“反応器“の材質をステンレスにするかグラスライニングにするかという設計思想をまとめます。
バッチ系化学プラントならではの課題でしょう。
グラスライニングを使うことが多いでしょうが、ステンレス派の意義もちゃんとあります。
使い分けをちゃんとしましょう。
ステンレスに対してガラスライニングがどういう特徴を持つかという目線で揃えます。

耐食性
耐食性は一般にはガラスライニングの方が有利です。
耐酸性はガラスライニングが圧勝です。
逆に中性~アルカリ性ならステンレスにした方が良いです。
とはいえバッチ反応のように反応プロセスが1つに決まっていない場合に設備に汎用性を求めようとしたら、プロセスを酸系で固めた方が良いと考えます。
ガラスは純水には耐えませんので、ちょっと注意しましょう。
伝熱
伝熱性はガラスライニングの方が不利です。
これはガラスの伝熱性が悪いから。
伝熱性を犠牲にしてでも耐食性を持たせるという思想が、ガラスライニング側には必要です。
逆に耐食性はそれなりで伝熱性を優先させる場合は、ステンレスが必須でしょう。
耐圧
耐圧性はガラスライニングの方が不利です。
ガラスライニングはフランジに限界があるからです。
バッチ系化学プロセスでは大気圧を超える反応はほぼなく、ガラスライニングの出番は多いでしょう。
逆に大気圧や負圧で完成するような反応プロセスを作っているというほうが正しいです。
耐熱
耐熱性はガラスライニングの方が不利です。
高温になると(温度差が付きすぎると)、ガラスは割れます。
バッチプロセスだとバッチ内での温度変化も考慮しないといけません。
その分だけ高温にしずらくガラスでも使用可能な運転範囲に自ずと落ち着いているかもしれませんね。
例えば温度が100℃を越えるとガラス的にはやや注意が必要となります。
ステンレスではそんな心配はありません。
メンテナンス
メンテナンス性はガラスライニングの方が不利です。
ガラスライニングは常に腐食との戦いです。
腐食速度がどれだけであっても、ガラスの腐食度合いは定期的にチェックが必要です。
ガラスの厚み検査記録を定期的に作っていきます。
ピンホール検査をする場合もありますね。
このほかにも検査ツールは開発されています。
プロセス要因以外にもガラスは劣化します。
- 物を落としてガラスを割ってしまった
- 酸を落としてガラスが割れた
- 静電気でピンホールができた
洗浄や工事でついつい壊してしまった、というパターンです。
手をかけてメンテナンスをしていかなければいけませんね。
それに比べてステンレスはノーメンテナンスに近いでしょう。
無垢のステンレスで容器を作っている場合は、本当にノーメンテ。
クラッド鋼やライニングなどステンレスと他の金属を合わせて使う場合は、劣化していく可能性があります。
アクセサリー
アクセサリー類はガラスライニングの方が不利です。
これは取れる選択肢が多いという意味です。
溶接でかなりの自由度の形状が作れるのがステンレス。
フローパターンも考慮して最適な条件の撹拌機やバッフルを作ることも可能でしょう。
頑張ればサンプリングノズルも製作可能です。
その代わり、流体解析は必要ですし汎用性は犠牲になります。
汎用性を考慮すればガラスライニングの方が有利ですが、プラント設計思想に関連するので一概には言えないでしょう。
エンジニア的にはステンレスで撹拌機やバッフルの形状設計をちゃんとできるようになっておきたいですね(私も勉強中です)
価格
価格は一般にガラスライニングの方が有利です。
これは母材の重量価格の差が大きいから。
サイズが大きいほど、差はでやすいでしょう。
特にステンレスは価格の変動が激しいので、ガラスの方が金額の予測が立てやすいです。
納期
納期はガラスライニングの方が不安定です。
どちらが早いか遅いかということは時々刻々変化します。
でもガラスライニングはメーカーが限定されているので、納期の変動が大きいです。
ガラスライニングの方が好みだけども、価格よりも納期を優先してステンレスというケースは普通にありえます。
最後に
反応器についてガラスライニングとステンレスの特徴を比較しました。
耐食性やコストはガラスライニングが有利で、ほかの指標は軒並みステンレスが有利です。
汎用性を考慮してガラスライニングにする会社もあれば、個別最適的にステンレスを選ぶ会社もあると思います。
どういう思想か個別にチェックして対応したいですね。
この記事が皆さんのお役に立てれば嬉しいです。
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