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化学機械

キャンドポンプ vs マグネットポンプ|シールレスポンプの比較

キャンドマグネット 化学機械
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シールレスポンプ(sealless pump)であるキャンドポンプマグネットポンプは、バッチ系化学プラントではとてもよく使います。

プロセスポンプと言えばシールレスポンプ。

シールレスポンプと言えば、キャンドポンプとマグネットポンプ。

どちらを使うか悩む人も多いでしょう。

極端にマグネットポンプだけを使いこなすプラントもあります。

そんなキャンドポンプとマグネットポンプ使い分けについてまとめました。

プロセスポンプはキャンドポンプとマグネットポンプで決まり!

概要

キャンドポンプとマグネットポンプは一般に材質で使い分けるでしょう。

  • キャンドポンプ   ステンレス等の汎用プロセスに用います。
  • マグネットポンプ  PTFE等の樹脂製で耐酸系のプロセス

機電系エンジニア以外の人にとってはこれだけで十分です。

機電系エンジニアとしてはもっと詳細に知っておきたいですね。

原理

まずはキャンドポンプの原理を紹介しましょう。

キャンドポンプの主要構造

キャンドポンプの主要構造を紹介します。

下の図を見てください。

キャンドポンプの構造

最低限、3つの部品だけを抑えていればOKです。

  • コイル
  • インペラ
  • ベアリング

それぞれの役割を見ていきましょう。

コイル

コイルはインペラ・シャフトにエネルギーを伝えるためにあります。

下の図を見てください。

コイルの動き

これはコイルのエネルギーをシャフトに伝えるイメージです。

モーターのコイルと全く同じです。

  1. コイルに電流が流れる
  2. コイルで磁界が変化する
  3. 磁界の変化を受けたシャフトに電流が流れる
  4. 磁界中に電流が流れることで、シャフトが力を受ける
  5. シャフトが回りだす。

モーターについて詳しく知りたい方は、以下の記事をご覧ください。

このため、キャンドポンプではコイルは極めて重要な部品です。

インペラ

インペラはポンプがポンプたる所以の場所です。

インペラが回転することで、ポンプにエネルギーが伝わります。

インペラが回転

ポンプである以上は、インペラは当然重要です。

インペラの形状によって、クローズドやセミオープンなどのいくつかのパターンは存在します。

ベアリング

ベアリングはシールレスポンプでは特に重要です。

渦巻ポンプではあまり気にならない部品ですが、キャンドポンプでは重要です。

というのも、ベアリングがプロセス液に接触するからです。

下の図を見てください。

ベアリング

シールレスポンプは文字通り「軸封が無い」ため、ベアリングはプロセス液にせ食します。

逆に「軸封がある」渦巻ポンプは、モーターやベアリングを外出しにすることができます。

昔は、プロセス液に使えるベアリングが無かったために、外出しをした渦巻ポンプがメジャーだったのだと思います。

キャンドポンプに使うベアリングはセラミックスが多いです。

渦巻ポンプで使う普通のベアリングはただの金属。一般的な機械部品に使うベアリングそのもの。

駆動方式

キャンドポンプマグネットポンプの駆動方式は明確に違います。

  • キャンドポンプ  コイルの磁界変化でシャフトを回す
  • マグネットポンプ 回転する磁石でシャフトを回す

磁石の部分が物理的に動くか動かないか、これが決定的な違いです。

モーターの原理

先に、モーターの原理を超簡単に説明します。

モーターの中でも三相かご型誘導電動機について記載します。

  1. コイルに電気が流れる
  2. コイルの周囲の磁界が変化する
  3. 磁界の変化を受けたシャフトが動き出す

物理的には電磁誘導という原理を使っています。

電気を通すと磁界が変わり、磁界が変わると電気が流れるという電磁気的な仕組みです。

「物理的に動かない」電気コイルと「物理的に動く」可動部を空間的に分離できます。

そうすることで、電気の力を機械の力に変換できるという装置です。

キャンドポンプはモーターそのもの

キャンドポンプモーターの原理そのものを使っています。

コイルとシャフトの間に隔壁があるため、漏れる恐れがありません。

隔壁によって、「メカニカルシールが不要」という最大のメリットが生まれます。

マグネットポンプは磁石を回す

マグネットポンプはモーターの原理に1クッション入ります。

  1. コイルに電気が流れる
  2. コイルの周囲の磁界が変化する
  3. 磁界の変化を受けたシャフトが動き出す
  4. シャフトに繋がった磁石が回る
  5. 磁石の周りの磁界が変化する
  6. インペラ側のシャフトについた磁石が回る

キャンドポンプと同じで隔壁があるために、漏れることはありません。

磁石を回す分だけ、モーターが2段になっていると考えても良いでしょう。

材質

キャンドポンプマグネットポンプの仕様上の決定的な違いは材質です。

キャンドポンプは金属系

キャンドポンプは接液部材質が金属系です。特に、本体材質をSUS304にすることが多いです。

というのも、鉄だと錆が発生するからです。

発生した錆が、インペラとケーシングの間に詰まっていくと、

キャンの電磁力をインペラ側に伝えるときの障害になるからです。

キャンドポンプを使う場合、プロセス内が綺麗な状態を維持したい訳です。

バッチ系化学プラントではどんなプロセス液を扱うか固定されないため、汎用性を持たせます。

SUS304で汎用性があるかというと、微妙な問題ですが・・・。

もちろんSUS316Lやハステロイ系も使用可能ですが、当然ながら高価になります。

マグネットポンプは樹脂系

マグネットポンプは接液部材質が樹脂系です。PTFEライニングが可能です。

安価で耐食性が高いポンプが実現可能。

これはキャンドポンプにはないメリットです。

耐熱性や伝導性を犠牲にしても、耐食性を上げるという発想です。

シール

キャンドポンプとマグネットポンプではシール性が若干違います。

キャンドポンプはガスケット

キャンドポンプのシールは基本的にはガスケットです。

ガスケットの特徴はシール性が高い・安価の2つ。

ユーザーとしては何事もなければガスケットタイプを選びたいものです。

材質的にはフッ素樹脂のガスケットであれば、ほぼノーケア。

ガスケットはOリングよりもシール面積が大きいから、寿命も長い

ガスケットは正義ですよ。

ガスケットはとにかく便利です

マグネットポンプはOリング

マグネットポンプのシールはOリングタイプの場合があります。

もちろんガスケットタイプも存在しますが、気を許してOリングタイプを買ってしまうと結構厄介。

Oリングは高価・長納期・寿命が短いと残念ながらあまりいいことはありません。

化学プラントの設備で使用するOリングはフッ素樹脂系の材質を使います。

マグネットポンプというフッ素樹脂系の耐食性が求められる機器であれば、

Oリングも相当の材質が求められます。

FKMで対応できるケースは徐々に少なくなっています。

ところがFFKMでは非常に高いです。

マグネットポンプという安さを求めた設備のわりに、Oリングが高いという皮肉。

マグネットポンプでもガスケットが好まれる理由はここにあります。

この辺を気が付いているメーカーとそうではないメーカーで非常に分かれます。

Oリングは癖が強いです

その他の違い

キャンドポンプマグネットポンプは駆動方式に違いがあり、決定的には材質が違います。

その他の違いも微妙にありますので、紹介しましょう。

キャンドポンプはバリエーションが広い

キャンドポンプはバリエーションが広いのが特徴です。

材質だけでなく竪型横型などの型式やジャケット付き・自吸式など渦巻ポンプに似た応用性があります。

一方のマグネットポンプは横型にほぼ限定されます。

マグネットポンプは部品が必要

マグネットポンプはいくつかの部品の組み合わせで成立します。

部品を確保していれば故障にも対応しやすい。

こう書くとメリットに見えますが、こう書くとデメリットに見えませんか。

部品を準備しておかないといけない。

マグネットポンプでしか対応できない腐食性の高い液体なら、部品は重宝します。

でもキャンドポンプでもマグネットポンプでも使える系なら、部品はメリットになりえるでしょうか?

部品をあまり考えずにノーケアで使えるキャンドポンプの方が良いのでは?

こう考えるユーザーが居てもおかしくありません。

だいたい、部品のケアって面倒ですからね。保全担当としてもそう思います。

ポンプ入熱量

マグネットポンプの方がキャンドポンプよりも、ポンプ入熱量が低いです。

ポンプ入熱量の低さは、プロセス安全性に関係します。

ポンプ入熱量が低い方が、内容物が温まりにくく安心。

キャンドポンプもマグネットポンプも電流で磁力を発生させる点までは同じです。

そこまでで発生するエネルギーロスについてほぼ等しいと考えましょう。

問題は発生した磁力をシャフトに伝えるまでの話

マグネットポンプは外気で冷える

マグネットポンプは外気で冷やされる方向です。

というよりキャンドポンプの逆と考えた方が分かりやすいでしょう。

プロセス液に熱が伝わりにくいという解釈も可能です。

キャンドポンプは内溶液で冷える

キャンドポンプは内容物で冷やされます。

キャンドポンプの熱はプロセス液に伝達します。

これは、キャンドポンプはモーターコイルの外側大気と接触、内側内容液と接触してるから。

液体の方が気体よりも密度が高いので、温度を伝えやすいですよね。

この結果、キャンドポンプに伝わる熱量の方がマグネットポンプよりも多く、プロセス液を温める方向になります

参考

ポンプは基本的な設備ですが、だからこそ選定が難しいです。

ポンプの選定が十分にできるようになるには、5年以上かかると思ってじっくり取り組むと良いでしょう。

関連記事

キャンドポンプとマグネットポンプについて詳しく知りたい方は、以下の記事をご覧ください。

最後に

キャンドポンプとマグネットポンプの違いをバッチ系化学プラント目線で解説しました。

材質・駆動方式の違いが大きいですが、シール性や入熱量なども微妙に違います。

汎用性が高いのはどちらかというとマグネットポンプでしょう。

違いが分かるエンジニアになりたいですね。

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