“制限オリフィス”の設置向きについて解説します。
オリフィスの計算も大事ですが、施工や現場での取付時に方向に悩むシーンもあります。
オリフィスに向きという概念があることを、意外と知らない人がいます。
これは機械エンジニアだけでなく、化学工学を習得した人でも同じです。
逆に、オリフィスの向きをちゃんと説明できるだけで、それなりのエンジニアリング力があるということですね。
チャンスです。
ヘッド送液の”制限オリフィス”
今回の例ではヘッド送液のラインにオリフィスを付ける例を前提としています。
このようなケースです。

オリフィスを付ける典型例は、以下のようなケースでしょう。
- 連続プラント
- ポンプ循環ライン
- ミニマムフロー確保
これは、教科書的な例です。
バッチ系化学プラントではこの例があまりないので、たまにある例として今回の例を紹介します。
ヘッドで液を滴下するときに、流量を一定値に保ちたいが、調整弁でのコントロールだけでは制御しにくい。
こんなパターンです。
配管口径や弁口径が要求流量より大きすぎることが本質原因です。
切替生産が多いバッチ運転では、同じ薬液を同じタンクからフィードするのに、生産品目によって流量が全然違うというやっかいなケースが存在します。
ここで、配管口径で流量を合わせようとするのではなくオリフィスに頼ろうとすることがあります。
手動弁の弁開度調整で対応する生産プラントもあるでしょう。ここは、技術力の差が出るところ。
ここでオリフィスには「取付向き」が存在し、どちら向きに付けるかが問題になります。
“制御オリフィス”の向きは拡大する側に
結論から言うと、オリフィスの向きは「拡大」する方向に付けます。
下のような向きですね。

オリフィスは、液の通り道を小さくするための装置ですが、以下の部分から構成されます。
- 配管口径
- オリフィス口径
- 配管とオリフィスの口径調整のテーパ
この「テーパ」を上流側に付けるか下流側に付けるか、という2パターンが原理的に存在します。
ここでテーパを「下流側」つまり「拡大する方向」につけるのが普通です。
拡大と縮小の圧力損失
オリフィスの向きを拡大する方向に付けるのはなぜでしょうか?
これは圧力損失が関係します。
オリフィスの向きをテーパが上流側にある「縮小する」側と、テーパが下流側にある「拡大する」側の2ケースを見てみましょう。

圧力損失的には、右の「拡大」側の方が高いです。
これはフローパターンをイメージすると分かりやすいでしょうか。
拡大するときのフローパターンは渦を巻く流れが存在します。
この渦は流れ方向と逆流する方向であり、抵抗となります。
この抵抗が圧力損失という形で現れます。
実際に、オリフィスの向きを変えて、タンク液面を固定した状態で液を流すと分かりやすいです。
調整弁の弁開度が微妙に変わります。
テーパが上流側の縮小流れで取り付けると、調整弁の絞りが強くなります。
このケースだと調整弁の弁開度が足りずに調整できない場合があります。
オリフィスは圧力損失を意図的に持たせるという役割から考えても、テーパは下流側につけるべきですね!
最後に
制限オリフィスの設置向きと圧力損失を紹介しました。
ヘッド送液のオリフィス・オリフィスの向きは拡大が下流側・オリフィスの向きは拡大が下流側
オリフィスは圧力損失を意図的に持たせるという役割から考えても、テーパは下流側につけるべきです。
この記事が皆さんのお役に立てれば嬉しいです。
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