バッチ系化学工場のタンク付属ヘッダーの構成 ノズルオリエンテーション・洗浄・サンプリング・窒素

タンクヘッダー配管

バッチ系化学工場のタンク付属ヘッダーの構成について解説します。

タンクに加えて反応器も解説します。

反応器の方が制約が厳しく、改造頻度が圧倒的に高いです。

化学工場の設計エンジニアは絶対に知っておくべきことですね。

というのもこのヘッダーが決まるかどうかが、プロジェクトにおけるP&IDの作成速度や配管図の作成速度に大きな影響を与えるからです。

P&IDを手書きで一回でも書けば気が付きます。CADなんていりません。

略フローをもとにP&IDを書くのがいかに大変か。

図面屋さんにお願いするだけでなく、自分の手を動かすとすぐに分かりますよ!

ヘッダーは2~3個に分割

タンク上のヘッダーは2~3個に分割します。

典型例を下に示します。

ヘッダーやノズルと接続する内容物によって大きく以下の5つに分かれます。

タンクノズルの内容物
  • 液A
  • 液B(もしくは粉体)
  • 窒素
  • ガスライン
  • サンプリング

反応上重要な二種類の液(液Aと液B)はヘッダーを分けるのが大前提です。

液Aと液Bを同じヘッダーにしていると、ヘッダー内で反応をして熱を持ち危険な状態になる可能性があるからです。

反応はタンク内の温度制御ができる環境でのみ行われるように、という気遣いです。

反応終点確認のサンプリングをする場合、それを別のヘッダーにする場合があります。

少なくともサンプリング用の「漏斗」はヘッダーノズルの真上部に付けます。

反応で発生したガスや蒸留で発生するガスは専用のノズルを使うので、ヘッダーとは別にする場合が普通です。

ガスラインの口径が大きく、液ヘッダーの口径が小さいから、分割した方が都合が良いという考えですね。

窒素ラインも液との混合を防いだり、逆流して窒素系統を汚染しないようにするためにも、ヘッダーとは分割することがあります。

ノズルオリエンテーション

タンクノズルの配置を見てみましょう。

下の図を見てください。

ノズルの割り当てを考えるとき、以下の手順で考えます。

タンクノズルオリエンテーションの優先順位
  1. タンクに固有の部品類(マンホール・バッフル)
  2. 計器類(液面計・照明)
  3. ガスライン
  4. 大口径配管
  5. 液ヘッダー

ノズルオリエンテーションとして専門に考えるべき項目です。

マンホール・バッフル

マンホールやバッフルはその装置を構成する最低限の要素です。

これを無くすことは基本的にできません。

タンクサイズによってはマンホールを小さくしたり、バッフルが1個もしくは2個と変化します。

計器類

計器類もほぼ占有されてしまいます。

照明が無いと、マンホールから中身を目視確認できませんよね。

液面計では一般的な電波式液面計を使うからですよね。

ノズルの占有を控えるために、差圧式液面計をタンク下部に付けるケースもありますが、例外と考えた方が良いです。

ガス

ガスラインは専用で大きな口径を1つ占有します。

これも変更する可能性はほとんどありません。

液ヘッダー

ここまで決まってようやく液ヘッダーの配置を決めれます。

この段階で使えるノズルは3~4個に限定されます。

この中から上で上げたように、機能や安全性を考えて使い分けないといけません。

結構考えないといけなくて、P&IDを作る時にもかなりの時間を費やします。

大口径配管

これは最も忘れ去られやすいものです。

バッチ系化学工場では粉体を良く扱うので、粉体投入用のノズルが必要です。

液ヘッダーより大口径が必要で、ガスラインと同等のレベルが求められます。

大口径配管を1つ作ってしまうと、液ヘッダー用のノズルを1つ減らしてしまう可能性が高いです。

ノズルを付ける場所が無く、口径が不足している場合、どうなるでしょうか・・・。

最悪、タンクの再製作になって投資額を増やす方向になります。

プラント建設時にちゃんとした発想を持っておきたいですね。

ヘッダーの並び

ヘッダー上の配管の並びも考慮する必要があります。

洗浄ライン

ヘッダーのデッド部ができないように、洗浄配管を配置します。

具体的には以下のとおり。

末端が水で、その隣りが苛性ソーダです。

苛性ソーダは設備洗浄で使うケースがあります。水は戦場で絶対に使いますね。

全部の液ヘッダーに洗浄配管を付けることはできませんが、少なくとも洗浄配管を付けるヘッダーだけでも適正な配置にしたい、という考え方ですね。

安全性を少しでも高める努力です。

切替作業・入槽作業を考慮

特に液ヘッダーでは切替作業や入槽作業を考慮したいものです。

液ヘッダーはエルボの後にすぐにフランジを付けると良いです。

ここに遮断板を付けたりエルボを外すだけで、縁切りができるからです。

液ヘッダーと窒素が完全に遮断できていることが、入槽作業には必須。

バルブだけで遮断していると内通などの原因で漏れこんでくるリスクがあります。

だからこそ、確実な縁切りが必要。

エルボが無いと、ヘッダーのすべてのバルブに対して遮断措置を取らないといけません。

特にサンプリングをする場合はエルボでなくてチーズでヘッダーを作成するので、忘れがちです。

図面屋も設計エンジニアも入槽作業をしないので、この辺の感度は極めて低いです。

結局困るのは現場の作業員。

現場を考慮した設計をしたいものですね。

サンプリングはチーズで接続

ヘッダーはノズルからエルボで曲げて構成すると良いでしょう。

入槽作業の省力化の目的もありますが、汎用性を考慮できる意味もあります。

ノズルの真上に配管を設置するケースはあまり多くはありません。

  • 粉体投入
  • ガスライン
  • サンプリング

ここで粉体投入やガスラインは専用化されることが多く、ヘッダーを組みません。

一方で、サンプリングはヘッダーに組み込むことがあります。

タンクのノズル数が少ないからですね。

もともとサンプリングがない系で運転していて、新製品でサンプリングをするから既ヘッダーにサンプリング口を付けたいという場合もあります。

汎用的にサンプリング口を予め設定しておく方が賢いかもしれません。

クロス管は使わない

ヘッダーのノズル真上はエルボが基本で、サンプリングなど特例でチーズを使います。

ではクロスで繋ぐのはどうでしょうか?

止めておいた方がいいでしょう。

というより現実的には難しいです。

クロスにするとエルボよりもヘッダーを2倍延ばすことが可能なように見えます。

1つ目のヘッダーがタンクから離れる方向に組んだ瞬間に、2つ目のヘッダーはタンクに近接します。

というより干渉します。

切替配管がとても多くて仕方がないという場合を除いて、普通はクロス管は使いません。

反応槽周りの窒素ライン

バッチ系化学工場の反応槽には窒素を接続します。

主な目的は静電気着火に対する対策です。

危険物の静電気着火を防ぐ手段として窒素を使いますが、その目的はいろいろあります。

反応槽への窒素の接続先で目的が変わりますので、個別に確認していきましょう。

窒素接続フロー

まずはフローを確認しましょう。

典型的なバッチプラントの反応槽のフローです。

N2シール

窒素のラインはいろいろな場所に接続できます。

反応槽の常時置換

まずは反応槽に直接入る窒素ラインです。

反応槽の天板から窒素を流します。

反応槽内の酸素濃度を下げるために窒素で希釈するという化学的な本来の目的に沿ったものです。

とはいえ、このラインの目的は「常時運転している時」に使用するものです。

反応槽内に危険物の液体があって、上部気相部に溶媒が蒸発していくのを確実に希釈するという狙いです。

反応槽システム全体の常時置換

①の反応槽の窒素置換に対して、反応槽システム全体を置換するという方法が②として考えられます。

ガスラインの出口に窒素を繋ぎます。

①が反応槽内の溶媒濃度を対象にしているのに対して、②は熱交換器・ガスラインなどの溶媒濃度も対象にしています。

①で確実に希釈できている場合は、②は不要と思うでしょう。

バッチプラントでよくターゲットになるのは、真空ブレーク

真空下で運転していて常圧に戻すときに、この②のラインは大活躍。

②のラインがないと、常圧に戻すときに空気が混入してきて、ガスラインや熱交換器の酸素濃度が上がるリスクがあります。

①だけだと②のように真空ブレークに対する対策ができないし、②だけだと①のように反応槽内の希釈はできません。

両方とも欲しいところです。

反応槽の初期置換・ブロー

反応槽内の液体を別の反応槽に送る場合に、窒素を使うのが③です。

ポンプでできる限り送りますが、ポンプで送れないところまで液量が下がったときに、

配管内のたまりを無くすためにブローします。

ブローでも配管の底部は完全には除去できませんが、相当量を除去することができます。

ブロー用以外にも、反応槽内の初期窒素置換としても使えます。

運転開始前の空気で満たされた反応槽を窒素で置換して、危険物を投入します。

ここで①の反応槽天板から窒素を入れても置換は十分にはできません。

というのも空気の方が窒素よりも重たいから。

反応槽の底から軽い窒素で重たい空気を押し出すというのが、確実な方法です。

粉体閉塞解除

粉体の閉塞解除の方法として使うのが④です。

危険物だけをターゲットにしていると見落としがちです。

粉体は詰まります。

いつ詰まるか分かりません。

ここで閉塞を解除するために窒素を使います。

気体の圧力で粉体の閉塞を解除するのが狙い。

空気だと反応槽内に混入して酸素濃度が上がるため、リスクを抑えるために窒素を使います。

大気開放部での空気混入防止

最後は大気開放部での溶媒希釈です。

粉体仕込ラインに付けることが多いです。

これは粉体仕込ラインを通じて反応槽からの溶媒が上がってきて、大気に開放されるのを緩和するという④の目的もあるのは確かですが・・・

粉体を投入したときに、大気中から空気が一緒に混入されて、反応槽内に空気が入る

というのを防止する目的もあります。

④でその機能を果たせるかというと、微妙です。

粉体投入時に④から窒素を流すと、粉体の投入を妨げる方向に動くので、使わないことが多いです。

そうすると、大気からの空気混入防止を別に設置しないといけませんね。

最後に

バッチ系化学工場のタンク付属ヘッダーの使い方について紹介しました。

タンクヘッダーの数・ノズルオリエンテーション・切替洗浄・窒素ライン

タンクと反応槽は基本的には同じ発想でノズルを組みます。

違いはノズルの数くらいでしょう。

この記事が記事が皆さんのお役に立てれば嬉しいです。

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