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キャンドポンプを化学プラントで15年使ってみた感想

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帝国電機製のキャンドポンプ(canned pump)を使ってみた感想です。

ユーザーとしてキャンドポンプに関わってきて15年以上、お世話になっているポンプです。

これからも使い続けていくでしょう。

選定するうえでの注意などをまとめてみました。

キャンドポンプとしては日機装もありますが、帝国電機の方が個人的には長く使っているので、帝国電機を視野に入れて紹介します。

キャンドポンプ(canned pump)の基本型

まずは基本型です。

使っているキャンドポンプの99%以上は基本型と言っていいくらい、基本型はメジャーです。

極端に言うと、これだけをちゃんと使えれば十分だと思います。

キャンドポンプに求められる最大の性質は漏れないこと。

漏れたら困る危険物4類の液体を対象にすることが多いので、漏れなければ良いという意味で基本形を良く使います。

硫酸や苛性ソーダにも使います。

空転さえしなければ、大きな問題は起きません。空転防止リレーはほぼ必須と言えます。

流量や揚程の範囲も広いですが、私は数種類しか使っていません。

というのも、型番が変わるとポンプ外形が変わってしまう可能性があるから。

キャンドポンプの基本形のような汎用性が求められるポンプでは、部品の予備や本体の予備などを確保しておいて、何かトラブルがあった時にすぐに交換したいと考えます。

ここで型番が1つ変わって外形が変わってしまうと、配管改造に一手間入ってしまいます。

修理段階ではこういう手間は極力なくしたいもの。

メーカーとしては個々の型番に対して最適設計をせざるを得ないので、ユーザーとしては型番の絞り込みなどプラント内での最適な絞り込みをしましょう。

といっても、エンジニアレベルでは個別の最適設計をして、型番の統一をする思想にはなかなか到達しません。

工場レベルの組織として思想を持たないと難しいでしょう。

本体の予備としてはスタンバイ予備・格納予備などを考えています。スタンバイ予備でも格納予備でも一度も使っていないという条件が無ければ、いろいろな用途への展開はかなり難しいです。例えば硫酸用に使っていたポンプを使わなくなったので取りはずして洗浄。その後に苛性ソーダ用に使うかというと極力使わない方向です。この辺はキャンドポンプならではの難しさでしょう。

ガスシール形

ガスシール形はスラリー送液に使います。

スラリー液は化学プラントでも特定の業界ではよく使います。

このポンプはスラリー濃度20wt%くらいまでなら、ほぼ安心して使っています。

20wt%を越えたらちょっと気を使って運転しよう、というに気になります。

濃度をちゃんとコントロールして製造はしますが変動する場合がありますし、いろいろな製品のスラリー液に対応しようとしたら、汎用性を考えてこのポンプを選びます。

とはいえこのポンプは、私がいるプラントではどんどん需要が下がっていっています。

スラリー向きではあるものの、窒素ガスの封入やメカニカルシールの状態確認などが必要となるからです。

現場での手動作業を基本としたポンプであって、自動化が進むプラントにはやや不向きです。

もちろん自動化をすれば使えることは使えると思いますが、スラリー性状が毎回同じというわけでもないので、窒素ガスや充液のタイミングを正確に見極めるのはかなり難しいです。費用対効果があまりよくありません。

それくらいなら、他のスラリーポンプを探しても良いのでは?という流れになっています。

スラリーシール形

スラリーシール形はガスシール形よりも、低濃度のスラリー液を送るときに使います。

ガスシール形よりも、運転上ケアすることは少ないです。

このポンプはあまり使ったことがありません。

濃度の大小を気にするならガスシール形の方が良いですし、低濃度のスラリーに指定するなら別のポンプを選ぶことも十分に可能です。

選定するときはかなり限定した条件になるので、機会が少ないです。

リバースサーキュレーション型

リバースサーキュレーション型は蒸気圧が高い(温度が高い)液に対して使う場合があります。

特に危ない液体の場合には検討しても良いポンプです。

基本形だとベアリングの冷却を積極的に行うものではありませんが、リバースサーキュレーション型は積極的にベアリングを循環冷却させるものです。

メカニカルシールのセルフフラッシングに発想が似ています。

通常の使い方なら基本形で良いのですが、蒸気圧が高くて沸騰しやすい液体や熱を加えると特に危険というポンプには使いましょう。

サーキュレーション配管に温度計をつけて、インターロックを組むのも良いと思います。

自吸式

自吸式のキャンドポンプも使用頻度は少ないです。

プロセス液で全量送液を前提とする場合、押し込み方式で設備を組み立てるので、吸い込み方式自体をほぼ採用しません。

使った機会がゼロというわけではないのですが、何に使ったのか覚えていません。

ポンプの仕様に自吸式があって、渦巻ポンプだけでなくキャンドポンプにも自吸式があるということを知っているだけも、何かあった時に役に立つかもしれません。

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さらに知りたい方は、以下の記事をご覧ください。

最後に

帝国電機製のキャンドポンプを使ってみた感想をまとめました。

基本形でほぼ事足りていますが、場合によってガスシール型を使います。

スラリーシール形・リバースサーキュレーション型・自吸式も使わなくはないですが頻度はかなり少ないです。

基本形で型式を統一させて、予備点数を少なくするという工夫は大きなプラントほど有効で、今後重要になる考え方だと思います。

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