大気開放の集気ライン(gas collection line)について、ガスラインと関連性を考えて解説します。
化学プラントではとても怪しい危険な液体をいっぱい扱います。
ガスとして外部に放出されるだけで、とても危険な状態になるものも。
そういうガスを外部に拡散させないようにするためには完全閉鎖すればいいのですが、装置を加圧や負圧状態にしないためには大気圧と等しい状態を維持しないといけません。
「ガスの拡散防止」と「大気圧状態」を両立させる方法が集気ラインです。
ガスラインの設計上は配管口径や線速の考え方が大事ですが、多少複雑です。
落ち着いて分割して整理したいと思います。
モデル
ガスラインと集気ラインのモデルをまずは示しましょう。
タンクに液体が入っていて、その液体が大気中に開放されるモデルです。
液体として水でも有機溶媒でも何でも当てはまります。粉体でも発想は同じです。ガスでも適用できます。
大気に開放されるラインをガスラインと呼ぶこともあります。
ガスラインは一般に大気に開放されます。
これはタンク内部を常時大気圧状態に維持するため。
ガスラインの配管が長かったり小さかったりして圧力損失が付くと、タンク内を液が出入りするだけで負圧や加圧状態になってタンクが変形します。
この開放されたガスラインは総合除害装置などに集気されて処理します。
どうしても大気に開放したくないガスなら、専用の除害装置を設けて大気開放をせずに独立したガスラインを設置することもあります。
この場合のタンクは負圧や加圧に耐える強度が求められます。
線速まとめ
配管設計に必要な線速をまとめました。
これはいわゆる標準流速の考え方です。
この3つの部分に分割して設計をします。
集気線速
最初の設計部分は集気部分です。
大気開放された部分から発生するガスを集める部分です。
ガスだけでなく空気が混合されます。
配管の一端が大気開放させていて、他端をブロアーなどで吸引する方式です。
ガスだけでなく粉体も同じような発想で考えます。
その意味で掃除機も広い意味でこの考え方を使います。
ここで重要な指標は集気流量。
一般には0.5~1.0m/s程度で考えます。
この状態で、集気配管口径を考えるには以下の考え方を使います。
集気配管の口径dと同じ長さdで、配管の端部から球状の空間部を集めるという考え方です。
配管の断面部分だけ円柱状になってその周囲は球状となる領域です。
立ち上がり配管の線速
立ち上がり配管は10m/s程度の線速が必要です。
配管口径が小さいと圧力損失が出て、配管口径が大きいとミストが落下してきます。
配管口径が小さすぎても大きすぎてもダメです。
制約が結構厳しいですね。
集合ライン以降
立ち上がり配管から1つの集合ラインに集合させて、ブロアーに吸引させます。
この集合ライン以降の線速は、ブロアーの能力に依存しますが、10m/s程度で考えればいいでしょう。
立ち上がり配管と同じ発想です。
配管口径が小さいと圧力損失が出て、配管口径が大きいとミストが下部に溜まります。
下部にミストが溜まって配管断面積が小さくなっていき、線速が上がってくるとミストが空気の流れに同伴されていきます。
配管口径を上げすぎていても、運転上は結果的に最適な口径に落ち着いてしまいます。
配管工事費が高くなる分だけ損なので、最初から最適な配管口径で設計しましょう。
ミスト分離の応用
立ち上がり配管の口径を上げて、ミストを同伴させる例を紹介しました。
これを活用すると、ミストを分離するという使い方が可能です。
単に配管口径を上げて線速を落とすだけでミストが分離できます。
配管口径を上げたミスト分離のメリットとデメリットは以下のとおり
線速を落とすミスト分離はアナログな方法なので、信頼感があります。
他のミスト分離は例えばデミスタなどの部品が必要で、メンテナンスや管理が必要になります。
詰まる危険性もなく、監視計器を付ける必要もありません。
何もケアしなくて良いというのは運転上の最大のメリットですね。
線速を落としたミスト分離を実現するためには配管設計が必要です。
このためには液滴径の類推が必要となりますが、通常は難しいでしょう。
ストークスの法則から終端速度を求めて、液滴径を算出します。
ミストだと液滴径は10μm程度・抵抗係数も計算は可能です。
これで成功するかどうかという検証が難しい。
成功したら何も言われないから・・・と甘えていたら、成功していなくても我慢していたということが起こりえます。
ミストや粉体を集めた後の排出ラインもそれなりに適切に設計しないといけません。
参考
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関連情報
最後に
化学プラントの装置周りの大気開放ラインや集気ラインについて紹介しました。
集気速度・立ち上がり速度・合流速度など個別に設計します。
配管口径を下げても上げても上手くいかないのが特徴です。
ミスト分離など応用もできる考え方です。古典的ですが有力ですよ。
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