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化学工学

撹拌槽ジャケット下鏡の伝熱計算の考え方

ジャケット下鏡の伝熱計算 化学工学
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撹拌槽の伝熱計算をするときに、熱交換器ハンドブックなどで計算をしていくとこの疑問を抱きます。

「下鏡の計算ってどうやるのだろう・・・」

この答えを私は誰からも教えてもらったことがありません。

設備導入段階での詳細の計算が不要な世界なので、気にする人の方が少ないでしょう。

明確な計算式で答えることはできませんが、こういう考え方で進めれば良いという私なりの考え方を解説します。

伝熱計算は胴と下鏡

撹拌槽の伝熱計算の全体像を最初に見てみましょう。

胴と鏡

ジャケット付きの撹拌槽は、胴部と下鏡部で主に成り立っていて、この2つの部分から熱のやり取りをします。

胴部を①、下鏡部を②としたとき、この2つを分けて考えることになります。

①は一般的な計算式が定められていてそれを使うことが多いでしょう。

②は明確な式を私は見たことがありません。

こういう場合に、どうやって考えるのか?というのが今回のテーマ。

ゼロと考える

私が一般的な装置設計で伝熱計算をする時、下鏡部の項をゼロとして考えます。

  • 詳細を考えるのが面倒だから
  • 計算に含めないことで、余裕を持った装置にできるから
  • すでに同じような装置で運転実績があるから

この3つが大きな理由です。

確かに大抵の場合は上手くいきます。

ところが、ごくまれに撹拌機が漬かるか漬からないかの微妙な液面で、温度制御も課題になるような運転を検討する場合があります。

この場合に、下鏡部をゼロと考えるのは難しいでしょう。

こういう検討をするときに、どういう考え方をすれば良いでしょうか。

多少含める

下鏡部の伝熱項をある程度含める場合の私なりの考え方です。

ヒントは流速

伝熱計算で登場する境膜伝熱係数は流速が大きな要素です。

胴部と下鏡部の、プロセス・ジャケットの流速を2段階で比較しましょう。

流速胴部下鏡部
プロセス早い遅い
ジャケット早い早い

胴部の流速

一般的に知られている胴部の伝熱計算を、流速という意味で振り返りましょう。

胴部の伝熱は、薄肉円筒の容器の内外を流れる流体によってなされます。

内外の流体はそれぞれ、主に3方向の流速成分を持ちますが、この中でも上下成分と回転成分がメインの要素になるはずです。

胴部流れ

内側は撹拌翼と同じ高さ部分は半径方向の成分がありますが、局所的なので省略します。

内側のプロセス液は、撹拌機の力で決まる回転方向の強い流れと、撹拌機の力以外に物性や温度の影響で決まる上下方向の流れの要素を受けます。

外側のジャケット液は、ジャケット内へのジャケットのバッフル・液の入れ方・流速の影響を受けます。

プロセス液を温めるのか冷やすのか・相変化があるのか、など考える要素はいくつもありますが、流速の影響を受けることは変わりありません。

撹拌槽の径が1mで撹拌機が100rpmなら、プロセス側の流速は1m/min程度と推定できます。

ジャケット側は、胴部とジャケット部の隙間を150mm、ポンプ流量を0.6m3/minとしたら、0.6/(150/1000×1×3.14)≒1m/min程度と推定できます。

下鏡部の流速

下鏡部の流速を考えましょう。

下鏡部の伝熱を真面目に計算する場合、胴板と同じように鏡板の接線方向と回転方向を考えることになります。

  • 鏡の形状は部位ごとに異なる
  • 鏡部の内側外側の液体の流れは、胴部よりも複雑

こういう理由で、計算を細かくするのは難しいでしょう。

計算ソフトなどのシミュレーションの世界になりますが、そこまで計算するほどの価値があるかどうかは、非常に疑わしいです。

現場レベルではそういう暇もなく、とりあえずやってみようと動くことが多いでしょう。

それでも流速については、もう少し絞り込みができます。

鏡の接線方向が特にイメージしやすいです。

下鏡流れ

下鏡の接線方向の流速は、流れを横切る断面積(流路面積)に反比例するはずです。

流量 =  流速 × 断面積

だからですね。

ジャケット側の流路面積は、胴部も下鏡もほとんど変わりません。胴径とジャケット径の差で決まります。

プロセス側の流路面積は、胴部よりも少なくなります。胴径よりも小さくなっていくからですね。

とはいえ、プロセス側の液が下鏡側に積極的に流れるわけではありません。

胴部側の循環流量の方が一般には大きいので、下鏡に分配される流量が少なく、流速も少ないと考えましょう。

下鏡の回転方向も同じように考えられますが、プロセス側の流速が極端に低く伝熱性を阻害しているということは言えるでしょう。

ではどれくらいの値にすれば妥当か?という話になります。

凄くシンプルに考えれば、胴部の1/2程度でしょう。

プロセス側・ジャケット側で支配される伝熱性のうち、片側が使えないという発想です。

ジャケット側も胴部と下鏡部での影響を多少考えようとしたら、少し低めに見て胴部の1/8~1/4程度は見ることが考えられます。この辺りは、ほとんど感覚的な話になります。

今回の例で挙げた、下鏡部程度までの液面で運転して温度制御もしっかり掛けたいという運転は本来してはいけません。液量を変えるか・撹拌槽のサイズを変えて、撹拌がしっかり掛かりつつ胴部でちゃんと温度調整ができることが基本です。

期待はしていないけども、どれくらいの効果があるか考えたいというお試しの思考的な位置づけです。今回の仮定をそのまま実機に適用するのは、避けましょう。

参考

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最後に

撹拌槽ジャケット下鏡の伝熱計算の考え方を紹介しました。

基本的には伝熱要素として考えてはいけません。

仮に含める場合には、流速という視点で胴部との比較においてある程度絞り込みができるという、お試し的な内容です。

実機にそのまま適用するのは避けてください。

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