“シールポット“について解説します。
シールポットは化学プラントでよく使う安全装置です。
構造も機能もシンプルなはずですが、意外と考えることがあります。
内圧維持
シールポットの目的はタンクの内圧を微量な範囲で維持することです。
下の図のように大気圧タンクのシール目的で使うことが多いでしょう。

シールポットを使わずに、ガスラインをそのまま大気に開放してしまうと非常に危険です。

例えばタンクが加圧状態になったときは、タンク内容物のガスが大気に漏れ出します。
タンクが負圧状態になったときには、大気(空気)がタンク内に漏れ込みます。
ガスが漏れた場合は、地球環境や人体への被害が及びます。
ガスを漏らさないという仕組みだけなら、フレアースタックやスクラバーなどの仕組みも考えられますが、シールポットは安価でできるメリットがあります。
タンク内に空気が混入した場合は、例えば危険物4類なら火災爆発による大事故が起こりえます。
こういう状況を防ぐために、シールポットを使います。
構造
シールポットの構造を紹介します。
簡単にいうと、容器内にパイプをディップさせたものです。
容器に天蓋から内部にディップさせたラインと、天板にノズルだけを取ったラインの2つを作成します。
このラインをタンクと大気に接続させて、中に液体を入れればシールポットの完成です。

タンクのガスラインと大気口をシールポットへ接続する方法で、加圧型と負圧型に使い分けることが可能です。
例えば、上の図の左側は加圧型・右側は負圧型です。
危険物タンクなどは加圧にも負圧にもシールできる構造が必要なので、上のシールポットを2つ作ってつなげる必要があります。
ちょっと工夫すれば、下のような合流型も考えられます。

材質
材質は一般にステンレスを使います。
タンク側の材質に合わせてSUS304とSUS316Lを使い分けると良いでしょう。
タンクに高級金属材料を使う場合には、PTFEライニングや樹脂ライニングなどにすると良いでしょう。
この場合は、上記の合流型は作れないと思った方が良いでしょう。
シールやライニングが結構面倒です。
実現しようとするとフランジ数が増えていく方向になり、漏れのリスクを上げていきます。
微量でも酸や塩を含む場合は、ステンレスはちょっと注意です。
気が付いた時にはボロボロになっていた。。。ということも起こりえます。
液体
シールポットは液体でシールする装置です。
液体の種類も考慮すべき内容です。
一般には安価な水を使います。
冬季に水が凍る可能性がある地域では、流動パラフィンなどの不凍液を使う必要があります。
シール液は水であれば常時流しているのが理想です。

シールポット内の水はガスを吸収して性質が変わります。
これをずっとシールポット内にため込んでいると、例えばガス吸収の性質などが悪くなったり詰まったりします。
そのためにも、一定量の水を常時流して排水し、シール水の性質を一定に保ちます。
排水配管の高さを適切に決めて液高さを作り、ディップ高さを決めることでシール深さを設計できます。
流動パラフィンの場合は、これが難しいので定期的に交換せざるを得ないでしょう。
そのためにも液抜き用のバルブが底面に必要になります。
寸法
シールポットの寸法について解説します。
主要指標は容量です。
シールすべきガスの種類などによって使い分けることになるでしょう。
例えばシール液をシールポットにいったん張り込んで、ガスを吸収できなくなるまでに1日の猶予が必要な液量というような決め方をします。
実際には各会社の実績で決まってしまうことが多いですけど。
高さはシール高さとの関係で決まります。
シール高さはタンクの設計圧力より低い値にしないといけません。
シール可能な圧力が高すぎると、タンクが爆発してしまいますね。
径は、容量→高さの2次的な要素として決まります。
厳密にはタンクのガスライン・大気開放のラインの口径やディップ深さと関係がありますが、意識することは少ないと思います。

最後に
化学プラントのシールポットの構造や設計上の注意点を解説しました。
危険物タンクを微加圧・負圧に保つための内圧維持装置です。
ディップ型のタンクを2つ並べて加圧にも負圧にも使えるようにして、水を常時流す構造が多いでしょう。
材質はステンレスが一般的です。
この記事が記事が皆さんのお役に立てれば嬉しいです。

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