シールレスポンプの代表格には、ステンレス製キャンドポンプやフッ素樹脂製マグネットポンプがあり、それぞれ用途に応じて使い分けられています。しかし、その中間的な存在である「ステンレス製マグネットポンプ」が実務でほとんど選ばれない理由とは何でしょうか。
本記事では、ポンプ選定において運転条件だけでは語れない実務的視点から、その背景と代替案をご紹介します。
運転条件だけでポンプを選定できない典型例ですので、オーナーズエンジニアなら考えておきたいことですね。
ステンレスならキャンドポンプ
鉄系のポンプだと長期使用で腐食でボロボロになります。
これを避けるためにステンレスを使うことは当たり前の発想です。
でも、ステンレスのマグネットポンプ以外にもキャンドポンプもありますね。
キャンドポンプの方がコンパクトです。
漏れない・空運転に弱いという特徴も同じなので、キャンドポンプの方が有利ですね。
ステンレスのキャンドポンプとの違いは温度
ステンレスのマグネットポンプを使わない背景に、ステンレスのキャンドポンプがあります。
この2つの差は、使用可能温度。
キャンドポンプはポンプ本体に電気が通るコイル部があり、モーターの耐熱クラス(絶縁等級)という表現で使用可能温度が決められています。
もちろんマグネットポンプでも使用可能範囲はありますが、キャンドポンプのような区分はしていません。
モーターがポンプ本体とは独立して設置されていますからね。
ここがマグネットポンプの有利な点。
でも、耐熱クラスが気になる範囲での温度で使うことは、ありません。
100℃以上であればとても高温で気を付けないといけない世界。
ステンレスのキャンドポンプでも、十分に使用可能です。
予備部品は統一できるかも
ステンレスのマグネットポンプを使うメリットとして、予備品の統一化があげられそうです。
といっても、可能なのはモーター部分だけ。
モーター部分がステンレスのマグネットポンプでもフッ素樹脂のマグネットポンプでも同じなのか同課は分かりませんが、持っていても意味がないと考えています。
モーター部分だけの予備を管理するということは、ほとんどありえないでしょう。
予備を持つとしても、ポンプ本体部分の方が大事です。
それも、運転をしていてそろそろ調子が悪くなってきたかな?というタイミングで交換するもの。
予備を倉庫にずらっと並べて管理するというものではないでしょう。
仮に予備品が統一できるとしても、相当数のポンプを使っていて仕様をほぼ合わせていないと意味がないですし、モデルチェンジへの対応が必要だったりと、手間が掛かります。
腐食性なら樹脂のマグネットポンプ
プロセスポンプを選定するときに、最初に耐食性を考えます。
腐食性が高い液体なら、ステンレスではなくフッ素樹脂を選びます。
だからこそステンレスのマグネットポンプではなく、フッ素樹脂のマグネットポンプを選びます。
製品Aでフッ素樹脂が必要で、同じポンプを腐食性の無い製品Bで使う場合にも、大は小を兼ねるでフッ素樹脂のマグネットポンプを使えば良いでしょう。
腐食性という点で、ステンレス側に勝てる要素がほぼありません。
高温・腐食性ならセラミックなど別の方法を
腐食性に加えて高温という条件が入るとどうなるでしょうか?
フッ素樹脂だと100℃以上での運転は危険です。
かといってステンレスのマグネットポンプだと腐食が起きる。
こういう場合は、セラミックポンプが候補の1つになります。
ハステロイ系のポンプも候補になりえますが、失敗する確率は高いです。
参考
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最後に
ステンレス製マグネットポンプは、スペック的には中間に位置するものの、耐熱・耐食という観点から見ると明確な優位性が少なく、現場ではほとんど採用されません。
- ステンレスならキャンドポンプが温度面で有利
- 腐食性重視ならフッ素樹脂製が最適
- 高温・耐食両対応ならセラミックポンプやハステロイ系が候補
選定には素材と運転条件のバランスを見極め、用途別に最適なポンプを選ぶことが重要です。ステンレスで良いけど高温が必要という場所に限定されでしょう。
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