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土建設計

油分離槽やグリストラップの設計をそれっぽく行うコツ

油分離槽 土建設計
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油分離槽は化学プラントなど危険物製造所に必ずついている設備です。

他には飲食店などでグリストラップなどの表現でも、似たような機能を持った設備があります。

これらの設備は標準化されているので、自分で1から設計することはほぼ無いでしょう。

私もそう思っていたのですが、ネット環境が十分に無い中で油分離の仕組みを早急に仕上げないといけない機会があり、基本原理をもとにそれなりの分離槽を作ったことがあります。

分液の原理を使った簡単な設備のはずですが、考えることは結構あります。

失敗しても設置しないよりは効果があるはずなので、ぜひともチャレンジしたいですね。

廃水と廃油の分離

油分離槽は、化学プラントの場合は、排水中への廃油の混入を防ぐ目的で使います。

もともと危険物製造所では油である危険物を使いますが、これを外部に漏らさないことを前提とした設備を作り、その中で運転をします。

油を外部に出すときは、漏洩処置を適切に施した状態でないといけません。

例えばドラム缶やローリーに危険物を詰めて、ようやく危険物製造所の外に出せます。

仮にプラント内で油が漏れて外部に流出すると、近隣地域の人や環境に重大な影響が出る恐れがあります。

一方で、雨はいつ降ってくるか分からないわりに適切に排出しないとプラントが水没しますし、プラント内を掛け洗いなどで洗浄した水もプラント外部に漏れようとします。

これらの排水は工場外に出る前に適切な処置を行いますが、それまでの間に油が混じっていると処理が増えてしまったり、処理ができない可能性もあります。

そこで、プラント外部には油を外に出さないという思想で、油分離槽を付けてガード機能を持たせようとします。

密度差の利用

油分離槽は密度差を使ったシンプルな構造をしています。

油分離槽

油と水が混じった状態の液体が分離槽に流入します。

この時、分離槽内での流速は極端に落ちて、油と水に分離しようとします。

これは、一部のドレッシングでシャカシャカ降って均一になった状態から、しばらく置いているとオイルと水に分離することと同じです。

水と油に分離したとき、水は一般に下の層になります。

2段目の分離槽へ接続するパイプは1段目の下層部から取ると、水だけが2段目に流れていきます。

分離槽が1段だけでもそれなりの効果が出ますが、段数を重ねると分離効率はあがります。

危険物製造所で見られる油分離槽は3~4段が多いでしょう。

流速は落とす

油分離槽は、流速を落とすことが最大の設計要素です。

上面図

流速を落とすには、分離槽の流路面積を上げます。

流路面積は幅×高さで効きます。

槽内への液が入る部分は、液が上から落下してきて、槽内の液を撹拌させる効果があります。

分離槽長手

分離槽の目的は油と水の分離で、密度差と流速が大きな要素になります。

密度差が大きいほど・流速が小さいほど効果があがります。

密度差は対象となる液で決まってしまいますし、流速も装置サイズを上げる限界があります。

そこで流体の流れる長手方向に対して、距離を稼ぐことで分離が進みやすくする工夫をします。

この辺りは、連続分液と全く同じ重力沈降の考え方です。

滞留時間という表現で一般に知られています。

分離槽内で液体ができるだけ滞留するように、液の入口出口の配置を工夫すると効果的です。

槽の高さは高い方が性能に効きます。とはいえ、メンテナンスを考えると自ずと数m程度が限界になるでしょう。

  • 幅と高さで流速を落とす
  • 長さで滞留時間を上げる

槽の入口出口や各段の接続口は、可能な限り大きく取りましょう。

流速を落とす意味もありますが、メンテナンスの目的が強いです。

特に接続口を今回の例のように、取り外しができない形状で作ってしまうと、後で大変です。

フランジ接続など、清掃交換ができるようにしましょう。

その分だけ、分離性能が若干落ちる可能性がありますが、長期使用を優先させる方が良いです。

回収機能

油分離槽では回収機能が必要です。

回収

油をストップさせて、水だけを排出する装置であれば、そのうち油が溜まって機能しなくなります。

油を回収する方法は、人が柄杓やドラムポンプを使ってアナログに行うことが多いです。

分離槽サイズがそれなりの大きさになれば落下のリスクが出てきますので、上部の回収蓋の大きさは十分に小さなものにしましょう。

グレーチングだと落下する恐れがあります。

上部のシール性は一定量確保しておきましょう。

油分離槽は屋外に置くことが多く、雨の影響で分離性能が変わることをできるだけ避けたいからです。

単に鉄板で蓋をするというよりは、ゴムを使ったり形状を工夫して若干でもシール性は上げておきましょう。

分離槽の下部も液抜きを付ける場合があります。

一般的な油分離槽だと地下に置くので液抜きは付けれませんが、地上における場合は液抜きは付けましょう。

この辺りは、危険物タンクと同じ設計の考え方ができます。

液抜きバルブが付けれない場合が多く、清掃を考えた場合に、柄杓などが届く限界として槽高さを2mくらいにしておくと安心です。

回収という意味では、油と水以外の大きなゴミが油分離槽に入らないように、手前にフィルターを付けることは1つの手です。

監視機能

油分離槽では何かしらの監視機能が必要です。

  • 分離槽の液面
  • 分離槽出口のpH
  • 分離槽の油と液の分離状態

pH計を設置することが多いですが、これだけでは不十分です。

液面や分離状態の確認が必要ですが、カメラなどの計器を付けるのは効果で現実的でないことが多いので、人が定期的にパトロールをしてチェックすることになるでしょう。

地上に分離槽が置ける場合には、液面計とか覗き窓とかを付ければ確認しやすくなります。

これも危険物タンクと発想は同じです。

参考

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最後に

油分離槽やグリストラップの設計がそれなりにできるように考え方をまとめました。

密度差を利用した自然分離です。

滞留時間を設定するための槽の大きさと、回収や監視機能を付けることが運用上大事です。

アナログな部分が残りやすいですので、人がカバーしないといけないですね。

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