PR
計装設計

導電率計・pH計・酸素濃度計・ガス検知器こそ化学プラントでは大事

特殊計器 計装設計
記事内に広告が含まれています。This article contains advertisements.

特殊計器(instrument)について解説します。

ここでは、特殊計器は導電率計・pH計・酸素濃度計・ガス検知器などを指します。

液面計温度計流量計圧力計ロードセル以外の計器が特殊という扱いです。

バッチ系化学プラントのフィールド計器として主要計器以外を、まとめて特殊という位置づけで解説します。

計装エンジニアや製造部から見ると当たり前で重要な計器ですが、機械エンジニアは軽視しがちです。

というのも本人が接する範囲が少なく、トラブルが起きても対応するわけでないから。

私も設計段階で多少関わることがありますが、数はとても少ないです。

導電率計

導電率とは言葉どおり、電気通す度合いを示すものです。

導電率

中学の電気回路の勉強でオームの法則を学び、電気抵抗の存在を知りました。

高校の物理の勉強で、電気抵抗を構成する要素が、導線の距離・断面積・抵抗率で決まることを知りました。

この抵抗率の逆数が導電率。

電気を通しやすいから導電。電気を通しにくいから抵抗。

導電率の単位はS/mと言います。マニアックです。

体積固有抵抗

プロセス屋や機械屋は導電率よりも体積固有抵抗という表現に接することが多いでしょう。

  • 導電率の逆数が体積固有抵抗
  • 体積固有抵抗はΩ・mの単位。S/mの逆数。
  • 値が高いほど電気を通しにくい静電気が溜まりやすい。

静電気というワードがでています。

このワードは化学プラントでは機械屋でも十分に考えないといけない分野。とても大事です。

ここでは体積固有抵抗のグレードだけ示しておきましょう。

\(10^{-6} Ω・m\)以下導体
\(10^{4}~10^{-4} Ω・m\)半導体
\(10^6 Ω・m\)以上絶縁体
$$

大体の目安ですが、体積固有抵抗と導体や絶縁体の分類は上のとおり。

この中に半導体というワードも出ています。

導電率に絡んで、色々な分野に発展しますね。

測定原理

導電率計は、電気抵抗を測定するだけですので、測定液に電気を通して抵抗を測定すればOK。

検出部のセルが特殊なのでしょう。

そこは知る必要はありません。

導電率が物質の濃度に依存するということが、原理的に抑えておいていい知識。

分液

バッチ系化学プラントでは、導電率計は分液用に非常に多く使います。

分液はバッチ反応では非常に日常的に使います。

分液は水と油を分けるのが普通。

水は電気を通し、油は電気を通さないのが普通。

これを液面計の指示値や直視式液面計で監視するのが確実ですが、補助計器として重宝します。

分液で失敗すると、後処理が大変だからです。

油が製品で、水側に送ってしまって回収ができなくなると、単純に製品量が減ります。

その単位操作を人の手だけに頼るのはリスキー。

導電率計はその手助けになります。

最後に、水と油の体積固有抵抗を比較してみます。

海水\(10^{-1} Ω・m \)
トルエン\(10^{12} Ω・m \)

水の代表例として海水、油の代表例としてトルエンを選びました。

10^13倍という圧倒的に違う数字。

導電率計の精度が多少違っても、これなら確実に検知できます。

問題は中間層。

これがどういう値で検出されるかが、プロセスによって異なります。

そういう意味でも補助計器としてしか使えないのが現状でしょう。

もしくは計器で検出する分はロスとして割り切るか。

pH計

pH計も化学プラントではよく使います。

pH

みなさん、pHを知っていますか?

機械屋では高校化学で学んでいるはずですが、興味がなくて知らない

という残念な人がかなり多いです。

それでもpHが低ければ酸、高ければアルカリということは知っています。

弱酸性・弱アルカリ性の洗剤などが話題になってきた、この20年くらいで徐々に浸透しています。

良い傾向。

ところが、学問的な知識として知っている人が非常に少ない。

pHという表記が一般的なのに、PhとかPHとか書いて疑問に思わない人間が多いこと

残念です。

pHはH+イオン濃度として捉えるのが一般的です。

この値の大小で、溶液内の反応進行を間接的に評価できるので、化学プラントでも非常に重宝します。

プロセス中でも反応容器につけて、反応の終点確認や条件出しに使います。

ガラス電極式

ガラス電極式pH計が一般的に使われます。

2種類の異なったpHの液をガラス薄膜の両側に置くと、pH差による電位差がガラス薄膜に発生します。

理屈は非常に簡単。

装置はやや複雑。

下のような装置構成になります。

pH計(instrument)

pHは直接測定できるわけではなく、間接測定です。

比較電極KCl
ガラス電極pH7の液体

比較電極測定電極の2つを使います。

電極にはあらかじめpHが分かっている液を入れています。

片方はKCl(塩化カルシウム)が一般的です。

もう片方は内部液として通常はpH7の液体が入っています。

この辺は、機械屋はあまり知らなくてもいいことでしょう。

機械屋にとって重要なことは、液を測定する部分にガラスを使っていること、この1点です。

設置場所

pH計の設置場所として、バッチ系化学プラントでは2種類あります。

タンク内タンク外です。

タンク内

タンク内にpH計を付けるときの問題として、タンク液面が一定でないということがあります。

pH計は大きな保護管を付けて、タンクの下面まで浸さないといけません。

これと同じ発想が温度計ですね。

ステンレスの容器なら温度計タンク側面に設置できますが、グラスライニング容器なら温度計はタンク天板から長いパイプを使って設置します。

これと同じことがpH計にも起こります。

温度計と違う点として、ステンレスでもタンク天板から取らないといけないということがあります。

温度計は隔壁としての保護管を付けることが可能ですが、pH計は液を直接測定する以上は保護管は不可能。

タンク側面にpH計を付けると、運転時のpH計の取り外しが非常に危険な作業になり、普通はしません。

タンクの液がちゃんと撹拌されている条件が必要であり、制約条件となりえます。

タンク外

タンク外に設置する場合、タンク周りの循環配管につけます。

pH計は、総合的にタンク内よりはタンク外に設置する方が有利です。

配管内の液量はタンク内に比べて少ないので、測定面では非常に有利

循環はポンプで掛けるため、ポンプの圧力が高かったり変動が大きいと、ガラスが割れるという意味で不利

pH計の保護管の長さや取り外しの作業性を考えると、タンク外の方が遥かに有利

余計な配管スペースを必要とするので、作業空間的には不利

酸素濃度計

酸素濃度計も一部の系統で使用します。

空気中は21%

酸素は誰もが知っている元素の1つでしょう。

人間が生きていく上で欠かせませんからね。

空気中には21%酸素が含まれています。

これは化学プラントでは、酸素欠乏作業時に極めて重要となる数値です。

タンク内に入って清掃点検を行う作業です。

ポータブル酸素濃度計で、タンク内の酸素濃度を測り、21%であることを確認してから、タンク内に入ります。

18%くらいまでは人体に大きな影響はありませんが、管理者は21%少なくとも20%でないとタンク内に作業者を入らせません。

酸素欠乏危険作業を知っている普通の感覚の人なら絶対にそうします。

プロセス系内は5%以下

空気中では酸素は21%であることが普通です。

プロセス内ではどうでしょうか?

火災爆発の危険性を徹底的につぶすために、系内を窒素置換します。

この合格点として酸素濃度が重要。

普通の会社なら5%以下の酸素濃度を基準とします。

必要な酸素濃度はプロセス液によって変わります。

少なくとも一般的な危険物4類の油であれば、大体が10%前後です。

そこで、安全率も加味して分かりやすい数字として5%を選ぶのは、現場での管理上は非常に合理的。

爆発範囲の広い水素などでは、例外的にこの値を厳しくします。

こういう場面では。窒素置換を他の系とは重み付けを変えていたりします。

磁気式

磁気式の原理は磁気風です。

この辺は、化学プラントの計装エンジニアでも理解している人は少ないので、機械エンジニアはあまり理解していなくて十分です。

私も覚えているわけではありません。

  • 酸素を含む測定気体を磁石で引っ張る
  • 測定気体を加熱
  • 酸素は加熱すると磁化率が低下
  • 磁化率の違いにより、磁気風が発生
  • 磁気風をホイートストンブリッジ等の抵抗変化として検出

酸素濃度に比例して、磁気風が発生し、磁気風により電気抵抗を変える。

というのが簡単な仕組みです。

気体を加熱している以上、危険性を伴います。

ドレン・ちりほこりなどの異物を極端に嫌います。

嫌っているのは、実は個人的な理由だったりしますけど…。

ジルコニア式

ジルコニア式の酸素濃度計は、ジルコニアに酸素を通すことで導電性を示すイオン電導という原理を使います。

ジルコニアはセラミックの1つです。

  • 酸素を含む測定気体を加熱したジルコニアセラミックに遠す。
  • 加熱した酸素はイオン化して、イオン電導が起こる
  • イオン電導による起電力が、酸素濃度に比例

でました。加熱。

磁気式と似たような原理に見えます。

ということで、ドレン・ちりほこりに弱い点も同じです。

セラミック中を気体が流れるため、異物に弱いのは当然でしょう。

ガス検知器

ガス検知器とは一般に、可燃性ガス検知器を指します。

可燃性ガス検以外に、特定のガスに特化した検知器を付けることも可能です。

ポータブルガス検知器には、可燃性ガス・酸素・窒素・毒性ガスを測定できるタイプもあります。

現場に測定する検知器ではそれぞれ単独で考えます。

現場では、可燃性ガス検に対する需要が圧倒的に多いです。

化学プラントでは引火爆発の可能性がある消防法危険物4類の薬液を非常に多く扱います。

化学プラントはストリップ工場が多いのは、自然換気を狙っているから。

壁で囲まれた部屋があると、危険物のガスが滞留する恐れがあります。

比重が大きいので、下の方に溜まっていきます。

危険物のガスが漏れた時に、即座に検知するために可燃性ガス兼を部屋の中にセットします。

漏れていた場合には部屋の中に酸素が足りない状態になっているかもしれないので、気が付かずに部屋の中に入ると窒息する恐れがあります。

気が付かずに部屋の中に入り、火花を発生させる要素ができるために、静電気による着火が起こる可能性もあります。

ガス検知器が作動すれば、赤いランプで表示するなどして、部屋の中に入る前に気が付くような仕組みにするのが一般的です。

接触式

接触式は、ホイートストンブリッジの原理を使っています

ホイートストンブリッジ中にある触媒の中に可燃性ガスを通して燃焼させて、抵抗部分の温度上昇を抵抗値として検出します。

端的に書くとこういう表現ですが、要素が若干多いですね。

分割していくと非常にシンプルですよ。

可燃性ガスを加熱燃焼

ガスに熱を加えると燃えます。

この熱源として、触媒を使います。

触媒を通すと燃えやすいのでしょう。

触媒についてはあまり詳しくないので、ここは省略。

検知対象のガスの燃焼という意味では、酸素濃度計と同じ。

温度によって電気抵抗が変化

燃焼により温度が上がった抵抗の性質を利用するのは、抵抗温度計と同じ。

温度上昇により金属中の自由電子の移動範囲が広がるので、抵抗が増える要因になります。

変化する電気抵抗を測定

ホイートストンブリッジを使うのは、酸素濃度計や抵抗温度計と同じ。

電気抵抗の変化を、ホイートストンブリッジの検流計で測定します。

半導体方式

半導体方式も、接触燃焼方式と構成は似ています。

電気抵抗の部分を半導体にしています。

半導体の高温の表面で可燃性ガスを吸脱着して、半導体中の自由電子が増減し、抵抗値を変化させます。

ここでも高温という加熱に関する情報が出ていますね。

参考

最後に

バッチ系化学プラントの機械屋の範囲内で特殊計器についてまとめました。

液面計・流量計・温度計・圧力計以外の計器として導電率計・pH計・酸素濃度計・ガス検知器を紹介しました。

導電率計やpH計はインラインで使うために機械屋も知っておいた方が役に立つでしょう。

化学プラントの設計・保全・運転などの悩みや疑問・質問などご自由にコメント欄に投稿してください。(コメント欄はこの記事の最下部です。)

*いただいたコメント全て拝見し、真剣に回答させていただきます。