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保全

油圧装置が化学プラントで重宝される理由

油圧装置 保全
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化学プラントでは油圧装置(hydraulic system)を使う場面があります。

需要は明確に右肩下がりですが、一部の装置で残り続けています。

油圧装置が別の機構に完全に置き換わるということはありませんので、古い技術である油圧を勉強しなくて良いというわけでもありません。

基本的な知識をまとめてみました。

高圧設備

バッチ系化学プラントでは、油圧機器は高圧設備に限定されます。

全体の5%もないくらいの少数派です。

高圧・加圧・高速などの特殊な用語が入った設備に対しては、もしや油圧が付いているのでは?と疑っても良いでしょう。

パスカルの原理を利用して高圧を容易に得られる油圧には、他の設備にはないオリジナリティがあります。

  • 高圧のプロセス液をシールするための駆動力として油圧を使う
  • 大型の設備を上下運動させるために油圧を使う。

化学装置でよくある回転機器を高圧で扱う場合に、ダブルメカニカルシールの緩衝液として油圧を使う場合があります。

ろ過機などの大型設備を上下運動させて、開閉するためにも使います。

この場合はろ布のセッティングやケーキの排出などの作業がありますね。

油圧(hydraulic system)とインバータ

高圧を得られる油圧ですが、そのニーズはどんどん低下しています。

良いインバータ(VVVF)が開発されて行っているからです。

一般的な油圧とインバータの違いについてまとめましょう。

油圧(hydraulic system)の特徴

油圧はインバータに対して以下の特徴があります。

  • 長寿命
  • 劣化傾向が把握しやすい
  • 温度変化に弱い
  • 漏れる

油圧は長寿命という最大のメリットがあります。

というのもプロセス液が油であり、潤滑油そのものの役目も果たせるからです。

腐食も感が無くてよく金属設備にやさしい潤滑油を回すだけ。

動く設備の中では最も低負荷でしょう。

騒音・振動が発生しやすい油圧機器なので劣化していけば五感で察することも可能です。

一方、油の温度が粘度と直結するので油の温度が上がることで油圧圧力が下がるなどのデメリットもあります。

厳密な運転調整をしたいときにはちょっと問題ですね。

油は漏れやすいというデメリットもあり、工場内が汚れたり転倒したりというリスクもあります。

化学プラントが3Kというときの「汚い」は油のイメージかもしれませんね。

インバータの特徴

インバータの油圧に対する特徴を紹介します。

  • DCSで調整できる
  • いつ壊れるか分からない

インバータは電気信号を使えるのでDCSで制御しやすい特徴があります。

化学プラントではこれは強力なメリット。

回転数をDCSで自動調整できるということは、油圧のように現場で人がバルブを調整する手間がいりません。

人手不足の日本では重宝しますね。

一方で、インバータはいつ壊れるか分かりにくいというデメリットがあります。

定期的に更新しないといけません。

コスト的には不利ですね。

油潤滑系統

油圧が主流だった昔は下図のような油圧系統ができていました。

潤滑油がユーティリティという位置づけですね。

油圧系統(hydraulic system)

これを見ると油圧は以下のような用途に使っていることが分かるでしょう。

  • 装置の駆動力
  • 軸受

軸受に潤滑油を定期的に送るというのは原理的には分かりやすいですね。

でも今では軸受のオイルボックスに潤滑油を貯めれます。

こんなユーティリティ化する必要はありません。

装置の駆動力として特定の装置にだけ油圧があれば十分です。

油圧のユーティリティシステム自身は今でも現役でありそうです。

油圧ユニット(hydraulic system)

油圧に対しては油圧ユニットという表現を使います。

油圧ユニットとは油圧ポンプ・油圧タンク・電磁弁などからなる設備のことです。

高圧の油を生成するための装置をユニット化したものです。

基本的には1つの設備に対して1つの油圧ユニットを付けます。1:1の関係。

変にユーティリティ化すると制御がややこしくなります。

この油圧ユニットですが製造メーカーはどんどん減少していっています。

少なくとも私の中ではレトロな技術の位置づけ。

潤滑油管理員

昔は潤滑油管理員という仕事があったようです。

  • 潤滑油の種類が多く
  • 定期的に入れ替えが必要で
  • 在庫管理も必要

メンテナンスマンの仕事としてそれなりの価値があったようです。

今では特定業務のように片手間で行う程度の仕事量しかありません。

潤滑油の数が少ない、潤滑油の劣化がしにくくなった、というような技術的な進歩があったからでしょう。

世界では油圧が主流の地域もある

日本では油圧は下火になっていますが、世間一般にはまだまだ現役の地域もあります。

日本人が海外で設備を導入するときには是非とも注意したいところ。

日本では油圧は使っていないから、海外でも油圧は使わない方が安心。

こんな発想のエンジニアっていますよ。無意識でしょうけど。

その地域で手に入る物を使いこなす方が、安定的な運転が可能ですよ。

参考

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最後に

化学プラントの機電系エンジニアが知っておくべき油圧について解説しました。

油圧は長寿命で劣化傾向も判断しやすいですがニーズが少なく工場を汚す原因にもなります。

インバータはDCSを使った自動制御ができますが、いつ壊れるか分かりにくいです。

特徴を理解して使いこなしましょう。

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