言語化(verbalization)って皆さん意識しているでしょうか?
研究のレポートを書いたり、Youtubeなどでスピーチをしたり、ブログで文章を書いたり・・・
そういう仕事をしている人は言語化能力が高いですよね。
仕事において言語化ができるということは、本質を見抜くことに繋がります。
ところが、機電系エンジニアは言語化が苦手です。
私の周りの実態や克服するために私が今までしたことをまとめました。
ほとんど失敗ですけど・・・
機電系エンジニアは言語化(verbalization)が苦手
機電系エンジニアは言語化が苦手です。
エンジニアなら交渉などで話す機会がありそうだから、言語化能力も高そうに見えますよね。
でも、一般には低いです。
なぜでしょうか?
言語化しなくても仕事が進むからです。
- 図面を作れば終わり
- 指示書や依頼書に単語を書けば終わり
- 現場の写真を撮って見せれば終わり
- 数値を入力すれば終わり
いろいろな書類が基準化され、都度必要になる書類には最低限の情報を書けばいいという効率化を徹底した結果、文章を書く能力が育たない環境にあります。
手で文字を書かないと、漢字を忘れたりしますよね。あれと同じです。
文書だけにおいても文字を書くというチャンスは少なくなっているのに、図面でやり取りができるエンジニアはますます文章を書く機会がありません。
パソコンでシステムが構築されて行ってクリックして選択すれば終わりなんていうことも多いですよね。
人間の能力を育てなくなる仕組みに染まっていっています。
その割に矛盾している光景をよく見かけます。
- パソコンでとにかく手打ちをする(コピーしたり関数やマクロを使ったりしない)
- とにかく口頭で対応しようとして、文字や絵を書こうとしない
簡単に「勉強しない」と言った方が良いかも知れません。
JTCによく見られるように会社としては言語に偏りすぎたコミュニケーションをしていても、組織としては言語化が弱いようです。
例えば会社としては、未だにこんなことをしています。
- PPTのスライドに文字だけを打ち込む
- 発表ではその文字をとにかく読むだけ
- 新聞形式で文字だけの紙の資料が配布される
紙だけでなく文字も好きすぎで、電子化やグラフなどの視覚化はかなり優先順位が低いです。
この5年~10年でようやく変わってきていますが、まだまだ酷い。
機電系エンジニアが言語化(verbalization)が苦手な背景
機電系エンジニアが言語化が苦手であることは先に述べました。
エンジニアリングの環境が言語化能力の育成を妨げる環境にあることも述べました。
でも、もう少し背景を掘り下げてみましょう。
こういった要素が関連要素として挙げられます。
化学系学生は化学プラントでは技術系・営業系の様々な部署に異動する可能性があります。
これは緊張感の塊。
別の部署に異動して勉強して追い付こうとすることの繰り返し。
競争意識が高いと言えます。
一方で、化学プラントの機電系エンジニアはリストラや自主退職をしない限り、ずっと機電系エンジニア。
同じ仕事を30年以上続ける人もいます。
競争意識がありません。
これが「現状維持」を養成し、勉強する意欲を無くすことに繋がります。
機電系エンジニアが化学系エンジニアより学歴が低いことも、言語化や議論から遠ざかる要因になり勝ち。
そんな状態で仕事だけはいっぱいあるので、会社から帰ってから勉強する気なんて湧きません。
入社時の能力のまま成長せずに身を削って消耗しているという言い方もできます。
そうこうしている間に周りの人は勉強をするから、差は広がっていくばかり。
ある意味、日本と同じ構図ですね。
機電系エンジニアが成長するために必要な行為
機電系エンジニアの日常的な行為で足りていない部分を取り上げます。
- 専門用語を覚える
- 分からないことを聞く
- 自分で調べる
- 自分の手を動かす
1~4全部をいきなりできるわけではなく、徐々にやっていくしかありません。
普通の職場なら、新入社員から1~4全部を要求されるでしょう。
それではやっていけないのが化学プラントの機電系エンジニア。
専門用語を覚える
入社して間もない機電系エンジニアはとにかく専門用語を覚えましょう。
若い記憶力が高いうちこそ、積極的に覚えましょう。
入社してまもないころに会社で取り交わされる会話は、ある意味日本語に聞こえません。
専門用語だらけでその意味を知らない以上は、言語として認識できないのも仕方がありません、
だからこそ、専門用語は真っ先に習得するようにしましょう。
専門用語が理解できれば議論の中身を理解しやすくなります。
いきなり議論の中身や本質を理解できないですが、徐々に理解できるようになります。
英語を話せるようになるのに単語がある程度大事なことと同じです。
分からないことを聞く
専門用語をある程度理解したら、積極的に質問をしましょう。
専門用語を知らない段階では「自分はこんな事を知らないのに聞いて良いのか?」という疑問がわきます。
専門用語を知らない段階で色々教わろうとしても、理解は追い付きませんよね。
専門用語を覚えない状態だと理解は進まず、時間だけが過ぎていきます。
一定の時間が経ったあとで質問しようとしたら、どうやって質問したらいいか分からずに「この年次でまだこんなことも分からないの?」と言われます。
悪循環。
聞くは一時の恥聞かぬは一生の恥。
専門用語を覚えるフェーズを1年くらいで終了して、2年目からは積極的に聞くようにしていきたいです。
この段階で自分で何でも調べようとしても時間が掛かりすぎます。
自分で調べる
分からないことを聞いて発想や考え方を習得していったら、自分で調べるようにしましょう。
いつまでも人に聞いてばかりだと、一人前にはなりません。
機電系エンジニアには社内外問わず多くの基準やカタログがありその中身を自分で調べます。
分からないことを聞いていた時代とは、知的活動のレベルが一段階上がります。
自分が分からないことを自分で調べて自分で論理を構成して納得する、というプロセスを経験できるからです。
機電系エンジニアではプロセス設計・機器図・配管図などの誰かが作ってくれた資料をチェックするチャンスがあります。
それらの資料を作る人の方が当然能力が高いのですが、そこに負い目を感じてはいけません。
とはいえそれらの資料がどういうルールで作られているか調べる努力はしましょう。
これを繰り返していくと、ルールや法則を読み解き一般化できるようになってきます。
自分で調べて分からなければ人に聞いてみましょう。
当たり前のように見えますが、機電系エンジニアはほとんど人に聞きません。
誰かが作った資料をチェックして提出すれば仕事は終わりますから。
分からないことでも放置することができてしまいます。
自分の手を動かす
自分で調べることができるようになれば自分で手を動かしましょう。
何を当たり前のことを…と思うかもしれませんが、実はこれらのスキルが機電系エンジニアの最高レベルくらいに位置付けられています。
それくらい自分で手を動かしません。
チェックばかり。
チェックばかりして手を動かさないということは、現場を知らない頭でっかちな存在ですよね。
危険ですよ。
この辺りまでくると、言語化が苦手な図面屋さんが書いた図面から、その設計思想を読み解こうとすることもできます。
機電系エンジニアが言語化(verbalization)を鍛える方法
機電系エンジニアが言語化するためには積極的にトレーニングの場を設けないといけません。
具体的なシーンをいくつか考えました。
- 図面提出時に質問をする
- チームミーティングで発表をする
- 現場に1人で放り込む
このいずれの方法も多少の効果はありますが、大きな効果は得られません。
でも他に有効な方法がないでしょう。
私は10年以上部下の教育に関わっていますが、今でも思考錯誤しています。
図面提出時に質問
エンジニアがチェックした図面は上司が承認します。
ここで質問をしてみると良いですよね。
難しいのは質問の内容。
その人のレベルに合わせた質問を考えるのが最も難しいです。
上司と部下のレベル差があればあるほど難しいです。
合格レベルに達していない資料なら、資料の修正の赤ペンが優先されるので質問をしていると時間を炉比します。
時間を掛け過ぎると、過剰教育と冷たい目を見られるのが現状。
ここで言語化能力が必要となり、鍛える場となります。
チームミーティングで発言
チームのミーティングで発表させるという方法もあります。
どこのチームでもミーティングは行います。
1日1回、1週間に1回…。
いろいろなスタイルがあります。ここを活用して、業務進捗報告なんて指せたらいいかも知れませんね。
でもあまり機能しません。
定型的な表現を使えば終わりだから。
長く続ければ続けるほど、言語化という目的から外れがちになります。
毎朝の朝礼と同じような展開ですね。
現場に1人で放り込む
エンジニアは事務所で学ばず現場で学べ!
昔はよく言われていました。
けど、これも徐々に機能しなくなっています。
現場も忙しいから。
現場とエンジニアの知識差が大きいから。
エンジニアが現場に質問をしても、最低限の答えしか返ってこないでしょう。
こうなると時間を掛けても得られる効果が高いとは言えません。
最近の人なら上司が面倒を見てくれずに放置していると捉えることもあるようで、危険な手法です。
読み書きのスキル変化
テレワークが進んだ2020年以降、機電系エンジニアに要求されるスキルも変化していっています。
かんたんにいうと、言語化がますます重要になっています。
言語化はエンジニアリングの技術的能力といって良いでしょう。
メールやオンライン会議などでは、図面の修正をリアルタイムで作図することが難しいです。
言語化が大事です。
図面を出せばOKという古い考え方を変えないと、オンラインはやはり無理だ・対面が大事だという論理展開になりがちです。
機電系エンジニアとしては、右から左に流れる大量の図面を言語化せずに回すという形で現れます。
- レビュー前の図面とレビュー後の図面を提出するだけで何も言語化しないエンジニア
- 添付資料を見てくださいとだけメール本文に書くエンジニア
いずれも言語化を放棄しています。
これは彼ら自身が言語化できていないから。あと、見る人のことなんて考えていないから。
業務の効率化という意味では言語化は非常に大事。
上の例では
「〇〇の件は、△△を◇◇の考えで作図しました」という書き方です。
こういう表現をしつつ提出内容がちゃんとしていれば、周囲からの信頼感はぐっと上がります。
逆にそれができていないといつまで経っても信頼感は得られず、時間と手間を掛ける仕事をすることになります。
最後に
機電系エンジニアと言語化についてまとめました。
機電系エンジニアはその環境からか言語化が極端に苦手です。
業務の本質を探るために必要な言語化。意識したいところです。
専門用語を覚え・人に聞き・自分で調べ・自分で手を動かすというアプローチを進めましょう。
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