化学プラントの反応物の品質を確認するためのサンプリング(sampling line)について解説します。
製造業は各工程で品質検査を行ってパスしたものだけが次工程に進むという工程の作りこみを行います。
抜き取り検査を行うことになりますが、反応液のうちの一部を配管や装置から抜き取る作業が必要です。
それをどこからどうやって行うか、ということが安全・衛生・品質などに影響を与えます。
バッチ系化学プラントでサンプリングを行う場所の代表例は以下のとおりです。
反応器周りのどこからどうやってサンプリングするかということが課題となります。
それぞれの用途や特徴を解説しましょう。
ポンプ吸込口
最初はポンプ吸込み口です。
このケースはあまり現場では多くはないでしょう。
というのも、液たまりが起こりやすいからです。
液たまりが起きやすいからこそ、均質な品質の液をサンプリングするのが難しいです。
サンプリング前に一定量を廃棄したうえで、必要量を抜き取る必要があります。
健康診断の尿検査と同じ考えですが、異物の溜まる量や質が多いのが吸込み口側のデメリットです。
逆にメリットは圧力が掛かりにくいです。
これは作業者への被液などの安全衛生面では大きなメリット。
安全衛生を最優先して吸込み口からサンプルを取るというのは1つの考えです。
ポンプ吐出口
続いてポンプ吐出口です。
これが最も多いでしょう。
ポンプ吐出口にあるポンプエアー抜き用のバルブからサンプリングを取るという方法です。
ポンプを循環させて一定時間液を動かした状態から、液抜きバルブを開けてサンプルを取ります。
このメリットは現地作業のしやすさ。
ポンプの起動停止や循環ラインの操作などをしながらサンプリングができるので、作業者にとって安心感があります。
液たまりがあるので溜まった液は先に排出しなければいけませんが、吸込み口の場合よりは排出液量が少なくなります。
原単位的にもメリットがあるという意味ですね。
デメリットは圧力が高いこと。
ポンプ圧力が直接掛かる場所ので、最も高圧の場所です。
バルブを勢いよく開けると、勢いよく液が出てきて被液をする恐れがあります。
液の比重が高いほど圧力が高くなるので危険です。
循環口
循環口は循環ラインで高所に付ける場合を指します。
反応槽は上下階に跨った形で配置されるので、反応槽の循環ラインの上階でサンプルを取る方法です。
メリットは圧力が高くない、均質な液が採れる、暴露を防げるなどがあります。
圧力が高くないというのはポンプ吐出口に比べて、ヘッドが出ないから。
均質な液が採れるのは循環ラインそのものにサンプリング口が付いているから。液たまり量も少ないです。
暴露を防げるとは、専用のサンプリングバルブを付けやすいからです。
バルブ部分と受器部分がネジやOリングなどで接続できるようになっていて、外界と遮断できます。
外気と遮断することで、水や空気によるサンプリング液の変質を防ぐことが可能です。
デメリットは材質の制限・安全性・装置の制約です。
材質の制限とは例えばステンレス系でしか準備できないサンプリング装置を使いたいが、配管ラインは耐酸性が求められるという場合です。
ステンレスの装置が腐食してしまうなら、便利でも使えませんね。
自ずと安全性も疑わしいものがあります。
気が付いたらサンプリング容器から液が溢れていたってことも。
サンプリング装置は特殊な装置が必要なので、高価だったりメンテナンスが難しかったりします。
バッフル
最後にバッフルです。
反応槽についている邪魔板のこと。
専用のサンプリングバッフルという形で販売されています。
メリットは自動化しやすいこと、圧力が低いこと、外界と遮断できること、均質な液が採れること、洗浄がしやすいこと。
作業者の作業負荷だけでなく安全衛生や品質も考えれる点でメリットは大きいです。
デメリットは詰まると終わり、高価、減圧操作が必要ということ。
詰まっても逆洗をして貫通できればいいのですが、逆洗でも取れない場合は非常に大変な労力を払うことになります。
装置を取り外して洗浄することになるでしょう。
サンプリングバッフル内を通る液量を少なくするために、液の通り道の口径を小さくすればするほど閉塞の問題が起きます。
高価とは言葉どおり。
設備に固有のサンプリング装置なので、メーカーの標準に合わせないといけないでしょう。
もしくは疑似的なバッフルを製作することになり、ノズルの制約を受けてしまいます。
減圧操作をすると作業者への被液などの安全性は確保される方向ですが、サンプリングのためのバルブ操作が増えたり、系内が減圧下になることで気化したりする可能性があります。
本当に危ない液や自動化を進めたい場合など、限定して選択することになるでしょう。
参考
最後に
バッチ系化学プラントでのサンプリング場所とその方法について解説しました。
ポンプ吐出口が最も多く、次いで循環口、限定的にバッフルです。
ポンプ吸込口はレアケースでしょう。
安全・衛生・品質の面でメリットデメリットがありますので、使い分けを意識しましょう。
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