえばCADが当たり前です。正式な資料を作るには当然CADでしょう。

でもみんながみんなCADを使えれば良いというわけではありません。オーナーエンジニアはCAD作業を外部委託して概念設計に特化していくべきです。

考えることに全力を注ぐということですね。考えた結果をドラフトマンに伝えるためには、オーナーエンジニアが考えたことを具現化しなければいけません。

そのための方法はExcelもしくは手書きです。アナログかもしれませんが大事です。口頭だけでは絶対に伝わらず、図面のやり取りや質疑応答に時間が掛かる方向です。

手書き

エンジニアリングで手書きの資料と言った場合、以下の意味を持ちます。

手書き資料の意味
  • ドラフトマンに設計意図を伝えるためのポンチ絵
  • レビューコメント
  • CAD資料の代わりの正式図

手書きだけでもその役割がいくつかありますね。

ポンチ絵

ポンチ絵とはフリーハンドのお絵かきのようなものです。紙に適当に描く絵で雑でもOKです。その代わり画力の無さが露呈されますが、問題ないでしょう。

ホワイトボードなどに描く絵もポンチ絵の一種です。設計意図を伝えるには古典的ですが確実で、速いです。対面で効果が発揮されますが、メールでもポンチ絵をスキャンして送れば良いでしょう。

ポンチ絵を書いて議論することで、ポンチ絵の精度を上げることができます。業務の効率化だけでなくスキルアップとしてもポンチ絵を活用しましょう!

レビュー

レビューはP&ID・配管図・機器図で行う手書きのことです。コメントとして文字で書くことが多いですが、P&IDでは手書きの修正案を書くこともあります。

正式図

正式図は各種資料をCADではなく手書きで作成した図面のことです。ドラフターを使った製図は今ではほぼ絶滅危惧種でしょう。

Excel

手書きより正確な資料を作ろうとしたらExcelが無難でしょう。オートシェイプでエンジニアリング資料のかなりの部分は作成可能です。

  • 手書きでは綺麗に書けない
  • ちゃんと電子データで保存したい
  • 後で追記する可能性がある
  • 誤解が起こりにくい図面をドラフトマンに渡したい

こんな場合にExcelを使います。私のブログではgoogleドライブの図形描画を使っていますが、同じような感覚で使えます。

オートシェイプで丸・四角・多角形・直線・孤が使いこなせれば、エンジニアリング図面はかなりの精度で作成可能です。最低限の製図方法は知っておかないといけません。

フランジ(engineering tool)

これくらいの絵が書ければ上等ですが、製図方法を知らないエンジニアが作成すると

  • 背景に色が付いている
  • 線の太さがバラバラ
  • 線の色が黒以外
  • 一点鎖線など使わない

というポンチ絵をExcelにしただけという絵を書く場合があります。それってエンジニアって名乗っていいの?というレベル。

自分で絵を書く意味

次に自分で絵を書く意味を解説します。誰かから上がってきた図面を横流しして、意見をまとめるだけでも環境が整備されていれば、オーナーエンジニアとして仕事ができてしまいます。

でもそれではダメだと思っています。やはり自分の手を動かすことが大事でしょう。化学プラントのエンジニアとしてはP&IDが基本ですので、P&IDを手書きで書く意味として紹介します。

図面作成の難しさが分かる

手書きのP&IDを作成すると、図面の作成が難しいことに気が付きます。単純な話ですが、一枚の紙に情報を納めるには、何をどれくらいの大きさで書き始めるかというデッサン的な問題にあたります。

CADだと書いた情報を簡単にコピー&ペーストができるので楽ですが、手書きだといったん書いたら修正が難しいです。

略フローに書いていない情報がどれだけあるか想像をせずに、いきなり手書きのP&IDを書こうとするとだいたいは失敗します。バランス感覚の悪いP&IDになります。こうした失敗をすることそのものが勉強になります。

図面を作成するということすら知らずに外部に委託するのは、仕事として危険だと思います。

プロセスの流れを考える

手書きのP&IDを書くとプロセスの流れを考えることができます。

  • 反応器Aに流入する内容物がどこからどうやって移送してくるか
  • 反応器Aで生成した物をどこにどうやって移送するか
  • 反応器Aでガスが発生するかしないか

こういう「モノの流れ」を理解することは、化学プラントのプロセスを理解する基本です。基本だからこそプロセスエンジニア・機電系エンジニア・運転員全員が共通して理解しておくべき内容です。

連続プラントとは違ってバッチプラントでは切替生産が多いので、一枚のP&IDでも「どこからモノが移送させるのか」「どこにモノを移送するのか」が非常に分かりにくいです。一枚の紙面に同じような配管が何本も通っていますからね。

連続プラントのエンジニアがバッチプラントのP&IDを初めて見たら、驚きます。目が疲れますよ(笑)

略フローとP&IDを眺めながら、P&IDに手書きでラインを追加するだけでも悩むことだらけです。

  • どこのヘッダーに繋ぎこむか
  • 単管の切替バルブの切替のどちらを選ぶか
  • 既設エリアの改造がどこまで必要か

いろいろと疑問に思うことが出てくるはずです。

疑問に思っても解決しないので、略フロー全体を眺めたりプロセスエンジニアにヒアリングしたりと行動にでます。手書きでP&IDを書こうとしなければ、こんな問題そのものに気が付かずに仕事が進んでしまいます。

そのツケはすべて図面屋さんに押し付ける格好。図面屋さんの負荷を下げるためにも、手書きのP&IDを経験する意味は大きいです。経験年数の大小関係なく、若手もベテランも取り組んでほしいことですね。

必要な配管部品の構成を考える

手書きのP&IDを作成すると、必要な配管部品の構成を考えます。

  • バルブをどこに付けるべきか
  • 流量計周りのヘッダーの組み方はどうするべきか
  • 法的に必要な部品がないか
  • 洗浄ブロー用の配管は必要でないか

この辺は手書きをした瞬間に気が付きます。というのもこれらの現実に必要な部品は略フローではあまり書かれていないから。書かれていない情報をP&IDに追加しようとすれば、考えないといけません。

大抵は類似プラントの構成例から転記すればいいのですが、どこから転記するかを考えるだけでも意味があります。必要な部品を追記しない手書きのP&ID現在のP&IDに略フローの内容を転記しただけの質の低い成果となります。

これだけなら単なる事務作業なので、エンジニア的ではありませんね。手書きで書こうとして問題に直面し、類似プラントの情報を調べるという作業そのものがエンジニアリングの1つとなります。まずは真似ることから始めましょう。

P&ID

P&IDはCADが正式図です。これは手書きやExcelで書くと結構大変です。Excelでもある程度書くことはできますが、配管に関するいろいろな情報を盛り込むにはちょっと大変なので、Excelでは略フロー程度に留めることが多いでしょう。

それでも十分に意思を表示できます。ただし、Excelで多数の配管の折れ曲がりを表現するのはちょっと面倒。時間が掛かります。意思表示を目的とするなら手書きの方が良いです。見た目の綺麗・汚いは過剰に問わなくてもOK。

CADで作成するための叩き案として使えればいいので、メモ+αのレベルで速度重視を目指しましょう。略フローや言葉だけのレベルで、パソコンのモニターと格闘してP&IDを作るよりは圧倒的に設計時間を早くすることができます。

スケルトン

スケルトンはCADで作成する場合もありますが、簡単にExcelで作れます。機器の概形を適当に絵で書いて、径や高さという主要寸法を書けばほぼOKです。私のブログでも多数登場するレベルの絵で十分に実務に耐えます。

屋外タンク(engineering tool)

スケルトンが無い場合には、過去の図面から不要な情報を修正ペンで消したり、データシートに数字で記載する程度の表現しかできないでしょう。メーカーの見積書には数字だけを書いている場合も多いですね。たまに標準的なスケルトンを使っている会社もありますが・・・。

見積時にユーザーが意図していることをメーカーが正しく認識できるようにするためにも、スケルトンがある方が確実です。

ユーザーとしてはスケルトンを作るその瞬間に「面倒だ」という感情が働きますが、スケルトンを作らないと、見積をして査定をするときにはもっと面倒な現実に直面します。

その時には、スケルトンがあったらもっと確実だったのに・・・と思うかもしれませんね。査定をするときにスケルトンのありがたみを感じなければ、残念ながらそこまでです。

ノズルオリエンテーション

ノズルオリエンテーションはぜひともオーナーエンジニアの機械設計者が作成しましょう。

ノズルオリ(engineering tool)

機器の仕様や役割が分かっていれば、絞り込みはできます。オーナーエンジニアがノズルオリエンテーションを指定しなければ、ドラフトマンが選定しないといけません。

P&IDと配管ルートをもとに、「この辺にノズルがあれば便利」という感覚で位置を決めていきます。プロセスの特性やコストを意識して最適化したノズルオリエンテーションや配管設計にはならない可能性が高くなります。

P&IDと同じく、ドラフトマンが考えるために必要な時間が長くなりがちです。オーナーエンジニアがノズルオリエンテーションを指定しなければ、メーカーが図面を書くときも困ります。メーカーの設計時間も長くなり、納期が延びていく方向になります。

オーナーエンジニアが少しの時間を使って希望のノズルオリエンテーションを考えるだけで、ドラフトマンもメーカーも設計時間を短くすることが可能です。

丸投げするとオーナーエンジニアはその瞬間は楽になりますが、トータルとしては苦しむことになりますよ。

土建資料

土建資料もExcelである程度書くことができます。土建資料としては、最初にローディングデータを思いつくかもしれません。こちらはスケルトンを使えばほぼ完成するので、あまり大事ではありません。

土建資料としては、機器の設置場所そのもの意外に土建工事として必要な内容を網羅する資料が大事。大抵は平面図で表現できますが、立面図が必要な場合もあります。例えば、機器の設置高さ・壁・屋根・排水溝・扉・窓などの位置関係。

口頭や文章で依頼することが多い土建資料ですが、内容が難しくなればなるほど、簡単な平面図や立面図をExcelで作る方が設計速度は速くなります。

平面配管図

平面配管図もExcelである程度作ることができます。狭い空間に設備を配置しなければいけないため、そもそもそこに設備を置くことができるのか?といった概要設計にはExcelで十分に作成可能です。

ほぼ正方形のマス目上にセルの行と列の幅を揃えて、1マスが10cmや1mという単位にします。機器の大きさをマス目に合わせて円や長方形で形作り、機器同士をつなぐために必要な配管のピースを割り当てます。

ピースは配管のエルボ・チーズやフランジの他にバルブなど、さまざまの面間の情報が必要です。配管の位置に対して通行や作業ができるかどうかを検討すれば、概要設計は終わり。

そこに設備を置くことができるという案を作ることが最低1つはできます。1つでも案ができれば、他の案は割と簡単に思いつきます。1つ目の案をCADで綺麗に書けば、あっという間にコピー完了。

1つ目の案を誰がいつ作るか?という世界の話になります。これをP&IDなどと同じくドラフトマンにお願いするか、自分で作成するかの違いですね。

参考

エンジニアリングの基礎資料はCADで作ると思っている人もいるかもしれませんが、実際にはもっとアナログです。どういう資料が必要かさえ分かれば、excelでも十分に可能。エンジニアリング資料については以下のような本でも勉強が可能です。

最後に

DXが進んだ現在でも、化学プラント設計の本質は変わっていません。

  • 紙:設計意図を整理する
  • Excel:仮定と結果を数値で確認する
  • CAD:確定した内容を正確に表現する

この順番を守ることで、
設計の説明ができるエンジニアになれます。

ツールが高度になるほど、基礎的な思考整理の重要性は増しています。
DX時代だからこそ、紙とExcelを軽視してはいけません。

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