汎用「ジョイントシートガスケット」の適用先と注意点 組成・温度・厚み・圧力・ペースト

ジョイントシートガスケット配管

汎用ジョイントシートガスケットについて解説します。

汎用ジョイントシートガスケットは、言葉どおり汎用性を目指したものです。

ところが、実際に汎用的かというとそんなことはありません。

オニオンリング・イカリングのイラスト

ノンアス

昔はガスケットと言えばアスベスト含有のもの。

石綿(アスベスト)の規制に関しては、国土交通省の指導もちゃんと出ています。

アスベスト規制が話題になったのは平成18年ごろ。

当初、どこの会社もアスベスト代替のガスケットを探すべく、ガスケットメーカーと調整したのでしょう。

ガスケットにアスベストを含まないものを、ノンアスベスト(ノンアス)と呼ぶことがあります。

でも、2021年現在ノンアスベストでないアスベスト含有ガスケットは存在しません。

アスベスト含有のガスケットは汎用と呼ぶにふさわしい性能がありました。

ノンアスベストになるとその汎用性は失われ、適用先を考慮しないといけなくなりました。

化学工場向けにノンアスベストのジョイントシートを使用するときの注意点をまとめました。

汎用ジョイントシートの特徴

まずはジョイントシートガスケットの特徴を紹介します。

組成

ジョイントシートの組成はかんたんに言うと、以下のとおりです。

  • NBR
  • アラミド繊維
  • その他

アラミド繊維がアスベストの代わりと思っていれば、とりあえずはOKでしょう。

アラミド繊維をNBRでまとめて形を作っているのでしょう。

細かいことはガスケットの専門家なら知っておきたいでしょうが、ユーザーのエンジニアならその辺は省略して良いです。

その他が割とポイントで、会社によって変わります。

バルカーならロックウール・無機充填剤、ニチアスなら膨張黒鉛が含まれています。

その他の内容物やガスケットの組成割合が、ガスケットの性質を左右しています。

推奨使用先

水・油・気体でも汎用的なもの。

これ結構分かりにくいですよね。

ガスケットのカタログ的には書けないですからね^^

例外はあるものの、全体像をイメージするために代表的な物をあげましょう。

水はユーティリティラインに使う水系全般を指します。

油は化学工場のプロセスの油とは違って、機械の作動油関係です。

気体はエアーとか蒸気。これも化学工場のプロセス中のガスではありません。

油とか気体という単語があって「汎用」という単語があると、何にでも使えそうな気がしますが、

実際には汎用ジョイントシートは水にだけ使えるものと理解しておく方が健全です。

例外的に水以外にも使える物もあるでしょうが、それは例外。

温度

ノンアスガスケットの汎用性を阻害する最大の要因。それが温度

ノンアスガスケットの使用温度は一般に100℃以下です。

100℃を越えると使用先は結構気を使います。100℃ルールです。

メーカーのカタログを見ると200℃近くまで使えそうな気もしますが、過信しない方がいいです。

現にバルカーのカタログでは100℃以上のラインでの注意点を書いています。

100℃以上だとガスケットが硬化して割れる可能性から。

これはNBRのことを指しています。

もちろん100℃以上ですぐにアウトかというと、それは使用先の条件によって変わるため、保証はできません。

それでもメーカーも危険だと判断している以上、対策を記載しています。

ユーザーとしては汎用的なガスケットでカタログに書いてあるような例外的な使い方で管理するか、別のガスケットを選ぶか選択を迫られるところ。

普通は後者を選びます。施工管理が楽ですからね^^

100℃を越える水なんて・・・って一瞬でも思ったあなた。

大事な使用先を忘れていませんか。

そうです。水蒸気です。スチームです。

水系で気体である水蒸気は汎用ジョイントシートの使用候補となります。

でも100℃ルールが邪魔してしまいますね。

  • 水で気体だけど、100℃だから汎用ジョイントシートを使わない
  • 100℃を越えているけど、水で気体だから汎用ジョイントシートを使う

どちらのロジックも現場では成立します。

その会社や工場でどう判断するか分かれるところですね。

アスベストガスケットなら200~300℃まで使用可能なようです。

バッチ系化学工場では若干羨ましいという程度ですね。200℃まで使えれば十分。

厚み

ガスケット厚みは薄いものを推奨されています。

バルカーもニチアスも1.5mmを推奨しています。

あれ?私の職場は3mmだけど?

そう思った人もいるのではないでしょうか。私の職場も3mmです。

この辺はその職場の文化的な物があるでしょう。

本当は1.5mmの方が良いのは分かっているが、いったん3.0mmで設計された工場なら、配管系全体を変更しないといけません。

数万以上のガスケットを変えるために、1000万以上の投資と数か月にわたる工事休止が必要。

その割に効果は限定的。

誰がそのルールを守るか・・・答えは言うまでもありませんね。

圧力

圧力は3~4MPaまで使用可能です。

でもバッチ系化学工場では気にしませんよね。

高くても1MPa以下ですから。

1MPa以上では使用先の吟味をしてくださいと言われても、問題なし。

この辺は、バッチ系化学工場が連続系化学工場より楽だと思われる部分ですね。否定できません。

可溶

ジョイントシートガスケットはステンレスフランジには使わない方が良いと言われます。

これはガスケット中に含まれる塩素分フランジ面で腐食要因となるから。

でも、水系を基本としているジョイントシートガスケットで、ステンレス配管やステンレスフランジを使うことってあるでしょうか?

鉄系の配管とフランジで十分だと思います。

工場の設計思想に依存する部分が多いですが・・・。

ガスケットペースト

ガスケットペーストについて解説します。

ガスケットとフランジを締め付けるとき、シールが確実にできるというケースばかりではありません。

時には漏れます。

フランジの傾き・フランジ面の粗さなどが原因です。

その理由はこちらにも記載しています。

そこで、現場でレベルで大活躍するのが、ガスケットペースト

ペーストをガスケットに塗り、フランジを締め付けて

ペーストを固めることでシールします。

とても便利そうですね!

シール性を向上させることができるので、

気密試験で漏れがあったときに、ペーストを塗ることは

それなりに日常的に行います。

私もやったことはあります。

ところが、このガスケットペーストはやはり弱点があります。

何でも万能に使えるものはありませんね。

滑りやすくなる

ガスケットペーストを塗布すると、滑りやすくなります。

元々はフランジの粗さとガスケットの粗さを利用して、ガスケットの締め付け圧力を決めています。

ペーストを塗布する事で、粗さが小さくなる方向に作用します。

そうすると、滑りやすくなります。

その結果、ちゃんと閉めたように見えても、滑っていて片締めの状態になることがあります。

そうすると、特定の部位に過剰に締め付け力が加わって、ガスケットが破壊されます。

フランジを雑に扱っていいと勘違いする

困ったら、ペーストを塗っておけばいいんだよっ!という強引な意見を言う施工者が出てきます。

その結果、工事現場で取り付け前の配管のフランジを、何も養生せずに地面に置きっぱなし。

誰かがその配管を蹴って地面と擦れあい、フランジ面が傷つくということに。

多少の傷ならカバーできますが、限界はあります。

配管工事の基本的な部分を疎かにしてしまいかねない危険性があります。

マナーが悪い雑な工事会社は、実際にフランジ面の養生などしません。

異物混入を嫌う場所がある

化学工場のユーザーとしては、これをとても気にします。

医薬品関係が特に厳しいでしょう。

ガスケットペーストは最初は液状ですが、固まると固体になります。

これが使用していくうちに剥がれていき、異物になります。

それをユーザーユーザーの客先が嫌がります。

どんなに許容しても、最終工程のろ過機手前まで。

それ以降の工程の配管はガスケットペーストは使ってはいけない。

こういう思想が一般的です。

特に忘れがちなのが、窒素

ここのガスケットペーストを禁止している工場は多いと思います。

これはプロセス中に混入する唯一のユーティリティと言っていいもの。

トピックス

ガスケットは種類がいっぱいあって使い方もいっぱいあります。

自社で使う範囲に限定しても膨大な量があるでしょう。

バッチ系化学工場で使う範囲で汎用ジョイントシートのトピックスをいくつか紹介します。

膨張黒鉛は絶対に良いか?

ガスケットに膨張黒鉛を混ぜ込んだタイプは、ジョイントシートだけでなくフッ素樹脂ガスケットでも存在します。

この膨張黒鉛は化学工場ではありがたい存在です。

というのも、黒鉛は電気を通すから。

電気を通すということは、静電気を貯める要素が減って火災爆発のリスクが減るということ。

PTFEは便利だけど帯電しやすいのが難点なので、できれば導電性にしたいと思うのがエンジニアや運転員の発想です。

ここで膨張黒鉛は電気を通しやすいから採用したくなります。

でも、フッ素樹脂包みガスケットの中芯で膨張黒鉛を使う場合はどうでしょうか?

浮き導体になります。

浮き導体になると、運転時に浮き導体部に溜まった静電気が逃げる場所がありません。

一定の電荷が溜まると空気中を放電しようとします。

放電先がフランジのボルト部分。

フランジのガスケット周りは、可燃性ガスが配管内部から漏れてきて爆発性雰囲気を形成するおそれがあるので、

そこに着火源である静電気放電が発生すると、燃える可能性があります。

リスクとしては結構怖いです。

そこを気にするなら、初めから膨張黒鉛を使わない方が良いのでは?という意見もあるでしょう。

膨張黒鉛は電気を通すので、フッ素樹脂包みガスケットでは浮き導体になる可能性がある。

ホットボルティングは行うべきか?

高温ラインではホットボルティングは一般的に行っているでしょう。

この意味について、ガスケットの観点から解説します。

ホットボルティングは、常温の配管から高温の運転条件になって配管が伸びたときに、ガスケットから液が漏れないように増し締めすることを言います。

バッチ系化学工場では蒸気ラインが該当します。

このホットボルティングにどこまで信頼を置くべきでしょうか?

ガスケットメーカーは否定的な立場にあります。

  • 高温下では許容締付面圧が低下する
  • ガスケットが硬化する

この辺りを理由にしています。

だからこそ以下の対策を徹底すべきでしょう。

  • 配管取付時に締付面圧をちゃんと与える
  • ガスケットペーストを塗布する
  • ガスケット厚みを薄くする

締付確認ペーストの塗布が現実的な対策ですね^^

ガスケット厚みは薄い方が良いか?

上の項目でも記載していますが、ガスケットは薄い方が良いと言われます。

これは、締付面圧を高く取れるから。

面圧が高い方がシールが効く確率が高く、プロセス内の圧力を持った流体を外部に漏らさなくなるからです。

面圧が低いと、ガスケットの中の隙間から流体とくにガスが浸透します。

蒸気のようなガスだと避けたいところですよね。

これは基本中の基本。

ところが、バッチ系化学工場では例外があります。

それが、ライニングフランジ

ライニングフランジはフランジ面の表面ひずみが大きいのが特徴。

鉄心入りを使ってフランジ面のひずみを吸収しつつ、ガスケット厚みは薄くするのが鉄則です。

仮に鉄心入りを採用できなかったり調達できない場合は、ガスケット厚みを大きくする方が良いです。

厚みを大きくすることでガスケットの変形量を大きくして、ひずみを吸収できることを期待する発想です。

シールタイプのフッ素樹脂で、疑似的なフッ素樹脂包みガスケットを作るのと同じで、応急処置的な対応です。

ペーストを使う場所・使わない場所

ガスケットペーストはシール性向上のために基本的には使用します。

ところが、バッチ系化学工場では使わない場合があります。

プロセス中の異物除去フィルターを通って、他に除去する場所がない配管ラインには、ペーストが異物となることすら嫌う場合があります。

こんな時にはペーストは使えませんよね。

この辺りの世界になると、水や窒素などもかなりの清浄度管理を求められます。

長期間の使用による配管の劣化などフランジからの漏れが止まらない場合は、ガスケットペーストを応急処置的に使います。

ユーティリティラインでは運転しながら補修する方法もありますが、プロセスラインではそうもいきません。

配管取替までの時間稼ぎとして、ガスケットペーストを使います。

特に相対的に高圧高温の場所では。

最後に

バッチ系化学工場で使う範囲で汎用ジョイントシートについて解説しました。

組成・使用先・温度・厚み・圧力・可溶などの性質があります。

ガスケットペーストについても触れています。

この記事が皆さんのお役に立てれば嬉しいです。

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