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日野自動車の不正問題にみるプロジェクト遂行の課題

日野自動車 運転
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日野自動車の認証不正問題(fraud problem)の件は、みなさんご存じでしょうか。

製造業に勤める人なら誰もが要約版、特に第6章と第7章は目を通しておきたいです。

プロジェクトという点では化学プラントの各種プロジェクトも例外ではありません。

というより、かなり似通った状況にあります。

今回は日野自動車の報告書から、化学プラントのプロジェクトで起こりえることを考えてみます。

不正問題(fraud problem)の真因分析から感じたこと

報告書の第6章には本問題の真因分析として、複数の問題が上がっています。

本問題だけに固有の問題や業過に固有の問題もあがっていますので、そこはとりあげません。

本問題が複数のプロジェクト(プロジェクトE、プロジェクトG、プロジェクトH)と関連があり、プロジェクトという目線で、典型的な化学プラントでは同じ問題を抱えていそうです。

セクショナリズムと人材の固定化

セクショナリズムは縦割組織と読み替えても良いでしょう。

化学プラントのプロジェクトの場合でも組織レベルで見ると、フラスコレベルの研究・中規模サイズのプロセス開発・実機プロセスの設計・建設工事の具体的な設計・原料や資材の調達・現場工事・試製造というように多くの組織が関わります。

私のような機電系エンジニアは「建設工事の具体的な設計」に携わっています。

個人的には、日野自動車のパワートレーン実験部が化学プラントの「建設工事の具体的な設計」と同じ構造であるように思います。

  • 開発プロセスの終盤
  • 設計の見直しやレイアウトの変更はできない
  • 開発目標値の達成の最後の砦
  • 課題を解決するための頼れる相談相手がいない

この辺りのフレーズは、化学プラントの機電系エンジニアでも完全に当てはまります。

プロセス開発が遅れて、P&IDの手前の略フローや略配置ができあがらず、マテリアルバランスすら怪しいという段階で、配管図を書いていく流れになります。

未確定プロセスがある中、プロジェクトを進めていかざるを得ません。

この間、情報が入ってこない分断された状態です。

分からないことがあるなかで、できる範囲で配管図を進めていって、終盤になってやっとプロセスが確定して、その時には選択肢が1つしかない状態に追い込まれます。

かといって、納期は必達なので「やるしかないんだ!」という追い込まれ方をします。

化学プラントの機電系エンジニアの場合、少数精鋭であることや化学の知識がないという理由で、同じ部署で人材が固定化しがちです。

別部署への異動はほとんどありません。

存在価値を無くさないように自部門で業務を専有化しようという人も確かにいますが、それ以上に自部門以外の周囲の部門の苦労を知ろうとすらしない人が多いです。

例えば、

  • 機械設計よりも計装設計の方がより終盤側になって厳しいから、機械設計は楽でいい
  • 製造部やプロセス開発の苦労を知らずに、情報が来ないことに不満を言う
  • 1日単位で仕事をしている工事会社には、実はもっと大きな負担を強いている

というような主張や行動をする人は、少なからずいます。

他部門のことを考えて意見を表現することができない人は、とても多いです。

どちらかというと言葉足らずという表現の方が適切でしょうか。

日野自動車の従業員アンケートでもちゃんと感じている人は実は多かったようです。

ですが日常業務でそういう意見を言える雰囲気ではなかったと思います。

私の職場も全く同じ状況なので想像に難くないです。

能力やリソースに関する経営層と現場の認識に隔絶があったこと

リソースが把握できていない経営層というのは実はそんなに多くはないと思っています。

でも、リソースが少ないことを認識していながら、「やるしかないんだ!」という風土でリソースを強引に配分している経営層は多いです。

  • プロジェクトの期間だけ我慢してほしい
  • 人が少ないのは分かっているから、募集はしているが人が来ない
  • 社員を雇っても、上司の教え方が悪くて潰れてしまう

こういう感じの言い訳をする経営層は多いと思います。

なにせ、弊部が上記の構造そのものですから。

上意下達の気風が強すぎる組織、パワーハラスメント体質

上司に逆らえないという意味では

  • 担当者から管理職への意見
  • 管理職から工場経営層への意見
  • 工場経営層から本社への意見

段階を分けて、いずれの段階でも逆らえない構図は発生します。

特に上層部になるほどその風潮は強いでしょう。

なぜなら「できない」と主張したら評価が下がることが目に見えていますから。

経営層クラスになると、自工場へ新製品を導入することは工場の操業や従業員の雇用を守るうえでとても重要だからです。

コンペティションで他工場に負けてしまうと、仕事がなくなってしまう。

これを恐れた結果として、無理をしてしまう構図にあります。

任期中だけ問題を行さなければ良くて、逃げ切れればいいと思っている経営層は居ます。

先駆者に対する尊敬の念は、日本企業では多いでしょう。

設計意図が良く分からないけど既設がAだったから、更新後もAにする。

こういう既存設備のコピーが横行していませんか。

パワーハラスメントというような分かりやすい形でなくても、その一歩手前の状況は結構体験します。

過去の成功体験に引きずられていることや「撤退戦」を苦手とする風土

「無理」を「可能」にしようとする現場の頑張りは、悪いことではありません。

簡単に「無理」と言ってしまう人がいることは確かで、少し考えれば実は「可能」だったということは多いからです。

ここにタンクを置くことができない。

と言い切ってしまう若手エンジニアの設計を見てみたら、隣のタンクを少しずらしただけで、可能だったという例はあります。

見ている範囲や前提条件が凝り固まってしまって、自由度を自ら狭めているというパターンです。

日野自動車の件は、この次元とは違ってとにかく現場で無理をさせすぎてしまっていたという側でしょう。

これを防ぐために管理者がいるはずです。

そこが機能しないことを管理者の責任だと切り捨てる風潮はどこにでもあります。

これも思考停止。

管理者がなぜ問題を抽出できないのか。そこにどんな問題があるのか。

これを考えることがとても大事です。

「言ったもの負け」の風土も、日本企業ならどこにでもあるでしょう。

過去の実績にとらわれるという風潮のは、セクショナリズムと合わせて横行しやすい風潮です。

例えば、SDMを例年30日で実施していたのに、無理して1日だけ短縮して29日になった年があったら、

企画部は「来年も1日短縮で」と主張してきます。

再発防止対策

日野自動車の再発防止対策は、個人的には響きませんでした。

スコープが広すぎるからという意味であって、報告書の対策が間違っているという訳ではありません。

そこで個人的に大事だと考えることを述べたいと思います。

無理という雰囲気つくり

JTCによくある頑張ってしまう風土を無くすことが、とても大事だと思います。

これは上位層が変わらないといけません。

「できます」と部下が言ったとしても、上司が思う「できた」とはとても形が違う「限界を超えた」最低限の出来だったという場合があれば、そこが反省すべきポイントです。

  • 上司に「できません・無理」といえない
  • 主張する場がない
  • 会議室で主張しても伝わらない

こういう可能性を感じたら、やはり現場に行きましょう。答えは現場にあります。

会社や組織という以前に、個人レベルでできることです。

言語化は大事ですが、限界があります。個人差も大きいです。

この辺を自ら実践しようとしない管理職には期待できませんね。

その結果、情報の分断がさらに促進されていきます・・・。

情報や思想の共有

プロジェクトにおける設計思想を想定していますが、情報や思想の共有はとても大事です。

設計書レベルでは表現できない内容の方が多いでしょう。

  • 機械設計者には化学反応の危険性は分からないから、とにかくやって欲しいことだけ伝えよう
  • 部内で議論して優先順位を決めてからでないと混乱するだろうから、情報は出さないで良いだろう
  • ちょっと忙しくて情報を出すのを忘れていた

セクショナリズムより遥かに狭い次元での、個人レベルでの話としてもこういう問題があります。

当の本人は気を回しているつもりですが、情報の分断が起こることで縦割りを推進してしまっています。

相手のことを考えた表現

近年、上司から部下への指導方法の問題がクローズアップされています。

上司側がターゲットになりやすいですが、部下も含めて「自分の気持ちや考え」を主張する人は驚くほど少ないです。

Aという現状だから、とにかくBをやってほしい。

これで人を動かそうとしています。

上司-部下の関係よりも上流-下流の関係でもこれは起こります。

セクショナリズムの弊害と言っても良いかもしれません。

Aという現状に対して、Bをやってほしい。できなればCという方法もあるけどDというハードルがある。

こんな感じのコミュニケーションがしたいですね。

参考

最後に

日野自動車の認証不正問題の報告書から、化学プラントのプロジェクトでも起こりそうなこと起こっていることを振り返ってみました。

セクショナリズム・リソース・上意下達・過去の成功体験

いろいろなキーワードが組織の課題として当てはまります。

上のポジションにいる人ほど学んで行動を変えないといけないですね。

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