化学設備のユーザー”立会検査”の方法と順番 静機器・動機器 現場の気密や撹拌検査から初めて最短で検査を終わらせよう!

立会検査化学設備メーカー

化学設備をメーカーに製作依頼したときに、ユーザーによる”立会検査“を行います。

完成検査とも呼ばれます。

立会検査は発注者による品質チェックという位置づけです。

化学工場向け設備の品質を担保できる唯一の機会といって良いでしょう。

機電系エンジニアが行う立会検査についてまとめてみました。

立会検査では基本的に問題が起きません。

新人の研修目的や出張を楽しむ目的の方が強いでしょう。

・・・最近ではオンライン検査も増えてきましたね。

監督官のイラスト(男性)

静機器

静機器としてはタンクや熱交換器が立会検査の対象となります。

化学工場の立会検査というと9割以上が静機器でしょう。

外観検査

化学工場向け設備のすべての立会検査で行う検査が外観検査です。

何となく設備の概観を見て、ヨシ!

というわけではありませんよ。

概観ではなく外観です。

ここ大事。

  • 溶接線がきれいに出ているか
  • 著しい汚れや変形がないか
  • 異物が混入していないか

概観という意味では何となく全体を眺めて終わりそうですが、外観という意味では溶接線も対象になります。

とはいえ、溶接線が汚くても否定することはほぼできません。

アンダーカットやオーバーラップが著しい場合に限定されるでしょう。

そういう見た目のチェックもユーザーが気にしているということは、メーカーに意識付けるために外観検査は存在します。

寸法検査

化学工場向け設備のすべての立会検査で行う検査に寸法検査があります。

外観・寸法は検査の基本中の基本ですね。

タンクにとって重要な寸法は径・高さ

板厚も重要ですが、測定を真面目にしているユーザーは少ないでしょう。

ミルシートを信頼する場合が多いです。

磁気式の厚さ計を使えば測定は可能ですが・・・。

ミルシートだけだとごまかすことがいくらでも可能なのです。

現にこれで大きな品質問題を起こした会社がありましたっけ…。

径・高さ・板厚という主要情報以外にもノズル位置・ノズル口径・付属品取付位置なども確認しましょう。

ここまでチェックしていれば細かくチェックするユーザーですよ。

気密検査

静機器を扱ううえで漏れがないことを確認するために気密検査を行います。

配管の気密検査と発想は同じです。

気密検査は漏れ検査水張検査は耐圧検査という位置づけです。

よく誤解するケースが多いので注意しましょう。

気密検査はフランジ等の接続部や溶接が適正であるかどうかを検査する目的です。

空気という密度の小さな物質を使うことで、細かな欠陥簡易測定することが可能です。

空気よりも軽い物質、例えば水素などを扱う設備には、気密の方法も考えないといけません。

一般的な危険物貯槽なら空気で十分です。

配管の気密検査と同じく、圧力計とせっけん水を使って検査をします。

気密検査では大型マンホールなどの漏れやすい箇所から漏れることが、ごくまれにあります。

水張検査・水圧検査

タンクの強度が確保されているかを確認するために水張検査・水圧検査を行います。

大気圧貯槽なら水張検査、耐圧貯槽なら水圧検査という形になります。

タンクに漏れは起こらないが、圧力をかけると変形する恐れがあります。

大気圧貯槽なら圧力を張ることはありませんが、貯槽内に危険物を貯留するため貯槽中の水頭圧分の圧力が、側板や底板に作用します。

この力を受けても、変形等が起こらないことを確認するのが水張検査。

危険物の大半は水より比重が軽いので水を張ることで高圧側の検査が可能です。安全側。

動機器

動機器の検査でも静機器と同じように、外観・寸法・気密などの検査は行います。

動機器の検査は、この静機器の検査に追加するものです。

検査項目数が増える分だけ、外観・寸法・気密の検査は相対的に低くなります。

装置のサイズの面からも外観・寸法・気密に割く時間は少ないので、重要度が下がっていきます。

動機器にとって重要な検査項目は電流・温度・振動・騒音などです。

電流

動機器は一般に電気を使って動かします。

電気特性の情報は検査項目として必要なことは言うまでもありません。

モーターとして、以下の特性データが挙げられます。

  • 電流
  • 電圧
  • 周波数
  • 極数
  • すべり

この辺りの情報は、モーターメーカーが検査成績書として提出してきます。

動機器メーカーはモーターメーカーからモーターを購入して、それを設備にくっつけるだけ。

設備を組みつけた後の検査で、モーターメーカーの成績書のデータと相違ないかを確認します。

発注者の立会検査でも、基本的に同じです。

測定は昔ながらのアナログな方法です。

実験で行う方法と同じ。

テスターを使ってアナログデータを読み取り、記録する。

大手メーカーなら、専用の実験装置がありデジタルデータとして保存できるかもしれませんが。

設備投資にかけるお金がない日本の製造業では、望み薄です。

逆に専用の実験装置があるところは、売り上げがよく現場のことを考えてくれる会社と言えるでしょう。

そういう目で工場見学をしてみると、面白い発見があるかもしれませんよ。

温度

動機器の検査で最も時間がかかる検査です。

設備を動かしていくと、当然ながら温度が上がります。

モーター・軸受が特に重要

一般に、動かしてから設備の温度はどんどん上昇していきます。

温度が高くなると、周囲の空気に向かって熱が放散しようとします。放熱です。

動機器への入熱量 = 空気中への放熱量

が一致するまで、温度は上がり続けます。

ここまでに約4時間は掛かります。

動機器の検査をすると、最後はこの温度検査の待ち時間で手持ち無沙汰になることが多いですね。

工場見学・景気の話・雑談をしても時間が余ります。

振動

動機器である以上、設備が動いて振動が発生します。

これが許容値以内であることを確認します。

軸振れを検査として上げる人もいますが、厳密には振動です。

軸振れは、動機器の振動において最も重要なシャフトのみに視点を当てています。

軸受・シャフト・軸がちゃんとセットされているかどうか、という見方です。

振動というと、シャフト系列とケーシングもちゃんと固定されているかを見ます。

振動という表現をする場合、動機器という設備一体を見ています。

運転を始めてから、任意の時間に振動計を一瞬当てて測定するだけ。

普通は合格しますので、検査はあっという間に終わります。

こういった背景もあり、振動検査はあまり重視されていません。

騒音

動機器の検査としては、振動よりは騒音の方がやや重視されます。

というのも振動よりも人間の五感で簡単に分かるからです。

運転時にも騒音異常の発見は比較的簡単。

うるさい

これだけですからね。

立会検査としては、設備から一定距離(1mなど)離れた場所で、騒音計を当てて測定します。

振動と同じく、運転を始めてから任意の時間に測定できます。

振動と同じく検査は一瞬。

騒音は現場の作業者に影響が出たり、地域住民への影響が出るという意味で、

振動よりも問題になりやすいです。

検査の順番

立会検査は検査項目がおおよそ決まっています。

通常の慣例では、以下の順番で行うでしょう。

  1. メーカーの工場に入る
  2. 打ち合わせ机で書類検査
  3. 工場内で検査
  4. 休憩
  5. 工場内で検査

効率的な検査を意識しない発注者や受注者なら、この慣例に従うでしょう。

慣例なので破壊すべきですね。

というのもこの検査方法だと時間がちょっと延びる方向だからです。

1基の撹拌槽で6~7時間かかることもあるでしょう。

Time is money

時間はできるだけ削減したいですよね。

私が行う検査の順番なら4時間もあれば完成します。

効率的ですよ。現場向きですよ。

気密・水張検査

立会検査では気密・水張検査を最初に行いましょう。

検査を効率的にするコツ。それは真っ先に現場に行くこと。この思想が大事です。

現場主義。現場第一。

徹底して現場に行きましょう!

不要不急の業務で電話や声掛けを嫌う私であり、テレワークを推進する派ですが、

現場で仕事をするときは徹底して現場に寄り付きます。

現場での工事管理・運転管理の経験から来る癖みたいのものですが ^ ^

メーカーさんの工場に入り、書類検査なんてしている時間がもったいないです。

メーカーさんは気密検査や水張検査のために、前もって準備してくれています。

ユーザーの検査が終わった後に、他の作業があります。

ユーザーとしてはメーカーの作業を止める方向の行動は避けるべきです。

気密検査や水張検査が終わると、圧抜き・液抜きを行い、乾燥・酸洗浄・塗装などの仕舞作業があります。

気密検査や水張検査を早く終わらせるほど、これらの作業に掛かることができます。

気密検査や水張検査が終わった後に、ノズルを開放して内部確認をすることも多いでしょう。

ノズルを全数盲フランジ処理をするわけではないので、開放ノズルがあるはずです。

そこから内部を確認する作業は、外観検査の一環として大事。

このためには、気密検査や水張検査を完了しないといけません。

連続運転

静機器でいう気密・水張検査に対して、動機器では連続運転を優先させましょう。

連続運転は最低でも4時間くらいは掛かりますからね。

気密と連続運転の両方を行うような設備なら、気密を先・連続運転が後になります。

ここがボトルネックになるので、真っ先に取り組みましょう。

寸法検査

寸法検査は測る箇所はそれなりに多いですが、1つ1つの測定は10秒掛かりません。

気密検査や水張検査の空き時間で余裕で対応できます。

  • 気密検査ならせっけん水を掛けている間
  • 水張検査なら水抜きの間

この作業のために、待ち時間が発生します。

せっけん水を掛けている間にも、測定が必要な箇所の50%くらいは測定可能ですよ。

気密検査スタートから立ち会って30分待ち時間を設定するならば、

その30分の間に寸法検査は確実に完了できます。

とにかく気密検査・連続運転が優先です。

書類検査

立会検査で最も不要な検査が書類検査。

紙の書類をテーブルに並べてあって、それに目を通す検査です。

事前に配布していれば終わり。ゼロ秒で終わります。

しっかりしたメーカーさんなら資料を事前に準備したり配布したりしてくれます。

そうではない会社なら、検査当日になってやっと検査書類が配られます。

メーカーの実力を見定める一つの材料となります。

最後に

化学工場向け設備の立会検査について解説しました。

静機器・動機器について、外観・寸法・気密・水張・連続運転・温度・振動・騒音などの測定項目があります。

検査時間を最短にするために書類検査は後回しにして、時間のかかる気密・水張・連続運転を優先させましょう。

この記事が皆さんのお役に立てれば嬉しいです。

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