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TBMとCBM|設備保全のベテランでも悩む問題

TBM?CBM? 保全
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設備保全方法としてTBM/CBM/BMは古典的な手法として広く知れ渡っています。

ところが、TBMとCBMの定義を良く考えずに、何となくTBMとかCBMと言ってしまっている場合が多々あります。

弊部がまさにそれ。

この記事を読むと、TBMとCBMのイメージを深めることができます。

具体例をいくつか取り上げて、TBMなのかCBMなのか考えてみましょう。

個人的な考えなので、正確な定義とは少し違うかも知れません。

社内で保全システムを適切に運用できればいいので、どういう定義であっても整理がしっかりされていればOKと思います(その整理こそが難しいのですが)。

TBMとCBM

TBMとCBMの違いをまずは整理しましょう。

  • TBM定期的に部品を交換
  • CBMは定期的にデータを取りその状態に応じて部品を交換

TBMは時間CBMは状態というワードとリンク付けられます。

これであっさり理解できそうな気がしますが、実務上は困る場面に出会うでしょう。

少し情報を足した定義も載せておきましょう。

TBM

一定の期間絶対に交換修理をすることが求められる機器に対する保全。オーバーホールという言い方もします。運転時の診断はそれなりに行いますが参考情報という位置づけです。

CBM

交換修理の目安は大体決まっていますが、絶対条件ではなく前後の余地があります。運転時の診断はTBMと同じでそれなりに行い、劣化傾向の早い設備と遅い設備の優先度付けをします。

これでもピンと来ないのが普通です。

それでは、具体的な例で紹介しましょう。

TBMは絶対交換とは違う?

まず、TBMは絶対交換を意味するものとは違う、というのが私の考え方です。

開放点検の場合、単に中を開けて綺麗だからそのまま元に戻したり、ちょっと清掃しただけで部品を交換せずに元に戻す場合があります。

これはTBMでしょうか?CBMでしょうか?

私はTBMと考えています。

理由は定期的に点検をしたからです。

点検をしたからと言って、交換が必須と判断しない場合は多々あります。

清掃をしているくらいだから、新品100%程ではないですが機能も回復していますしね。

一方、CBMと考える人がいます。

定期的に部品を交換して状態をリセットをするから、メンテナンスコストは上がっても故障のリスクは下がるはずだ、という思想がTBMです(いつも故障のリスクが下がるわけではありませんが)。

予備品も準備せずに単に開けて点検しただけなら、状態を見ただけでCBMではないか。

こういう考え方ですね。

例えばカーボン系の熱交換器で、数年に1回の頻度で定期的に開放点検していて、ある年の点検でチューブが破損していたとしましょう(運転中に気が付くべきことですけどね)。

そこでチューブ交換をせずにプラグで閉鎖するでしょう。

その状態で運転を何年も続ける場合もあります。

これを、CBMと考えるのはやや無理があります。

CBMとしては点検周期が長すぎるし、開放しない運転状態で状態監視をするのがCBMだからです。

TBMでもCBMでも一定のタイミングで点検はされます。

TBMは時間CBMは状態という理解よりは、運転を止めるか止めないかという指標の方が整理しやすいいと私は思います。

点検交換時期
TBM定期的に運転を止めて行う
(清掃補修も行う)
予め決める
CBM運転中に定期的に行う検査結果に応じて決める

本当の意味でのTBMとCBMは以下のような表現になるでしょう。

点検交換時期
TBM基本的にしない予め決める
CBM定期的に行う
(運転中なのか停止するのか問わない)
検査結果に応じて決める

日本のプラントでTBMを真面目に実践できる設備は非常に少ないと思います。メンテナンスにお金を掛けないので、問題が起きても少し我慢して予算が確保できてから更新、と先延ばしにされる設備だらけです。

本来の定義としてのTBMとして扱いたい設備が、なし崩し的にCBMになってしまうケースは非常に多いでしょう。

プラント内でTBMがゼロというのも変なので、定義を無理矢理変えてTBMに当てはめようと、個人的に解釈を変えているだけなのかもしれません。

設備と部品は違う

設備と部品とで、TBMやCBMの議論が分かれることがあります。

設備一式としてはCBMだが、部品がTBMという場合です。

プラントの保全のように広い目線で考えるときは、個々の設備に対してTBMなのかCBMなのかという議論がでますが、部品に対する議論はでません。

保全業務をしている中では、設備一式を見るよりも部品を見ることが多く、それぞれの部品に対してTBMやCBMの議論になります。

この辺りの仕訳がしっかりできないことが、TBM/CBMの理解を難しくしています。

SDMでの開放点検はTBM

SDMで設備を開放して点検する場合は、TBMと呼びます。

これはTBMは時間CBMは状態のイメージそのものでしょう。

そもそも化学プラントの場合、生産計画の都合で運転を止めるタイミングが極端に限られます。

そのタイミングを狙って設備を開けて点検するのだから時間を決めたTBMです。

メーカーSVによる現地オーバーホールもTBMですね。

この辺りは違和感がないのは、点検した後の交換や補修というところに目が行きにくいからでしょう。

振動測定はCBM

ポンプなどの運転中の振動診断はCBMそのものです。

運転状態を監視していますね。

調子が悪くなったらすぐに運転を止めて交換したり、次の定期プラント停止のタイミングまで我慢してもらったりと、パターンが出てきます。

すぐに運転を止めたらCBMでしょうが、次の定期プラント停止まで待って定期的な頻度で交換をしてしまったらTBMでは?と考える人が居ます。

これを言い始めると、機器ごとの保全管理ができなくなります。

CBMは状態監視をして適切な交換タイミングを見極めることが大事で、結果としての交換タイミングが定期かどうかとは関係ありません。

TBMは時間CBMは状態にとらわれると勘違いしそうになりますね。

軸封・軸受交換はCBM

ポンプの軸封や軸受の交換はCBMです。

設備の開放点検をTBMと関連付けてしまうと、罠にハマります。

軸封や軸受を開放するということは、基本的には再利用はしない方が良いです。

多少の補修を加えて再利用する場合はありますが、時間が掛かるので予備部品と交換するでしょう。

開放した瞬間に、何かしらの保全をしないといけなくなるので、清掃程度で済む可能性のある設備に対するTBMとは違う、と考えましょう。

そもそもポンプの軸封や軸受は、外観点検や振動診断である程度の傾向が掴めた上で、交換前提で開放します。

熱交換機などは、内部の状態が分からないけど開放点検して、そこで補修等を考えることになるので、状況が違います。

板厚測定はCBM

板厚測定をTBMと考える人が居ますが、これはCBMだと思います。

板厚は運転中でも測定できるからです。

ライニング機器の厚み測定は運転を止めないといけないので、開放点検をして測定をするからTBMと考える人も居るでしょう。

CBMだと予備部品を準備して交換前提で点検するのだから、板厚測定はTBMに入れるべきではという意見もあります。

板厚測定だけなら状態を監視するという意味でCBMですが、設備の中に入る前に清掃したり内部状況を点検したりするので、中に入って点検するという意味ではTBMです。

中に入って点検する機器をあらかじめ決めていて、定期的に中の状況を確認するならTBMです。

実際にそれをうまく運用することは難しく、運転後に中を確認して怪しければ専門的な板厚検査をするという感じになるでしょう。

だからTBM敵ではなくCBMだと捕らえるのが私の考えです。

もう何を言っているのか、良く分からなくなってきますね。

実際に私も悩みます。

ベルト交換はTBM

ベルト交換はTBMです。

ベルトの診断は運転中に張力の測定をすることになるので、CBM的な管理になるでしょう。

でも、この作業自体がとても危ないです。

費用も高くない物が多いので、定期的に交換するTBMの方が良いでしょう。

参考

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最後に

保全方式のTBMとCBMを具体例に当てはめて考えました。

TBMは時間・CBMは状態という定義に当てはめようとしても、現実にはTBMでの運用はすごく難しく、CBM的な管理に偏ります。

内部清掃のようにプラントを止めて状態を監視しつつ保全活動も行ってしまっている機器は、TBMとして私は考えています。

設備全体と部品とでTBMとCBMの認識が違ったり、検査をTBMと考えたりと、人によっても定義が違ったりする恐れがあります。

社内でしっかり運用できれば良いと思うので、メンバー同士で議論してみると新たな発見があるかもしれませんよ。

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