化学工場の5大”用役”(“ユーティリティ”)の概要と使い先を解説 エンジニアリングの基幹設計

用役ユーティリティプロジェクト

化学工場の”用役“(“ユーティリティ”)について解説します。

用役はプラント運転では目立ちませんが、非常に需要です。

これは一般家庭の生活でも水や電気がなければ、一瞬で困ってその時になって重要性に気が付くのと似たような話です。

プラントレイアウトなどプラント設計の本質にかかわるのがユーティリティです。

化学工場の運転者やエンジニアが知っておいた方が良い範囲でまとめてみました。

水の循環のイラスト

水は化学工場では大量に扱います。

その種類もかなりのものです。

工業用水

工業用水は工場全般で使ういわゆる水のことです。

近くの河川から水を引っ張ってきて、工場内のプールに貯めただけのもの。

大量に使えるだけの水を蓄えておいて、様々な用途に使います。

  • 反応装置の緊急冷却
  • 多用途への水の派生元
  • 設備外の洗浄用
  • 排ガス処理用
  • 希釈用

日本では他国よりも大量に水を使用できる環境にあるので、リサイクル率なんて興味がない工場もあるでしょう。

工業用水だけで足りない場合には海水を使わざるを得ないですが、この辺は工場によって本当にまちまち。

海水は腐食の問題があってなるべく使いたくないですけど、やむを得ないでしょう。

工業用水は河川水などの一般の水そのものなので、とても汚いです。

SGPなどの鉄の配管でラインを引きますが、泥と錆だらけの水のイメージですね。

工業用水そのものも利用価値は多いのですが、そこから派生する水の種類も多いです。

消火用水

消火用水は言葉通り消火設備に供給するための水です。

工業用水と同じように大量に使います。

工業用水自体にも設備の緊急冷却の目的がありますが、消火用水は冷却消火用に特化したものと考えればいいでしょう。

設備構成的には工業用水から消火設備を加えただけで、水質という意味では変わりありません。

特に処置はしないです。

法的には必要水量(使用量×時間)をカバーできるプールがあることが求められるので、工業用水とセットで管理している工場もあるでしょう。

冷水

冷水は冷凍機で冷却した水です。

チラー水という表現もするでしょう。

7℃くらいの水です。

  • 反応装置の冷却
  • 熱交換器など蒸留のコンデンサー用冷却

低温の水で反応温度を抑制するために使います。

工業用水をゴミ取りろ過して、冷凍機で冷却します。

冷水は温度が低いので、溶存酸素が多めです。

ゴミ取りろ過だけしてSS400などの炭素鋼の材質で装置をくみ上げていくと、結局腐食していきます。

材質のグレードアップと薬剤による水質管理が大事になります。

冷水塔循環水

冷水塔循環水は言葉通り冷水塔で循環させた水です。

工業用水を垂れ流して使うと排水量がとても多くなるので、循環させて再利用します。

夏場でも32~37℃くらいの水温です。

  • 工業用水の代替
  • 冷凍機の冷却水
  • コンプレッサーの冷却水

冷水と同じく水質管理が必要となります。

冷水塔という設備を使うからですね。

街中にもありふれている冷水塔ですが、設備である以上はそれなりの管理が必要です。

温水

温水は60℃程度以上の水です。

  • 反応装置の温度管理
  • 配管の温度調整

スチームと水を組み合わせて作ることが多いでしょう。

反応槽での温度管理用だけでなく、配管の温度調整用(トレース)にも使います。

ろ過水

ろ過水は工業用水を適当にフィルターでろ過した水です。

工業用水には泥や錆がいっぱいありますが、これを取り除いた水です。

目に見える異物を取り除いたというだけで、溶解物まで除去したものではありません。

例えばSGPの配管にある水だと鉄さびが含まれます。

鉄自体が反応に悪影響を与えたり、配管が詰まるから困ったりする場合に、ろ過水を使います。

フィルターやフィルター出口の配管をSUS304などの錆びない材質にします。

上水

上水は水道水と同じ扱いです。

水道水を工場街から引き込んでくる工場もあれば、自社で水道水レベルまで処理する工場もあります。

処理としてはろ過・消毒などの処理をします。

上水として使うまでにいくつかの処理をしているので、その途中段階の水を上水以外の用途に使うことも可能です。

  • 飲み水
  • 洗顔水
  • 仕込み水
  • ボイラー水

ボイラー水はその典型例でしょう。

水質管理された水でなければ、ボイラーで異常が発生します。

仕込水はろ過水よりも強力に処理したものと考えていいです。

医薬系の工場で使うでしょう。

蒸気

蒸気(スチーム)は加熱源としてとても貴重です。

水は冷却源ですが、蒸気は加熱源です。

水と蒸気を含めて水系ユーティリティとしてまとめる考え方もあるでしょう。

  • 反応装置の加熱
  • 配管の温度調整
  • 設備洗浄
  • 真空源

蒸気はボイラーを使って生成するか、工場外から引き込んできます。

飽和蒸気として数段階の圧力に分けて使用します。高圧・中圧・低圧などのようにグレード管理もします。

反応装置にスチームを使う場合、反応装置が圧力容器に該当する可能性があります。

設備洗浄にも大活躍します。

真空源としてのスチームエゼクターとしても使用します。

電気

電気は設備回りなど非常に多くの用途で使います。

水と同じで基本的なユーティリティの扱いです。

  • 化学装置の動力設備
  • 照明
  • オフィス機器・家電製品用
  • 各種電気製品
  • 計装信号用

化学工場的には電気でモノを動かして、電気で監視制御するために、電気がないと一発アウトです。

停電になったら即工場停止です。

そのために緊急処置訓練も行います。

非常用発電機でバックアップ体制を取ったりもします。

空気

空気は計装機器用です。

空気圧自動弁などの制御を行います。

電気と同じで空気も止まると、工場は即停止です。

電気ほどは目立ちませんが、重要なユーティリティですね。

窒素

窒素もユーティリティの1つとしてカウントします。

化学工場では窒素はとても大事です。

主に有機溶媒による爆発性雰囲気を形成させないために使います。

反応槽内に投入したり、圧力調整用に使ったり、シール周りに流入させたり、配管ブロー用に使ったり・・・

工場での1操作として窒素を使います。

その意味でも立派なユーティリティです。

緊急冷却用に使う場合もあります。

最後に

化学工場の5大用役(ユーティリティ)について解説しました。

水・蒸気・電気・空気・窒素の5つはとても重要です。

これらの供給が止まると工場は即停止します。

プラントレイアウトなど本質にも関わる部分です。

増改築時には目立たなくても非常に重要な要素です。

この記事が皆さんのお役に立てれば嬉しいです。

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