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化学プラントの工事パトロールは何のためにやるの?

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化学プラントで工事に関わる部門は、数多くのパトロール(construction patrol)を実施します。

製造部の生産活動としてのパトロールは安全活動上大きな意味がありますが、工事上のパトロールはそうとばかりも言えません。

そんな工事パトロールについて解説します。

どちらかというと、やっている感を対外的にアピールする目的が強いです。

社内外の監査や、工場見学での自社の紹介などで登場します。

普段は多くの人と時間を掛けるだけで成果があがりにくいパトロールですが、対外的な説明をしている時だけはありがたみを感じます。

若手の時にはなかなか感じにくいでしょう。

工事パトロール(construction patrol)の意義

ユーザー側のパトロールの意義はどこにあるでしょうか?

あまり多くは語られませんが、答えは安全配慮義務

昔のパトロールというと現場作業での危険なポイントを指摘指導するというものでしたが、今ではその性質は完全に変わっています。

ユーザー側に工事の技術を持った人がおらず、技術面では完全に協力会社任せ。

こうなった瞬間に技術指導は不可能です。

安全配慮義務

一方で安全配慮義務はますます重要になっています。

安全配慮義務は事業者から労働者に対して発生するもので、同じ会社内が対象と思うかもしれません。

実際にはユーザーの敷地内で他社が作業している時にも、配慮する必要があります。

狭い場所・高い場所・暑い場所・・・

いろいろと危険な環境を内在している化学プラント。

たとえ運転が停止していてもリスクは残ります。

多くの会社が一斉に現場に入ることで起こる錯綜工事も危険

これらの環境を作っているのは発注者側だから、これらが原因で工事作業員がケガをしても発注者は何らかの責を問われかねません。

パトロールをしておらず現場任せにしているとなおさら指摘されやすいです。

こういうリスクを回避するためにパトロールの意義があります。

やっている感

ユーザー側のパトロールはやっている感を出すのが大事です。

やっている感を出すにはかんたんです。

頻度を上げればOK。

  • 自主パトロール
  • 課長パトロール
  • 部長パトロール
  • 工場長パトロール
  • 協力会社自主パトロール

これを定期的に行えばやっている感を出せます。

パトロールの質なんて変わるはずないのに。回数でごまかすという発想です。

これが会社の安全諸活動の一環として対外アピールできます。

本気度アピール

工事パトロールは依頼者側の本気度を示すものです。

施工者からは鬱陶しいと思われてもパトロールをするのは、その工事がとても大事だと思っているから。

依頼しっぱなし・丸投げで誰も興味を持っていない工事と思われないように。

そこで危ない作業が起こっていないか確認するために。

パトロールを行います。

工事会社は一度受けた作業は行おうと頑張ります。それがどんなに危なくても。

依頼者側はその作業が危ないと事前に認識していたかどうか、実は疑わしいです。

しかし依頼者がそれが危ないと知ることは、工事当日。

そこでそのまま作業してもらうかストップしてもらうかを判断することもパトロールでチェック市長としています。

工事現場はエンジニアの現場

設備設計エンジニアに取ってみれば工事は現場の1つです。

もちろん生産活動も現場そのものですが、工事も現場。

工事計画の立案をして設計図書を書き上げ、いざ現場でどんなふうに工事が出来上がっていくか

これを見る意義は設計者としてはとても大きいです。

現場を知らずに無謀な改造案を考えたり、非効率な作業になっていたり・・・

辛い作業を作業者に強いている姿を見れば、設計者として胸が痛みます。

この感覚が次の設計では何か少しでも楽にできるように・・・という配慮に繋がります。

普通はね。

これが最近の設計者では全く感じない人もいるようです。こういう人は現場設計者向きではありません。

それでも安易に配置転換できないのが難しいところ。

施工者側の受け止め

さてそんな無数のパトロールですが、施工者側はどう受けて止めているでしょうか?

分かり切っていますよね。

うっとうしい

この一言です。

立場上偉い人が我が物顔で勝手に作業現場に入ってきて、実際の作業内容なんて知るはずもないのに、仕掛中の作業に対して危険性の指摘をして対応させる。

その指摘内容は改善計画を立てて、報告をしないといけません。

おまけに指摘する自身は結構危ない行動をします。

純粋に作業を邪魔しに来ているとしか思えませんね。

パトロールがあるときを狙って作業者は休憩時間を取ったりします。

これが何を意味しているか・・・。

工事パトロール(construction patrol)の実際

工事パトロールでは実際にどんなことをするでしょうか?

  1. 事務所に集合
  2. 重点監視項目の設定
  3. 現場確認ルートの設定
  4. 現場で大名行列
  5. 事務所で現場の指摘箇所の認識合わせ
  6. 改善結果報告書の作成
  7. 改善結果の確認

こんなことを行います。

現場よりも事務所での時間の方が長いです。

記録偏重主義ですね。

  • 作業区画や資材区画が整備されている
  • チェックシートや表示をしている
  • 消火器・消火バケツを準備している

こういう環境面や制度面の指摘しかできません。

作業内容を知らないから当然ですよね。

誰が見ても分かりやすい部分しかチェックできません。

そのためにチェックシートを付けているかもしれませんね。

ユーザー側が分かりやすく指摘するため。そしてそれを改善した風を出すため。

チェックシートがあると基本的な不具合を防ぐ効果があるのは確かですが、

チェックシートが多すぎると形骸化します。

チェックシートがあれば定期的な管理と記録ができます。

やっている感を作れますね。

工事パトロール(construction patrol)はやりだすと止められない

日本企業にあるあるですが、いったん行事をやりだすと止められません。

何かの行事をするのはそれまでに不足している機能があったから。

不足機能を足せば足すほど完全な形に近づいていく。

こう信じて止まない人が本当に多いです。

  • 安全配慮をしてない
  • だからパトロールをする
  • パトロールは色々な人がやるべきだ
  • パトロールに時間を取られ残業する

こんなパターンは多いですよね。

業務の効率化とは真逆の発想です。

安全第一だから安全の機能は足すべきだ!全員参加すべきだ!

本当にこの言葉どおりの対応をするのが日本の会社。

機能の統一化・合理化という発想を言えない理由を作るのが得意です。

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最後に

化学プラントの工事パトロールについて解説しました。

安全配慮義務や記録が目的であり、作業性の改善や技術的な指導はほとんど行いません。

会社の安全衛生活動として対外アピールするためのものです。

その割に掛ける工数が無駄に大きいですが、休み時間と割り切りましょう。

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