0.6乗則を化学プラントのプロジェクト投資見積に当てはめてみる ラング係数との関係性

0.6乗則プロジェクト

0.6乗則について解説します。

これはラング係数とセットで設備投資の概算見積で大活躍します。

その使い方を紹介しましょう。

0.6乗則とは

0.6乗則は、設備投資額がプラント能力の0.6乗に比例するという法則です。

これだけ見ても分からないですよね。

0.6乗

プラント能力Xの設備投資額がYであったとき、プラント能力2Xの設備の投資は単純比例の2Yではなくて、2の0.6乗(≒1.52)に比例した1.52Yとなるという法則です。

一般化すると、

$$ Y_2 = (\frac{X_2}{X_1})^{0.6}Y_1 $$

となります。

これは化学プラント建設の経験則d、膨大なデータを集めてわかった法則のようです。

特に連続プラントでよく使われます。

というのも連続プラントはある製品を作るのに製法がほぼ決まっていて、プラントの構成もほぼ決まってしまうから。

世界中どこでも似たような構成になってしまうようです。

バッチプラントならそうはいきません。

作る製品がバラバラでそもそも同じ製品を作る工場の数が少なかったりします。

でも、そんな細かいことは置いておいて、ざっくりした見積をしたいというときには、バッチプラントでも0.6乗則を使います。

どちらかというと、これしか方法がないから仕方ない的な思い切った発想ですけど・・・。

企画
企画

明日までに概算見積をしてほしい!

エンジニア
エンジニア

え・・・時間ないし・・・そうだ!0.6乗則でエイやっと出しておこう。怒られないだろう

こんな感じで見積をするときに使います。

本社
本社

高いな~

企画
企画

私もそう思うのですけど、エンジニアに投資の意識が薄くて・・・

こういう話が裏でされていることはお察しを。

0.6乗則は文字通り0.6乗ですが、ケースによっては多少数値をいじることがあるようです。

0.6~0.8くらいで値を振っている会社もあるのではないでしょうか。

プラント建設への適用例

バッチプラント建設時に0.6乗則を使うケースを考えましょう。

連続プラントのように生産能力ベースでの議論は基本的にはできません。

プラント内にどんな設備を置くかで投資額が決まる世界です。

この場合、ラング係数が活躍します。

設備ラング係数単価数量小計(万円)
反応器A2,000510,00020200,000
反応器BX55X15X
ポンプ10055003015,000
熱交換器50052,50040100,000
固有設備10,000550,000150,000
合計92365,000+5X

プラント建設をする場合は、設備一式を購入することになるのでラング係数が使いやすいです。

プラントサイズが反応器の数でほぼ決まるので、設備を基準にしてラング係数を当てはめます。

反応器Aが例えば10m3で2,000万円と分かっていた場合は、ラング係数をそのまま当てはめましょう。

ラング係数を5としたなら、

5×2,000=10,000万円(1億円)

と結果が出てきます。

未知の設備に対する補完

反応器Bは20m3だけど費用が分からない!という場合に0.6乗則の出番です。

計算式をそのまま当てはめましょう。

(20/10)0.6×2,000=1.52×2,000=3,140万円

これにラング係数をかけて

5×3,140=15,700万円

となります。

全体をまとめると以下の通りです。

設備ラング係数単価数量小計(万円)
反応器A2,000510,00020200,000
反応器B3,140515,700115,700
ポンプ10055003015,000
熱交換器50052,50040100,000
固有設備10,000550,000150,000
合計92380,700
  • 設備の大半の金額が分かっているけど、数個の特殊な設備の額が分かっていない
  • 詳細の見積をメーカーに依頼するほどではない

という場合に0.6乗則で補完するという使い方をします。

全体に0.6乗を適用?

ここで、生産能力が反応器の数に比例すると考えて0.6乗を使うと考える人もいるでしょう。

今回の例では反応器20基に対して365,000万円なので、反応器Bを追加した21基のケースでは、

(21/20)0.6×365,000=1.03×365,000=375,950万円

となります。

数量小計(万円)
反応器A系列20365,000
反応器B1X
合計21375,950

このオーダーでは結果的には大差ありません。

固有設備は外だしして考えるべきだから、反応器20基に対して315,000万円で、21基の場合は

21/20)0.6×315,000=1.03×315,000=324,450万円

これに外だしの固有設備50,000万円を足して

324,450+50,000=374,450万円

数量小計(万円)
反応器A系列20315,000
反応器B1X
固有設備150,000
合計22374,450

結果は大差ありません。

何となく数字遊びをしている感覚になります。

基準となる投資額が良く分からないのがバッチプラントの特徴なので、そこに0.6乗則を当てはめると雑な見積になってしまうと私は考えます。

0.6乗則は類似プラントのデータを集約させたものという前提がありましたよね。

バッチプラントで集約できるほどのデータがあれば良いのですが、そうではありません。

個別の設備にラング係数を当てはめる方が無難でしょう。

設備更新への適用例

バッチプラントレベルでは細かな設備投資レベルで0.6乗則が飛び交います。

プラント内の単一の設備改造や設備更新をする場合です。

部分更新

考え方はプラント全体建設の場合と同じです。

個々の設備に対してラング係数を当てはめます。

例えば反応器Aの10m3が設置されている場所に、20m3の反応器Bを設置する場合の費用を見積もる場合、

(20/10)0.6×2,000=1.52×2,000=3,140万円

5×3,140=15,700万円

という計算結果になることは紹介しました。

個別の設備更新に0.6乗則を使う場合は疑ってかかりましょう。

世間一般で言われている法則通り計算したから絶対に正しい、という訳ではありませんので・・・。

全体に対する影響が少ない範囲で0.6乗を適用するなら目立ちませんが、単一の設備に対して0.6乗を当てはめようとすると誤差が目立ってきます。

設備本体額

10m3と20m3の価格差として0.6乗則を適用するかどうかという判断をしないといけませんが、基本的には問題ありません。

材料費の高騰や労務費の高騰など単価アップの要因がない範囲では概ね合います。

設備メーカーも同じ発想で考えるからです。

ただし製缶会社は割と水物なので注意してください。

ステンレスは割と高騰しやすい材質なので、0.6乗則では効かないくらい高騰するという場合もあります。

工事費

ラング係数を固定化する場合、工事費も0.6乗則が適用されることを前提としています。

これは実は相当怪しいです。

工事費

このように、配管工事と建築工事や電装工事は係数のかけ方が変わってきます。

0.6乗則とはこの辺を何となくまとめたときのことを想定しています。

例えば反応器1個を更新するレベルだと、

  • 干渉物の脱着がどれくらいあるのか
  • 基礎を更新する必要があるのか(建築工事が発生するのか)
  • モーターがサイズアップするのか
  • 計器が追加したりするのか

という細かいレベルでかなり変わってきます。

ラング係数をこんな細かいレベルで適用すべきかという話にもつながります。

もちろんこんな細かい調査をする時間がないからこそ0.6乗則を使うわけですが、いざ0.6乗則を使ったときに数値が異常に高い場合には、この辺りを疑ってみて必要に応じて修正していく感じが良いと思います。

設備本体が0.6乗で効くのかどうかも疑わしく工事も0.6乗で効くか疑わしいので、まとめて0.6乗で出して金額が高くなっても止む無しというのが、最近の傾向だと思います。0.6乗則の数値が見た目で高いからと言って細かく数字をいじって下げたとしても、資材や労務費の高騰を吸収できずに予算オーバーとなる結果が増えています。どちらにしても予算オーバーするなら、0.6乗則で行ったというのが言い訳として使えるでしょう。結果的に0.6乗則に依存するとしても、数値を下げる可能性や費用の要素分割などの思考は持っておいた方が良いという例として紹介しています。

最後に

バッチ系化学工場の設備投資に0.6乗則を適用させる例を紹介しました。

0.6乗則はプラント生産能力と投資額の関係性を示すものです。

特に連続プラントで効力を発揮します。

ラング係数と密接に関係があります。

0.6乗則は補完的な意味合いで使うほうが無難でしょう。

この記事が皆さんのお役に立てれば嬉しいです。

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