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化学工学

熱交換器の伝熱面積だけを変えるときの計算方法

微小区間計算 化学工学
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熱交換器の計算に関する記事です。

化学工場のプロセス計算を、専門ソフトウェアは使わずとも簡易的に少し細かく計算したいというニーズは、機電系エンジニアリングの段階で少しあります。

昔は、プロセスエンジニアリングでも多用していた方法ですが、今はかなり少なくなっているでしょう。

機電系の設計の場合は頻度が少ないということもありますが、時間がなかったりプロセスエンジニアリングでほぼカバーされていたりします。

不要のスキルと言えなくもないですが、比較的簡単にそれっぽい計算ができるので、考え方は知っておいた方が良いでしょう。

伝面計算を例に解説します。

先にこちらの記事を読んでください。

微小区間に区切る例

計算に使う例題を紹介します。

冷却モデル

熱交換器の計算で、以下の条件です。

プロセス液:入口温度40℃、出口温度30℃、流量×比熱2,000kcal/h/K

冷却液:入口温度10℃、流量×比熱2,000kcal/h/K

U:100kcal/(h・m2・k) 熱交全域で一定

向流

Q=mcΔtの計算式から交換熱量20,000kcal/hが決まり、Q=UAΔtの計算式からA=10m2も決まります。

この条件で、あえて伝面を微小区間に区切った計算を行うと、以下のようになります。

googleスプレッドシートを使っています。

10m2熱交換器

上半分は条件を入力する欄として使用しています。

下半分が微小区間の計算です。

プロセス液入口側を伝面0m2、冷却水入口側を伝面10m2として、1m2刻みの計算を行います。

A=0m2地点(プロセス液入口)ではプロセス液は40℃、冷却液は20℃なので、U=100kcal/(h・m2・k)とA=1m2から、微小区間1m2での交換熱量が2,000kcal/hと計算できます。

この熱量を受けて微小区間の出口側では、プロセス液は温度が下がり、冷却液は温度が上がります。

2,000kcal/hの熱を流量×比熱2,000kcal/h/Kの液体がやり取りするのだから、温度差は

2,000/2,000=1℃

となります。

A=1m2入口地点では、プロセス液は39℃、冷却液は19℃となります。

この計算を繰り返すだけです。

数式で一行目と二行目だけを入力してしまったら、三行目以降はコピーペーストが可能です。

A=10m2地点まで(厳密にはA=9m2の出口まで)計算すれば、おしまいです。

伝面を変えた場合

上のシートを使えばいろいろな検討が可能です。

伝面を変えた場合の計算を最初に見ましょう。

伝面を下げたとき

伝面を1m2下げて、9m2にしたときの計算を見てみましょう。

9m2熱交換器

伝面9m2にしても、プロセス液入口40℃と、冷却液入口10℃は変えません。

ここで、A=0m2の計算をするときに困ります。

というのも冷却液温度が決まっていないから。

交換熱量が決まっていない状態で、プロセス液出口温度も、冷却液出口温度も決まりません。

ただしUは固定です。

ここでは、ゴールシークを使って計算します。

冷却液出口温度を変えていき、冷却液入口温度が10℃なるような温度を探していきます。

得られた結果は、冷却液出口が19.3℃、プロセス液温度は30.7℃。

交換熱量が18,621kcal/hと下がっています(9.3%ダウン)。

10m2と9m2で10%違うから、結果も10%程度違うはずですが微妙に差がありますね。

伝面を上げたとき

伝面を11m2に上げたときの結果です。

11m2熱交換器

こちらも、結果が10%上がるというわけではありませんね。

流量を変えたとき

流量を変えたときを1例見てみましょう。

流量

冷却水の流量を半分にしてみました。

当然ですが、冷却液出口の温度がぐっとあがります。

温度差が少なるなるので、交換熱量もかなり落ちます。

Q=mCTの式だけを見ていると、流量が下がっても交換熱量が同じで温度差だけが付くと思いがちですが、交換熱量はちゃんと落ちます。

ポンプ動力を最低限にしようと流量を絞った熱交の運転をしていると、交換熱量が下がって逆に不経済だった。

ということも起こりえますので、ポンプ能力は余裕を見ておきましょう。

並流にしたとき

向流ではなく、並流にした場合を見てみましょう。

並流

並流なので、A=0m2地点の、冷却液温度が10℃になります。

冷却液側の計算式の±を変えたら、後はコピーするだけです。

結果は、向流よりはやや悪い結果になりました。

交換熱量は19,540kcal/hです。

入口付近での交換熱量が多く、出口側では温度差が低いので交換熱量がかなり低いことが分かります。

交換熱量が少し低かったり、温度差が不均一だったりすることが、並流の特徴です。

これを嫌がって向流にすることが多いですね。

Uを変えたとき

総括伝熱係数Uを少し変えてみましょう。

熱交換器後半のUを半分の50kcal/(h・m2・k) にします。

これは、相変化などが起きることを想定しています。

向流50

Uが変わった分だけ、当然ですが交換熱量は落ちます。

その分、冷却液の出口温度が上がりにくくなるので、前半部分の交換熱量は上がります。

こういう場合は、並流の方が熱交換を効果的に使えそうな気がします。

並流50

この例ではまだ向流の方がメリットがありそうな結果ですが、向流と並流の差がなくなってきていますね。

参考

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最後に

微小区間に区切った計算の例として伝面計算を使いました。

計算が一手間増えますが、いろいろなパラメータを変更してその結果が見れるので、検討の自由度は広がるでしょう。

設計をしている感じが出てきます。

いざという時に使えるように、マスターしておきたいですね。

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