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機械工事の品質チェックポイント|化学プラント工事

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化学プラントの機械系工事品質(construction quality)チェックポイントをまとめました。

難しいのはチェックの複雑さではなくて、量の多さ。

1つ1つは単純なことですが、チェックすべき点数が多くチェック項目も多いのが課題です。

1つでもミスがあると、運転段階でトラブルになります。

この記事を読むと、トラブルを少しでも減らすためのポイントが理解できます。

1回の現場パトロールで1つの点に着目してマスターしていき、段階的にマスターしていきたいですね。

機器据付

機器据付は化学プラントの工事の中でも最も重要であるべきです。

工事品質でも最高品質を担保するべきでしょう。

機器据付の工事品質を担当するためのチェックポイントを紹介しましょう。

  • 据付方法の図面上でのチェック
  • 据付時の立会い
  • 据付完了時の水平調整

大規模な据付工事なら据付方法のチェックを行うでしょう。

バッチ系化学プラントではあまりチェックしないことが多いです。

そこまで重要な工事の数が多くないという意味でしょう。

ただし、立会は確実に行います。

機電系エンジニアが機器の立会時にできることはほとんどありません。

せいぜい注意喚起程度です。

機電系エンジニア自身にスキルが無く工事会社に任せっきりにした方が良いという意味です。

工場内のルールや安全意識は機電系エンジニアの方が高いケースがあるので、安全監視という意味では一定の価値があります。

それ以上に、据付時に工事会社が問題を起こしていないことを確認する、責任回避の意味がつよいですけどね。

据付最後には水平度の調整をします。

薄板ライナーなどを使ってレベル出しを行います。

水準器が基準範囲内に入っていることを確認して終了。

ところがこれって実はあまり意味がありません

というのも配管などの付帯設備を付けると設備が傾くからです。

配管などを強引に取り付けようとすると設備側に影響がでてしまうというケースです。

本当に設備への影響を無くそうとする場合は、伸縮継手で接続するしかありません。

配管工事

配管工事は化学プラントの工事の中でも圧倒的なボリュームがあります。

工事の品質を確認するうえで様々な検査が必要です。

材料

配管工事のスタートは材料です。

この材料が適切であるかどうかを検査することが品質検査上は非常に大事です。

一般的な配管は施工会社に手配してもらうので、施工会社が納入会社が品質チェックを行っているでしょう。

ここで品質の担保ができない場合は、専門の検査者を雇うなどの方法が考えられます。

グラスライニング配管フッ素樹脂ライニング配管も受入時に検査しましょう。

溶接棒も材料チェックとしては大事です。

プレファブ

材料が手に入り作業場でプレファブをした後にチェックを行います。

PT検査・酸洗い・スチーミングなどを一般的に行います。

施工会社の検査によるので、施工会社の品質保証部門のチェックが入ります。

配管チェック

メインは現地での配管チェックです。

ラインチェックという場合もあるでしょう。

図面屋さんがチェックする場合と、運転員がチェックする場合の2パターンがありますが、ほぼ同じ発想です。

図面屋さんの場合は配管図と照合するために形状1つ1つの細かいレベルまでチェックする点が特徴です。

P&IDの確認

配管チェックはその対象を絞り込むのが第1ステップです。

無数にある化学プラントの配管から、特定のラインを追いかける作業。

この絞り込みには、P&IDが必須です。

P&IDに以下の作業を、下準備として行います。

  • チェック箇所の着色(マーカーなどで)
  • バルブの開閉状況の表示(○×などで)

このP&IDを複数枚の紙の書類として、現地に持っていきます。

普通は20~30枚以上です。

気密試験でも同じくP&IDを準備します。

運転前のスタート準備にも使いますね。

現地の操作面周りの確認

現場に行くと、まずは現場の操作面周りを追いかけます。

反応器やポンプ周りから行うのが一般的です。

ここは、配管形状が複雑ですので、丁寧に確認していきます。

  • 口径はいくらか?
  • バルブは何個付いているか?
  • チーズ、エルボ、レデューサーは何が付いているか?
  • 保温トレースが付いているか?

1人で確認するときは、P&IDと現地を目で追っていきがちです。

でも、正しくは、「声に出して読みます」

どこから読み上げるかはケースバイケース。

2人以上で確認するときは、声に出して読み上げるのは必須です。

そうしないと、作業の分担ができません。

複数の人間が、バラバラにチェックするのは非効率的。

行先の確認

次にP&IDを見て、行先を確認します。

操作面周りから別の操作面周りに配管が伸びている、という思考です。

すでに運用している配管ラインなら、行先を表示しているでしょう。

ところが、工事完成間際の気密試験時には、行先は表示していません。

むしろ、配管チェックをして行先を確認します

このために、P&IDを使います。

ポンプ周りからタンクに送るラインを考えると分かりやすいでしょう。

ポンプ周りの操作面を確認したあと、P&IDで行先を確認します。

そして、行先に向かって配管を追いかけていきます。

配管ルートを追いかける

配管ルートを追いかける際は、以下の点に注意が必要です。

  • 高所のスタンドに乗っている配管は、スタンドの位置・配管の位置を口で表現する。「○段目の右から△の位置」
  • 階をまたぐときは、柱や設備の位置関係を口で表現する「□番目の柱の南東」

こうして、間違いがないことを確認しながら、追いかけていきます。

そうしないと、途中で迷子になって、戻らないといけません。

私もよく迷子になります ^ ^

複数の人間が追いかけるときには、この確認作業を怠ることが多いです。

誰かが確認してくれるから、自分は後に付いていけばいい

こういう思想になりがちです。

これは、簡単に言うとサボりです。

ガスケット

ガスケットは種類が多いのが課題の1つ。

汎用的に使える唯一のガスケットは存在せず、使い分けないといけません。

ここで起こりえることが、現場工事での間違い。

現場工事で間違いを極力なくすためにできることを紹介します。

ゼロにしたいのが理想ですが、人間が行う以上はミスが起こります。

ましてや化学プラントの工事のように膨大な配管距離があればなおさら。

いろいろな工程でチェックをして間違いを排除していくしかありません。

色を変える

ガスケットの色を変えるのは最も確実な方法です。

汎用ジョイントシートなら、カーボン・シリカ・無機充填剤などの配合時に着色成分を入れていることでしょう。

見た目が明らかに違いますからね。

配管工事も間違いを無くすためには色を変えます。

鉄系とステンレス系では明らかに違いますよね。

鉄系なら汎用ジョイントシート、ステンレス系ならフッ素樹脂ガスケット、ライニング系ならフッ素樹脂包みガスケットと認識できていれば間違える確率はぐっと下がります。

ところが、問題が1つ。

フッ素樹脂包みガスケットってガスケットをフランジに挿入した後は非常に見にくいです。

外径側が溶着されているかどうかという点は分かりやすいのですが、問題は内径側。

Yの字型なのかコの字型なのか、認識はできなくなります。

こういう時は、特殊なコの字型に外形側にちょっとした着色をマーカーなどで行うと良いです。

理想は外周の3か所120°均等に

2か所や4か所など偶数個にすると、ボルト穴にちょうど隠れて見えないという可能性があります。

1か所をちょっと長い範囲で着色すれば?という意見もありそうですが、

フランジ面を一周回って確認しなければいけなくなるので不便です。

この辺も工夫しどころですよね^^

掲示する

施工会社の作業員に対する教育です。

現場の休憩所・集会場に掲示するだけでなく、作業エリア付近の資材置き場などにも掲示しておくと良いでしょう。

間違える確率はこれだけでも下がります。

できることですので、忘れずに行いましょう。

記録を取る

作業員に対して緊張感を持たせるために、記録を取ると良いでしょう。

各作業班に対して日々の施工エリアの配管図を渡して、進捗の記録を管理する

ガスケットの取付やボルトの増し締めなどの記録も取っていきます。

地味ですが大事なこと。

万が一施工ミスが起こり運転時にトラブルがあったときに、どの班のいつの工事だったかを後で検索することができます。

大手の工事会社ならこういう記録を取る人を配置できますが、

バッチ系化学プラントの日常的なSDMレベルや数億程度の改造工事レベルでは、難しいでしょう。

私も今までそういう人には数回しか出会ったことがありません。

立ち会う

時間が掛かりアナログな方法ですが、取付するその瞬間を見るというのが最後の方法です。

工事のまさにその段階をみるのではなくて、気密テストで使った遮断板を抜いてガスケットを入れるタイミングが良いでしょう。

特に重要な工程の配管はチェックしておきたいですね。

そんなチェックは数年に1回あるかないかというレベルです。

ボルトナット

ガスケットと同じくボルトナットもチェックポイントです。

  • ボルトナットがちゃんと締まっているか
  • ボルト長さが適正か
  • 材質が間違っていないか
  • ボルトやナットの形状が適正か

ボルトナットのチェックは施工会社に依存するでしょう。

オーナーエンジニアがボルトナットまで見るのはかなり大変です。

配管気密試験

配管気密試験は、その配管工事の検査です。

配管工事が化学プラントのほぼ全てなので、

配管気密試験は、化学プラントの工事検査の中でも非常に重要な試験です。

工事品質を確保するために、最も重要な検査です。

この検査で失敗すると、運転時に液が漏れて大事故につながります。

とはいえ、普通はプロセスの運転を行う前に、水を通すので、だいたいは気が付くのですが…。

水を通さないラインや真空系のラインでは、実運転になって初めて使う場所があるので要注意。

テストフロー作成

配管気密試験を行う場所を、テストフローとして製作します。

P&IDには普通は配管改造箇所が着色されています。

これを活用して、テストフローを作成します。

  • 気密試験を行うラインを着色、採番
  • 閉止板を取り付けるラインを明示
  • バルブの開閉する箇所を明示
  • エアーと吹き込む場所を明示

各検査ラインをリスト化します。

  • 検査ライン
  • 試験圧力
  • 試験日
  • 検査者

これらを現場で確認するためのリストです。

P&IDは大量の紙が必要なので、現場で1つ1つ見ていくのは面倒です。

この早見表・目次の扱いです。

資材準備

資器材の準備をします。

コンプレッサーは圧縮エアーを供給するために必要。

工場によっては、工場内エアーを使わせる場合もあります。

圧縮エアーはガソリンを使うので、ガソリンが切れたら給油しないといけず、その作業も面倒ですので。

閉止板はバルブの内通が起こりそうな場所や、配管改造範囲だけを試験するために使います。

既存の配管の一部を改造したときに、既存のフランジ部に付けます。

工事会社が工事した箇所と、元からあった箇所とを明確に区別して、工事会社の責任範囲を明確に検査するために使います。

圧力計は気密圧力が適正にあることを管理するために使います。

普通は2個の圧力計を使います。

1個ならその値が、合っているか間違っているか分かりませんので。

と言いつつ、2個でもずれていたらどちらが正しいか分かりにくいのですが ^ ^

昇圧テスト

昇圧テストは、工事会社が行う試験です。

事前試験とも言います。

普通はここで100%になるまで検査します。

工事現場で工事後半になるとたまに「ピーッ」って音が鳴ります。

これはエアーが漏れている音。

その場所を特定するために、せっけん水を使って各フランジを見ていきます。

高い位置にあるフランジも、足場や周囲の配管をよじ登って、検査します。

これができるのは工事会社の中堅~若手

年寄になると動きが遅くなり難しいです。

ユーザー側の作業員も難しいです。

客先立ち合い

昇圧テストが終わったら、客先が立ち会って検査します。

これは、結構適当です。

ユーザー側として私も立ち会うことがありますが、あまり真剣に見ていません。

真剣に見ているフリをしています。

  • 圧力計がちゃんと付いているかどうか
  • 圧力計がちゃんと指示しているかどうか
  • 閉止板がちゃんと取りついているか
  • バルブの開閉が正しいかどうか

完全に見ているフリです。

消防検査で消防検査官に見てもらうのと同じノリです。

消防検査官も絶対に真剣に見ていません。

見ているフリをしているだけです。

閉止板取外し

検査が終わると、閉止板の取り外しを行います。

閉止板の取り外しは化学プラントの運転上きわめて重要です。

閉止板が1つでも取り忘れていると、大事故につながります。

閉止板の挿入・取り外し確認は、一元管理すべきです。

ユーザー製造部・工事会社それぞれが単独に管理するものではありません。

閉止板取り外しによるトラブルは、数多くあります。

単純な装置だからこそ、間違いが起こりやすく現場で確実に管理しないといけない問題です。

そのためには、以下のような管理表が必要です。

  • 閉止板の口径ごとに採番
  • P&IDに挿入した閉止板の番号を記載。
  • 閉止板の挿入リストを作成。
  • 挿入者・挿入日を記載
  • 同様に取り外しも記載。

増締め

閉止板やエアー供給口はそれを取り外した後に、増締めをしないといけません。

ボルトが緩んでいる可能性が高いからです。

閉止板やエアー供給口以外の部分は気密試験が確認できますが、試験が終わって気が緩んでいる所に落とし穴が。

ボルトの締め付けが緩くて、運転時に漏れる恐れがあり、

閉止板を取り外した後に、増締め確認をユーザーが立ち会う工場もあります。

足場工事

足場工事は工事品質という意味では対象外です。

工事安全という意味でパトロールの指摘対象にはなりやすいですが、品質には関係ありません。

保温工事

保温工事も工事品質という意味ではほとんど話題にならないでしょう。

工事品質で大事なことは系統内への混入

気密試験で系統の漏れがないことが確認でき異物を系統内に入れてさえなければ、品質上は99%合格です。

あとは溶接の問題などレアケース。

この意味で保温工事は品質には影響しません。

その前の配管工事で品質上は決着がついているからですね。

保温工事は工事終盤であって、他の作業で忙しくなったユーザーが保温工事のチェックをする余裕がないという実情も関連します。

工事品質を悪化させる要因

工事品質を悪化させる要因をいくつか紹介しましょう。

  • 短すぎる工期
  • 安すぎる労務費
  • 過剰な要求

簡単にいうと無理をしているということ。

ユーザー・施工会社それぞれ自分たちがどんなレベルに居るのか客観的に見ることができないために、お互いの溝を埋めにくいです。

常駐の施工会社であればユーザーとの要求のすり合わせを長年構築していくことは可能でしょうが、プラントエンジニアリング会社が間に入ると難しいです。

その場合に過剰な要求をしても損をするだけです。

どれだけ依頼しても催促しても先延ばしにして時間切れにするケースが多いです。

プラントエンジニアリング会社での工事は速く終わらせて商業運転にとにかくこぎつけ、出てきた不具合は常駐の施工会社に依頼する。

という方法が現実的です。

過剰な工事品質(construction quality)の要求の例

過剰な工事品質の要求って具体的にどういうモノだと思いますか?

いくつか紹介しましょう。

配管が等間隔に並んでいない

ラック上の配管など等間隔に並んでいる配管を見ると、特定の配管が傾いているケースを見かけるでしょう。

ここに過剰に反応する人が居ます。

目で見て傾いているレベルは修正しなさい

口では簡単に言いますが、修正は結構大変です。

ズレの起こっている場所と原因を特定し、配管の修正量を決めるだけで一仕事。

時間を浪費していく割に、品質上は実質的な差がありません。

液体や気体が滞りなく通ればいいだけの配管なのですから。

こういうズレの要因は、実は配管図のレベル基準や水平基準にあるのですが、なかなか気が付かない問題です。

配管が逆勾配

配管には適切な勾配を設置します。

勾配の向きが変わると問題になるケースはありますが、水準器で1つ1つチェックするレベルは過剰です。

本当に勾配の向きが重要なら、配管図で高さの指定をしたり意図的に角度を付けた配管にします。

そうではない目で見て判定が付くかどうかのレベルの勾配なら、多少逆勾配になっても問題にはなりません。

そんなところにチェックを掛けれるのは専門の検査員くらいでしょう。

これも配管図のレベル基準水平基準に原因があります。

ボルトの長さが不足している

ボルト長さが不足しているという例も過剰に行いがちです。

ナットを締めた状態でボルトのネジ山が2~3山出ること。

現場で分かりやすい指摘箇所です。

5山も出ているからダメ!指摘!

みたいなケースが過剰な例です。

逆に1山も出ているかどうか怪しい場合は指摘しましょう。

大量にボルトを現場に持参してそれっぽいボルトを拾いあげて付けるだけなので、見落とされやすいです。

ボルトナットを締めている作業者は絶対に気が付くのですが、誰が締めたかを誰もチェックしていないから大丈夫だろうという感覚でしょう。

もしくは急いでいて追われているから、身近にあるボルトをそのまま付けた。

参考

最後に

化学プラントの機械系工事の品質チェックポイントについて解説しました。

配管工事が大半でラインチェックとガスケット・ボルトナットのチェックが大事です。

簡単ですが数が多いから大変。

据付・足場・保温工事は品質上は大きな問題にはなりません。

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