建設業の問題が最近頻発しています。
過労死は残念ながら今に始まったことではないですし、少子高齢化の問題も昔から話題になっています。
この影響を自職場でもそれなりに感じているはずなのに、建設業は規模が大きいから何とかしてくれるだろうと期待している人が、化学プラントのオーナー側には相当数います。
経営層側は、日本の社会問題にも関心を寄せるので、プラントの建設についても配慮をします。
一方で、担当者など若手の方がこの意識は低め。
時代はとっくに変わっているのに、変化に取り残されやすい若手エンジニアを対象として、プラントの建設について考えたいことをまとめました。
現在の状況
まずは、現在の建設業の状況を、昨今のいくつかのニュースから把握していきましょう。
建設業の過労死
過労死というと電通の件が、残念ながら昔から問題になっていて、今でも解決されていません。
2023年7月にも清水建設の問題が起きていますね。他にもゼネコン関係での過労死は起きています。
建設業は3K作業の典型例のイメージが強く、厳しい肉体労働。
スーパーゼネコンのような超大手は、この辺りのケアをしっかりしている・・・と期待していたのに、過労死問題が起きるたびに、変わっていないことにがっかりする人も多いでしょう。
上が変わらないと、中小企業もなかなか変われないですからね。
見えないところで相当の無理をされている方が多いということを、これらのニュースで知っておかないといけません。
働き方改革
2024年には働き方改革が、建設業にも適用されます。
運輸・物流業にも適用されます。
働き方改革自体は2019年から施工されていましたが、建設業などは諸々の事情で2024年まで延期されていました。
もう待ったなしの状態。
それでも、過労死のニュースを聞くたびに、こう思います。
本当に変われるのだろうか?
これを純粋に心配していると思ったら、実は違ったりします。
どうせすぐには変われないから、今まで通り無理を依頼してもいいだろう
こんな風に甘く考えてしまう人が居ます。
半導体需要
コロナ禍以降、半導体需要はすごいことになっています。
九州の熊本では半導体工場の建設ラッシュが起きていて、建設業はとても忙しいです。
作業員が足りないので、周辺地域の会社からヘルプをもらっている会社もあります。
インフラの老朽化
道路・橋・トンネルなどのインフラ関係の老朽化も問題になっています。
高度経済成長期に立てて、50年以上経って問題化。
数が多すぎて、一気に変えることはできない。
人手不足で更新スピードはますます落ちていく。
建設業が忙しくないわけありませんね。
大阪万博
こうした状況の中で、大阪万博が話題になっています。
それはそうでしょう。
資材費や人件費の高騰もさることながら、東京オリンピックのようにいろいろな問題が起きて、建設が遅れていって、その割にメリットが大きくはない。
万博を考えるくらいなら、他の工事を受注した方が良い。
こう考えても決しておかしくありません。
化学プラントの場合
さて、建設業が以下に大変な状況にあるかを確認したうえで、化学プラントへの影響を考えてみましょう。
これはオーナーエンジニアはちゃんと認識して起きたいことです。
人数が少ない業種ほど危険
プラントの建設でもいろいろな職種が入ります。
配管や土建のような人数の多い業種は、割と影響を受けにくいです。
断熱や据付のような人数の少ない業種ほど、影響を受けやすくすぐに致命的になります。
特に作業員を全国から寄せ集めるような業界ほど、コントロールが難しくなるでしょう。
オーバーエンジニアでこの辺の実態を正確に理解して、発信している人はほとんどいないはず。
特殊資材ほど危険
資材も特殊資材ほど影響を受けやすいでしょう。
一昔前にハイテンションボルトの納入が話題になったように、比較的目立たないけど一般的に使われている資材ですら、影響を受ける世界。
フッ素樹脂や高級金属のような特殊材は、すぐに影響を受けることになります。
今でも問題が起きているけども、後手後手の対応をしている調達が多いはず。
問題を正確に理解して、予備を持ったり多めに手配したりするスキームを確立している会社は少ないでしょう。
ということは、問題になると各社が慌てて対応するので、さらに問題が大きくなるはずです。
後回しにされやすい
化学プラントの建設は、もしかしたら後回しにさせられかねません。
もっと儲けが出やすい仕事に建設会社が集中して、見積辞退ということも増えています。
東日本大震災の時に銅線ケーブルの納期が後回しにされたというように、作業員の手配もコントロールが掛かってしまう未来があるかも知れません。
昨今では学校などへのエアコン需要のために、プラント内のエアコン工事が後回しになりましたが、これは本来は防げたこと。
世間の情勢をちゃんと理解して、前もって対策を取っていれば済む話なのに、いつもと同じようなリードタイムで依頼して間に合わなかった。
こういう展開も増えていますね。
化学プラントでやろうとしていること
化学プラントの中で建設会社との対応で、変えようとしていることを紹介します。
発注社も受注社も会社としては真剣に取り組んだとしても、担当レベルでは急には変わらないので、
このままでいいのかな?
って甘えてしまいかねません。
意識して、前もって対応できるようにしましょう。
余計な負担削減
プラント内で工事をする人に対して、余計な手間となる作業を極力減らそうとしています。
例えば典型例が現場監督者。
現場で安全を指揮する立場にある監督が、書類作成や会議などに追われて現場に顔を出せないという光景を見かけます。
残業規制がなければ、事務仕事を夜に回すことになりますが、これが過労死を呼びます。
逆に残業規制を進めると、現場に顔を出す機会が減ります。
安全が優先されるべきことですが、安全意識向上のための事務仕事が、現場を疎かにする。
こうなってしまうと元も子もありません。
手続きが面倒な会社には、人をなるべく派遣したくないと思う工事会社は増えてくるでしょう。
その意味で、プラント内の狭い世界での関係でなくて、他社より良い関係環境を作れる会社が生き残っていくのだと信じています。
余裕を持った日程
工期工程の余裕は相当しっかりと持たないといけません。
土曜日・日曜日の工事を前提とした工程は成立しなくなるでしょう。
据付のように今でもボトルネックになる職種もあれば、今後ボトルネックになる職種も出てくるでしょう。
今までは適当に工程を決めていても何とか調整ができていたものが、調整要素が増えていくことになります。
全体調整役に求められる仕事の質は、ますます大きくなるでしょう。
というより、これまでと同じように、順調に工事が完成するケースの方が少なくなると思います。
- プラントの各職種の工事を正しく理解している
- 工事会社の置かれている環境を理解している
- 化学会社としてエンジニアリングに期待されていることを正しく知っている
- 調整する要素として何があるか言語化できる
- 各職種に適切なコミュニケーションができる
こういうことができるエンジニアは、ほぼ居ないでしょう。
居ればどこの会社でも重宝されます。
予算は多めにとる
予算は前もって多めにとるようにしましょう。
何でこんなに高いのだ!却下!!!
こういう会社は駄目です。先が明るくありません。
単価の高い会社に人が集まっていって、見積辞退を増やしていくことになるでしょう。
だいたいダメと言っている人はこの数年だけ乗り切れば良くて、問題が大きくなった時にはその場にはいない偉い人が多いですよね。
予算取りを時間を掛けてしっかり細かく考える、というのもすでに時代に合わないでしょう。
費用高騰をどれだけ見越してバッファを取るか。
こういう思考転換が極めて大事です。
予算達成が必至、という考え方自体を変えないと辛いでしょう。
予算が足りなくても補填してもらえる仕組みを作るか、難しければバッファを大目に見るというアクションが妥当です。
高騰は論理的な説明をすれば、まともな人は理解します。
例えば、以下のような一般的なデータを基に、過去から何割増加したものが当たり前、という主張が望ましいでしょう。
これでも納得できないという人が居れば、ちょっと残念ですね・・・。
システム化
人手不足を補うかのように、DXなどシステム化に取り組んでいます。
これは個人的にはほとんど上手くいかないと思っています。
データ化・データの連携・見える化・・・
どこでも誰でも見れるという意味では効果がありますが、その結果を使いこなせる人が居ません。
経営層などトップクラスが実態を把握するには役経つかもしれませんが、そういう人は新システムを使いこなせません。
その割に、データ化には人手が必要です。
日々の工事手続きなど毎日行う作業でも手入力が求められて、パソコンが苦手な人が時間を掛けながら入力。
紙に書いた方が速いのに・・・。
よくある展開が、今後も続くことでしょう。
参考
関連記事
最後に
建設業の最近の問題から、プラント工事への影響を考えました。
少子高齢化・過労死・働き方改革・半導体需要・インフラの老朽化など建設業の問題は山積みです。
この影響は化学プラントの工事でも確実に影響が出ます。
大きな会社ほど影響が見えにくく、起きたときにはどうしようもなくなるでしょう。
余計な負担を削減して、余裕を持った工期を取り、適切な予算を配分すること。
仕事の本質みたいな部分にしっかり取り組みましょう。
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