タンクの設計や補修において、局所的に強度を高めるための当て板は非常に有効な手法です。特に化学プラントのタンクでは、液体の衝突や内部配管の影響で局所的な変形や腐食のリスクが生じます。
この記事では、タンクに当て板を設置すべき箇所と、その設計上のポイントをわかりやすく解説します。
特に補修では一般的ですが、新作段階で当て板を意図的に設置する場合があります。当て板を付けなくても短期的には問題なくて、当て板を補修的に後日行うという考えはあり得ますが、相当勇気のいるプランとなります。機器を設置する前の設計段階からしっかり考えておきたいですね。
この記事は、タンク構造シリーズの一部です。
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強度を上げる
タンクに当て板を付ける主目的は強度を上げるということ。タンクの強度は板厚で決まると言って過言ではありません。板厚はそのままコストに効いてくるので、板厚は最低限に抑えたいというのが設計上のポイント。
それでも部分的に強度を上げたい、という場所に限定して当て板をします。当て板をしない場合は強度が若干不足しますが、それが原因ですぐに壊れるというわけではありません。
使い方や寿命を考えて、意図的に当て板をしないという考えはあってもおかしくありませんね、
タンクで当て板を付ける場所
タンクで当て板を付ける場所を見ていきましょう。

強度計算をして板厚を決めたとしても、液がタンクと衝突する部分は当て板を付けます。当て板の厚みは、強度計算上の厚みと同じ厚みにしておくと無難です。つまり当て板によって、その部分だけは厚みは2倍になるという考え方。
タンク内に液を入れるときに、タンク内壁近くまで配管を接続する場合があります。これを挿入管と呼んだりします。挿入管から排出された液体がタンク内壁に当たる部分を、当て板で補強します。流速が高い液体が板と衝突すると、板が変形する恐れがあります。
タンクの場合、板は周囲が固定されているため、板はひずみの形で現れます。ひずむことで、さらに強度が弱くなったり、腐食しやすくなったり、液が溜まりやすくなったりと、良いことはほぼありません。
タンク内壁への液の流入以外にも、ジャケットタイプでも当て板をします。

例えば、二重管型の配管では、ジャケット側配管の入口部に当て板を付けます。パイプが変形するという可能性は、タンクが変形する可能性よりは遥かに低いです。
しかし、例えば内面がグラスライニング配管のような割れやすい配管の場合は、外面の流体の力で割れる可能性があります。グラスライニング反応器のような大型の設備なら、必ず当て板を付けましょう。
挿入管の目的
当て板を付ける背景に、タンク内に挿入管があるから、という書き方をしました。ではなぜ挿入管が必要なのでしょうか?なければ、どういう問題が起きるのでしょうか?その答えの1つは液が跳ねるということ。

挿入管がタンク天板で止まっている場合と、タンク底面近くまで配置されている場合を考えましょう。タンク天板で止まっている場合は、液体が挿入管から放出されると、すぐに拡散されます。これは流速を落とすという効果が期待できます。
ただし、タンク液面よりも上部で液を降らせることになるので、液面部で液が跳ねることになります。液が跳ねることで怖いのは静電気。化学プラントでは非常に気になります。
挿入管を付けていると、液面より下の位置で液を放出することが可能なので、液が跳ねるということはかなり緩和されます。液面が空の初期状態では、タンク底面と衝突することで変形のリスクがあります。だから当て板を付けるという考え方ですね。
挿入管を付けた場合、タンク液面より低い位置に管が入っている関係で、挿入管側に逆流する可能性があります。これを回避するために、ブレーカー用の穴を開けておきましょう。
タンク側壁に衝突させるタイプは、挿入管の長さを短くしつつ、流速を落とす効果が期待できます。壁面を垂れさがっていく中で、壁面が摩擦要素となっています。
タンク底面までの挿入管は後で設置するのはとても大変なので、側壁に当てるタイプは改造時に役に立つでしょう。
参考
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最後に
タンクにおける当て板の設置は、局所的な強度確保と長期的な安全性の両立に不可欠です。液体の衝突や内部配管の影響を把握し、設計段階で適切な位置に当て板を配置することが、タンクの変形防止と安全運用につながります。
短期的には不要と思える箇所でも、長期使用や保守を考えれば、当て板の設置は重要な判断ポイントです。
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