保全計画を立案することは、プラントなど保全エンジニアの超重要ミッションです。
PDCAサイクルを回すことが求められる保全において、最初の計画部が狂うとすべてが狂いますからね。
大元の計画だから一度作ってしまうと、変更することは少ないですが、だからこそしっかり作りましょう。
この手順通りにしっかり保全計画ができていれば、論理的になるでしょう。
反対をするのはとても難しくなるはずです。(これに反対意見を出しても、結果はあまり良いとは思えません)
難しさは量と精度にあります。
機器をすべてリストアップ
保全計画の最初のステップは、とにかく機器を全部リストアップすることです。
現場で配置図やP&IDを見ながら照合して、基本資料を100%に仕上げます。
設備という点ではそんなに多くないので、1人のエンジニアが担当するレベルでは、半日程度で情報が収集できるでしょう。
その代わり少し体力勝負になります。
ここを雑に扱ってしまうと、以降のすべてが狂います。
現物と基礎資料の照合が大事
このデータをエクセルなどで台帳化しましょう。
配置図やP&IDから転記が必要になるので、ここでも抜けがあると以降のすべてが狂います。
基礎資料と台帳の照合が大事
通常修理に必要なデータの収集
無事に設備をリストアップ出来たら、以下の2つの情報を整理しましょう。
通常の修理に必要な金額
金額とは修理に掛かる費用のことです。
こういう情報の合計値を、ある程度丸めて算出します。
部品費用5万円+修理工数10万円+移動費7万円 = 22万円 → 30万円
なぜ丸めるかというと、個々の設備に細かく設定する意味がないからです。
例えば、ポンプAで22万円で、ポンプBで25万円だとしましょう。
ポンプAとポンプBの違いは設備の種類・設置位置などいくつかの要素があります。
これを全部パターン化して金額を振り分けると、ポンプ1つでも10パターンくらいできるでしょう。
担当する設備はポンプ以外にも、複数の種類があるはずです。
これを緻密に仕訳けていたら、情報収集だけでも時間がいくらあっても足りません。
許容される範囲で丸めましょう。
設備点数にもよりますがこれを妥協しないなら、上手く保全できません。
通常の修理に必要な日数
修理に掛かる日数を整理します。
これも金額と同じである程度妥協しましょう。
これくらいのオーダーで考えましょう。
数日を2日・3日・4日と細かく分けていたら、キリがありません。
1日以内で終わりそうなら1日、1日を越えそうなら数日、数日だと不安なら1週間・・・
というように余裕をある程度見ましょう。
価格高騰と同じで、部品の長納期化やSVの多忙化など、日数ベースでも予測しにくい事項があります。
ここを細かく見積もるのは、費用対効果が悪いです。
修理しないときのリスク
修理を前提とした保全のデータを作り上げていくと、予算を管理する部門からこういう質問が来ます。
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そんな高い金出せるわけないでしょょ
こういう時には、修理しないリスクを整理しておきましょう。
応急修理に必要な金額
応急修理に必要な金額を見積もりましょう。
夜間や休日なら手当として設定しますが、日常でも多少の上乗せをしておいた方が無難です。
故障が起こる頻度
修理しないで放置していると、いつかは壊れます。
どれくらいの頻度で壊れるかの見積をしますが、オーダーは以下のような感じで良いでしょう。
これは保全を経験している人なら、体感的に理解しています。
多少の誤差があっても許容されるはずなので、頻度を数字で見えるようにしましょう。
応急修理に必要な日数
修理に掛かる日数を見積もります。
通常修理に必要な日数より、余裕を持ちましょう。
作業員が手配できるか、部品が手に入るか、という部分でリスクがあるからです。
この日数は生産日数の縮小に直結します。
「通常修理費 < 応急修理費」が当然
通常修理の費用より応急修理の費用の方が高いはずです。
体感的に分かっていても、数値で示している人はあまり居ないでしょう。
ある程度丸めた数字で考えないと、パターンが多すぎて整理が難しいでしょう。
上記の金額・日程・頻度などの情報を提示すれば、トータルで考えない会社は無いと信じています。
気合で何とかするものだ!という思考停止をしている会社は、ちょっと危ないと思います。
予備機の情報
応急修理費を削減するために、予備機を準備しておくことが考えられます。
金額
予備機を準備するにはお金が発生します。
故障の頻度や掛かるコストを考えたときに、予備機を準備する方が良いというパターンは十分に考えられます。
対応 | 金額 | 頻度 |
補修 | 50万 | 1年に1回 |
交換 | 100万 | BM |
例えば、補修を1年に1回、50万円で毎年続けている設備があるとしましょう。
そういうものだと思考停止してずっと続けられてしまいがち。
ところが部品交換は1回100万円で済むとしましょう。
設備の様子を見ながら壊れるまで補修を続け、壊れてから部品を交換するというBM的な対応をしていると、補修に掛かる費用がトータルで不利になってしまうかも知れません。
部品の補修と交換のどちらがいいかは、運転状況・設備の調達難易度・補修の対応難易度などいくつかの要素をトータルで考えまますが、基本は金額と頻度です。
ここで大きな方向性を先に決めてから、詳細を詰めましょう。
日数
据付予備ならほぼノーリスクですが、格納予備になると応急補修と同じ考え方が必要になります。
格納予備のメリットは、長納期部品のリスク回避です。
生産機会を損失する可能性がゼロではないので、1日や数日など数値で出せるようにしましょう。
参考
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最後に
保全計画をレベルアップさせるための手順を説明しました。
設備情報を漏れなく集め、金額と日数に関する情報をある程度丸めて入力します。
修理を定期的に行う場合と、何もしないときのリスク評価を行い、予備機の有無をある程度評価します。
この精度はある程度雑でも良いですが、数字で見えるとトータルの評価がしやすいです。
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