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シールレスポンプの空運転の原理|機械系エンジニア向け

シールレスポンプ 化学機械
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シールレスポンプ(sealless pump)で話題になる空運転について解説します。

空運転は、ポンプの運転時に掛かる力と密接な関係があります。

シールレスポンプ=空運転

という公式は暗記レベルの話になりますが、それがどういう原理で起こるのかを考えましょう。

単なるキャンドポンプやマグネットポンプでは原理を知ることなく常識レベルで処理できますが、応用を聞かせようとしたとき本記事で取り上げる原則を知っていると自信が付くでしょう。

ちょっと難しいですが、物理現象を冷静に見ればイメージはつかめると思います。

空運転

空運転とはつまり液体が入っていない状態でポンプを運転させることを言います。

ポンプは通常は液体を送るために使います。

ここで液体が無ければポンプは、結構簡単に壊れます。

特にシールレスポンプは確率が非常に高いです。

キャンドポンプもマグネットポンプもシールレスだからプロセス送液に重宝しますが、空引きという最大の欠点を持っています。

シールレスの空運転が起こりやすい理由
  • 運転時にインペラが液体から受ける力が大きい
  • インペラ・シャフトを支える力が弱い
  • 冷却源がプロセス液だけ

運転時にインペラが液体から受ける力

さっそくですが、ポンプの運転中にインペラは液体から下のような力を受けています。

インペラに掛かる力(sealless pump)

パッと見て分かる特徴である

  • 吸込み側が低い圧力
  • 吐出し側が高い圧力

についてはポンプで加圧するという性質から見ても明らかでしょう。

もう1つ。

吐出し側が外側ほど圧力が高い

これは\(圧力∝{回転半径}^2\)という関係があるからです。

以下、この関係式の詳細を説明しますが、読み飛ばしてもらっても構いません。

ポンプによって流体はエネルギーを加えられるとき、インペラ中央部から外側に進むにつれて、角運動量が増加していきます。
$$ 流体の角運動量 = ρrv $$
回転速度vは半径rと角速度ωを使って
$$v=rω$$
と書けるので、
$$ 流体の角運動量 = ρr^2ω $$
となります。
ωはポンプのシャフトを回す回転数そのものなので、ポンプ運転時には角運動量は回転半径の2乗に比例します。

圧力エネルギーと流体エネルギーは
$$ P = \frac{1}{2}ρv^2 $$
という関係があります。
$$v=rω$$
であることから、
$$ P = \frac{1}{2}ρv^2 = \frac{1}{2}ρr^2ω^2 $$
となります。
ω一定の状態で運転しているポンプインペラ部では、圧力は回転半径の2乗に比例します。

角運動量で考えても圧力で考えても結果は同じですね。

回転半径の2乗が大事というわけではなく、吐出し側の圧力が吸込み側の圧力より高いということがポイントです。

ポンプ運転中にインペラに掛かる力

インペラが吸込み側に押される力が働く

これはインペラに多少の改造をすることである程度は緩和できます。

インペラに穴を少し開けてあげればいいわけです。

渦巻ポンプならもっといろいろこだわることができますが、シールレスポンプでは限界があります。

相対的にシールレスポンプの方が空運転に弱いという意味ですね。

インペラ・シャフトを支える力

ポンプ運転時には吸込み側に押される力が働くことは分かりました。

シールレスポンプはこの力を受ける部分が弱いのが難点です。

ベアリングで支える

ベアリングはシャフトの回転による摩擦を劇的に減らすという目的以外にも役目があります。

それがインペラに加わる流体の力を受けるということ。

インペラに加わる流体の力は吸込み側に押す力ですが、これをスラスト力と呼びます。

イメージとして下図のように考えます。

ベアリングに掛かる力(sealless pump)

ベアリングは回転の摩擦を減らしながら、インペラを支えてくれています。

ベアリングさまさまです。

これは渦巻ポンプやキャンドポンプで一般的ですね。

マグネットで支える

マグネットポンプではベアリングはスラスト力を受ける役目はあまりありません。

どちらかというとマグネット自身がスラスト力を受けています。

外部マグネットが電気モーターの力で回転して、内部マグネットが釣られるように回転します。

ここで外部マグネットと内部マグネットの間で回転方向の力だけが伝わっているように見えながら、実際にはスラスト方向の力も作用しています。

下の図のように、インペラを支えるように作用します。

マグネット(sealless pump)

絶妙なバランスが成立してポンプが運転できます。

液体が無いと…

さて、マグネットポンプに液がない場合はどういうことが起こるでしょうか。

インペラがスラスト力を受けません

この結果、

マグネットが逆スラスト力をインペラに当たることになります。

下図のようになります。

液体なし(sealless pump)

この状態ではインペラ・シャフトは吸込み方向とは逆の方向にずっと引っ張られます。

ケーシングと衝突します。

衝突しながら高速で回ろうとします。

接触している樹脂が摩擦熱であっという間に溶けて漏れだします

これが空運転で起こっていること。

冷却水がプロセス液だけ

マグネットポンプの空運転は分かりやすいですが、キャンドポンプの空運転はどうでしょうか。

こちらは実はもっと単純です。

プロセス液自身でベアリングの摩擦熱を吸収して運転していますが、プロセス液がないと摩擦熱が出続けます。

これでベアリングが熱を持ちすぎて壊れるというモードが一般的。

渦巻ポンプならどうかというと、ベアリングは外に出してあって潤滑油で冷却されています。よかったよかった。

摩擦が起きそうなメカニカルシールは実は要注意です。

セルフフラッシングだと空運転の時は壊れる確率は高いです。冷却液がないからです。

外部フラッシングだと大丈夫です。空運転でも冷却液が供給されているからです。

空運転を防ぐ方法

空運転を避けるために運転面でできることを紹介します。

充液確認をする

ポンプの空運転が起きないようにするためには、ポンプに液がいることを確認します。

アナログですが確実です。

起動時に人が立ち会いましょう。

バッチプラントだとポンプの起動が1日に何回もあるので、頻繁に現場で立ち会わないといけません。

ポンプ起動時にポンプ出口の抜き弁から液を抜きましょう。

面倒なら圧力計液面スイッチも活用しましょう。

電流値でポンプを止める

空運転が起きないように、電流値でインターロックを取る方法があります。

ポンプに液体がいない状態で運転をすると電流値は低くなります。

これを利用して、通常時の電流値よりも電流値が一定量低ければポンプを止めるという思想です。

バッチ運転では液面が経時変化して吸込み圧力が変化するので、電流値も変化します。

普通は電流値が下がっていく方向ですよね。

タンク内の液面が限界ギリギリになったタイミングの電流値を記録しておきトリガーにします。

ポンプを止めた後は窒素で圧送します。

接触部の部品

仮に空運転を起こしても、設備が壊れにくいようにする発想があります。

羽根車とケーシングの接触部を考えます。

  • 部品を簡単に取り買えできる構造にする
  • 接触部の硬度を上げる
  • 接触部厚みを増やす

この辺りの対策は、メーカーが一般的に普通に行っていることです。

参考

ポンプは化学プラントでは非常に多く使っており、トラブルも非常に多いです。

以下のような本での勉強も進めたいところです。

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最後に

シールレスポンプの空運転と運転時にポンプに掛かる力について解説しました。

ポンプは運転時にスラスト力を受けます。

冷却水やベアリングがないとスラスト力に対抗する術がなくて摩耗による部品破壊が起きます。

充液確認・電流値のインターロック・部品対策をしっかりしましょう。

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