化学プラントの設備系エンジニアである生産技術(Production Engineering)にとって、きついと感じることを紹介します。
生産技術の職がきついと一般に言われますが、化学プラントも同じような傾向にあります。
人や経験年数によって感じ方はさまざまですが、共通する悩みもあります。
個人レベルではどうやっても慣れずに、諦めて許容するしか無いかもしれません。
逆にこれが許容できれば、化学プラントの設備エンジニアとしてやっていくことは十分可能ということです。
設計と保全でそれぞれ3つ選びました。
設計
化学プラントの設計でも機電系の設備設計を対象にします。
組織が独特なので、イメージしにくいかもしれませんね。
純粋に分からない
化学系の設備エンジニアの設計チームが最もきついと感じるのは、これでしょう。
分からない
とにかく色々なことが分からないまま、突っ走るしかないのが設計です。
- 高度なシミュレーションをするわけでもなく
- ちょっとした物理計算は前提条件によって左右され
- 現場の使い方を知れるわけでなく
- 化学なんて当然のように分からず
- 化学設備なんてこれまで見たことすらなく
- プロセス的な使い方も分からない
- それでも機械のプロとして仕事を受けないといけない
- 設計すべき項目が多すぎて優先順位を付けれない
- 設備を設置しても、それが上手くいったかどうか確認する時間がない
取り組むべきことが多いことだけは分かって、その壁の高さに挫折してしまうでしょう。
この壁を打ち壊すには、知識が欠かせません。
5年のオーダーでの時間が掛かるでしょう。
これは仕方ありません。
過去に積み上げてきた設計ノウハウや基準・規制の類が多すぎるからです。
実務で本当に必要なところに限定しただけでも、習得速度を高めるために情報共有を進めても、5年は見ておきたい。
人数の少ない設計だと、設備の設置が終わった途端に次の設備の設計に取り掛かるので、設計した設備が適切に動いているかどうか確認する時間がありません。
これはPDCAを回せないという意味でとても重篤。
分からずに自信がないままとりあえず設計をして、それが上手くいっているか分からずに、また分からない設計に取り組む・・・。
新入者でも転職者でもきついでしょう。
社内調整
設備エンジニアの設計者は社内調整が結構あります。
- 土建・電気・計装との調整
- 製造現場との調整
- 図面屋さんとの調整
- 設備メーカーとの調整
- 購買調達との調整
- 上司への報告
設備のように大きな金が動く仕事では、1人で決めることはできません。
必ず関係者との擦り合わせが入ってきます。
面倒です。
いくら経験を積んでベテランになっても分からない部分は残るので、擦り合わせのために仕事を依頼しないといけません。
そこで仕事がストップしてしまい、自分のペースでは進めれません。
特に設備メーカーはストッパーとして機能しがち。
ベテランでも面倒だと思うことを、経験の浅い人が面倒だと思わないわけがなく・・・。
機械設備としての知識が低い場合は、周りに振り回されます。
土建・電気・計装の各担当の言っていることが理解できなかったり、製造現場から無茶振りをされているように感じたり・・・
仕事内容を理解できていないうちは仕事を丸投げするだけの係になり、板挟みの状態になります。
中間管理職とは違う意味での板挟み。
きついですね。
失敗すると大変
設備設計で失敗すると、とてもきついです。
保全や運転の知識がない中でトラブルに遭遇すると、何をどうしていいのか分かりません。
設計の失敗だから、設計者がちゃんと対応をしてほしい
こういわれると、何をどうしていいか分からず目の前が真っ暗。
設備設計で失敗すると、後々まで大きな禍根を残すことになったり、火災爆発などの大事故にも繋がりかねません。
それだけきついプレッシャーを受けることでしょう。
プロセスエンジニアはさらにきついプレッシャーを受けるのですが、設備エンジニアはその辺の状況が見えにくいです。
殻にこもってしまうパターンです。
保全
保全というと、製造現場の設備管理やメンテナンスマンのような工具を持って現場で補修作業をするイメージでしょう。
弊社の場合、そういう作業は一式外部委託をしています。
保全というと工場の長期的な保全計画を立てたり、安全安定運転のために必要な設備や部品をそろえる準備をしたりします。
手配屋とか社内調整と言われがち。
世間一般の保全から見ると、楽に見えるでしょう。
それでもきついと感じる部分はあります。
呼び出しがある
保全できついのは、呼び出しでしょう。
夜間・土日祝日関係なく呼び出しがありえます。
これはきついです。
- 夜に安心してお酒を飲みにくかったり
- 休日に長期旅行に行けなかったり
- 製造現場からは相当詰められるような表現をされたり
実は製造現場も非常に高いプレッシャーを受けていて、何とか再開したいから保全エンジニアに頼んでいる格好ですが、それをなぜか見えにくくする人が多いようです。
ここで心が折れる保全エンジニアは相当いるでしょう。
幣工場では割とはっきりと「本当にごめん。頼みます。」という、低姿勢で依頼を受けることが多いですけど・・・。
呼び出しがあると製造現場も現場に駆け付けないといけないので、苦労としては同じようなもの。
お互いに労わり合う関係なら、きついと感じることが少なくなるでしょうが、それでもきついです。
なぜかゴールデンウイークとか正月にトラブルが起こりますからね・・・。
常に現場にお伺い
保全エンジニアは決定権がほぼなく、常に現場にお伺いを立てないといけません。
これもきついです。
- 設備的にはこれしか方法がない
- 設備のことを知らない製造現場に毎回説明しないといけない
- 別の案がないのか常に検討させられる
早く完了させて次の仕事に掛かりたいのに、製造現場がストッパーとして働いてしまいます。
時間だけ伸ばして、期限ぎりぎりに質問や追加の依頼が来ます。
製造現場に振り回されるときついです。
ベテランの保全マンになっても、製造現場が最終決定をする組織であれば状況は変わりません。
製造現場の権限が薄く保全マンに決定権がある組織なら楽そうに見える表現ですが、これはこれで大変です。ちょっとしたトラブルがあっても全部保全マンに依頼して、自分たちで解決しようという意識が育ちません。
期限に迫られる
保全エンジニアはとにかく期限に迫られます。
- 設備が壊れた!すぐに直してほしい!
- SDMの期間が長すぎ!1日でも短縮するように!
- 急だけどこれも追加でよろしく
どれも保全エンジニアを振り回すことになります。
特に手配師となる保全マンなら、都度誰かに頭を下げないといけません。
きついです。
そして、無事に解決しても感謝されることが多くはなかったり、できて当然だと思われていたり・・・。
できなかった場合には「役立たず」のレッテルすら貼られかねません。
若いうちなら気力・体力でカバーできても、年を取ればどこかで心が折れるでしょう。
参考
生産技術系の仕事は化学プラントに限らず製造業では似たような環境にあります。
作る物が違うだけで使う人は似ている。
そう考えると、典型例は書籍である程度把握できそうですね。
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最後に
化学プラントの設備エンジニアできついと思う箇所を設計と保全でそれぞれ3つ紹介しました。
設計は分からないことが多く、社内調整ばかり、失敗したら詰められる。
保全は呼び出しがあり、製造現場に常にうかがわないと行けず、期限に迫られます。
どちらも解決することは難しく、慣れることはないものもあるでしょう。
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