液体系のオーバーフロー(over flow)の種類を解説します。
オーバーフローは液体の自重を利用した運転制御の方法です。
いろいろな方法が考えられますが、基本的なパターンを3つ紹介します。
取り扱う液体の特徴や性質に応じた配慮が必要になります。
意外と失敗する場合がある部分です。
オーバーフローは意外と罠があります。
横抜き型
まずは基本の横抜き型です。
オーバーフローというとこのタイプが一般的でしょう。
タンクの胴板にノズルを付けて、そこから液を抜くパターンです。
タンク内にパイプを付けてオーバーフローさせるパターンもありますが、それよりも手軽な方法です。
オーバーフローのノズルまでタンク内の液面が到達すれば、自ずと流れていきます。
もう少し細かく見ていきましょう。
オーバーフローノズルではノズルの下の部分を液が流れていきます。
そのため、オーバーフローの流量はノズル部の液面高さと関係があります。
排水系など配管の勾配を使って流す系で出てくる考え方です。
プロセス的には
入口口径 < 出口口径
という関係で配管設計をすれば、たいていの場合は解決します。
化学プラント的にはプロセス内に可燃性の液体が混じっている場合があり、たとえ水であっても可燃性液体が含まれている場合があります。
例えばプロセス装置の洗浄に使った洗浄水が該当します。
この洗浄水には溶解度分だけ設備中の液体が溶けていますが、溶解度を超えた液が流れている場合は当然ですが分離します。
油の方が水より比重が軽い場合がほとんどですので、液面の上の部分に可燃性液体が溜まってしまいます。
ここで横抜きのオーバーフローをしてしまうと、水と可燃性液体の両方が流れていってしまいます。
オーバーフロー配管の出口が大気の場合は、この配管を通じて空気が逆流してくる場合があります。
そうすると可燃性液体と空気が接触して、引火するという危険性が考えられます。
対策として窒素を使うことは考えられますが、それなりの流量で窒素を消費することになります。
- 横抜き型は基本
- 空気を巻き込んでしまうので、可燃性液体が含まれる場合は要注意
逆U型
続いて逆U型です。
下の図のようなイメージです。
逆U型のメリットは「オーバーフローの高さを配管で調節できる」という点にあります。
多数の生産品目があって運転条件が変わるという場合には、このタイプの方が都合が良いでしょう。
高さを都度交換するという場合には、金属配管でくみ上げずにフレキシブルチューブを使う方が良いです。
逆U型だと基本型で問題としてあげた、空気の問題を解決することができます。
このように逆U形にすると、一般的には水だけがオーバーフローラインに流れていきます。
分液と同じ発想です。
逆U型の頂点には空気が溜まる部分ができます。
オーバーフロー流量にもよりますが、この空気溜まり部が原因でオーバーフローの流量がハンチングを起こしたり、最悪流れないという場合もあります。
ガスを抜くラインを付ける方が無難です。
単に空気だけを心配する場合は、頂点部の配管を上の方に延ばして大気開放すれば良いでしょう。
連続分液で紹介したように、他のガスラインと均圧を取るという方法も考えられます。
流れない!というトラブルがあった場合は、まずはこの空気溜まり部を疑いましょう。
汚れがある液を流している場合は、ラインが詰まってしまうかもしれません。この場合の洗浄は基本型よりも難しくなります。
- 逆U型はオーバーフロー高さを変えることができる
- 空気も遮断できる
- ハンチングを起こす可能性がある
- 詰まっても掃除がしにくい
連結型
最後に連結型です。
逆Uと同じようにオーバーフローの高さを調節する機能を持っています。
基本型と同じく胴板にノズルを付けますが、その高さを変えています。
ノズルの出口は連結させます。出る先が同じですね。
このタイプを好む例として、タンク内の液に不純物がある場合を紹介しましょう。
タンク内に液の比重より大きい不純物が混じっています。
これを運転中は流したくないという場合があります。
不純物が固形分で、払い出しがポンプというケースが多いです。
固形分があるとスラリー状態になってしまうが、ポンプはスラリー対応でないから壊れてしまいます。
だからこそ、運転中は不純物を貯め置くバッファ的な使い方の場合に、連結型は使えます。
- 運転中は上側のバルブを開け、下側のバルブは閉じる
- 運転が終わって清掃するときに、下側のバルブを開けて液を抜く
液抜きを考慮すると、下側のバルブはできるだけ低い位置に付けましょう。
2個の連結型以外にも3個・4個と足すことは、装置のサイズに依りますが可能です。
屋外タンクでもこのケースは見かけます。
参考
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最後に
化学プラントでよく見るオーバーフローのパターンを3つ紹介しました。
基本型・逆U型・連結型です。
どのパターンも使いますので、メリットデメリットの比較ができるようになると良いでしょう。
応用パターンを考える場合にも、この発想を使うとトラブルを回避できるかもしれません。
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