“ラング係数”って何?化学工場の投資金額の概算見積 設備費/投資金額の過去実績の統計値

ラング係数見積

化学工場の投資額算出において”ラング係数“という係数法は非常に大事です。

機電系エンジニアのスキルの1つとして身に付けたい考え方です。

“ラング係数”の定義

工場の設備投資金額の算出手法に、ラング係数という係数を使う方法があります。

係数法と呼ぶこともあるでしょう。

ラング係数の定義は極めて簡単

ラング係数 = 投資全額 / 設備金額

化学工場ではこのラング係数を使って、さまざまな設備投資額の算出を行います。

設備投資

“ラング係数”を使うメリット

化学工場で、ラング係数を使うことで得られるメリットを紹介します。

瞬間で概算見積が可能

ラング係数を使うと、設備投資金額の概算見積が一瞬で可能です。

設備投資金額は機械系エンジニアなら、ある程度の感度を掴むことが可能です。

少し悩んでも設備メーカーに聞けば一瞬で出てきます。

最近は、設備メーカーも忙しくて回答しないケースも増えていますが…。

社内に過去の設備購入実績データがあるはずなので、それを使ってもいいでしょう。

この設備金額にラング係数をかけるだけで、概算の投資金額を見積することが可能です。

それこそ1日も掛からずに見積できます。

精見積の精度検証ができる

ラング係数を使うことで、精見積の精度検証が可能です。

化学工場では、概算見積だけで投資金額を決定することはありません。

精度アップを目的とした精見積を行います。

P&ID,レイアウト,製造フローなどのデータを使って、精度を上げていきます。

例えば、以下のような方法ですね。

  • P&IDから必要な配管口径と材質をリストアップ
  • レイアウトを元に1本1本の配管の長さを算出
  • プロセスフローを見ながら、必要な付帯設備を付加

こんな感じで、やや精度を上げるのが精見積です。

これを積算ということもあります。

積算はやや時間が掛かります。未だに人が行っています。

だからこそミスが起こりえます。

そのミスをダブルチェックするために、ラング係数を使います。

積算で積上げた投資金額を、設備金額で割ったラング係数が

極端に少ない・多いと積み上げがおかしい!

と判断できます。

設備投資に関する感度が上がる

ラング係数を使うことで、設備投資に関する感度が上がります。

機電系エンジニアは積算の精見積を行うことが多いでしょう。

出てきた結果をそのまま会社に提出するだけ。

それだと会社としての投資判断を身に付けることはできません。

精見積はあくまで精見積。

会社の経営層はラング係数で概算金額を予想しておき、精見積結果がずれていないことをもって、投資を判断します。

機電系エンジニアが精見積をかけるときに設備メーカーにヒアリングするのも、これと同じ関係です。

設備メーカーに聞く前にある程度の感度を持っている機電系エンジニアが、精度を上げるために設備メーカーにヒアリングしますね。

“ラング係数”は経験値

このラング係数、非常に便利ですが注意点があります。

会社や工場の環境に左右されるという点です。

化学工場では3~5くらいと言われます。

  • 工場建設/増改築
  • バッチ/連続
  • プラントのみ/付帯設備あり

いろいろな条件が加わることで、ラング係数は当然ながら変わります。

ラング係数を上手に使用するためには、過去の実績を蓄積する必要があります。

ラング係数は経験知ですね。

会社によってはデータの蓄積を放棄しているケースもありますが、

長期的にみるとデメリットだらけです。

バッチ系化学プラント建設の例

バッチ系化学プラントを日本で建設する場合、最低40億円必要です。

これをラング係数を使って考えてみましょう。

ラング係数の練習問題として眺めてください。

装置金額

係数法で見積をする場合の第1ステップは、装置金額の導出。

プラントのサイズが決まればほとんど自動的に決まります。

例えば、幅15m×長さ40mの4階建てのプラントを考えましょう。

バッチプラントなら設備費の概算導出は割と容易です。

1ブロックを幅7.5m×5mの4階建てで考えます。

1ブロック

1ブロック当たりの設備金額はおおよそ45,000,000円です。

撹拌槽20,000,000
熱交換器10,000,000
タンク10,000,000
ポンプ5,000,000

これを幅15m×長さ40mに適用するには、単純に16倍すればOKです。

0.45×16=7.2億円

ラング係数

第2ステップはラング係数の導出です。

これは業界によって前後する値ですね。

連続プラントでは係数がやや低く4程度、バッチプラントではやや高く5程度です

連続プラントの方が係数が低く出るのは以下のとおりです。

  • 同じ敷地面積で装置数が多い
  • 特殊設備が多く設備価格が高い
  • 設備の取合配管の数が少ない
  • 高級材質の配管が少ない

バッチプラントでは切替生産を行うために、ガラスライニング等の高価な配管が多く、1設備に対する配管工事額が高いため、係数として高く出ます。

この辺は、実際には各会社の実績データを参考にする方がいいでしょう。

実際に、コストはどんどん上がり続けていますから。

投資額

設備額とラング係数を定めたら、後は簡単です。掛け算だけ。

設備額7.2億×ラング係数5=36億円

多少の余裕をいれれば40億円ですね、

バッチ系化学プラント新製品導入の例

新プラント建設と同じように既プラントに新製品を導入する場合を考えてみましょう。

設備金額

新製品導入の場合の設備金額は一般にはかなりカットされるでしょう。

既存の設備を流用することが一般的だからです。

こういう場合、新製品導入に必要な既存設備数をカウントしてみましょう。

既プラントの大半の設備を流用することになるはずです。

プラント中の設備投資額が7.2億円という上記の例の場合、8割程度は流用するでしょう。

7.2×0.8=5.7億円

ラング係数

新製品導入の場合のラング係数はどれくらいに定めれば良いでしょうか?

これは工場によって結構変動があります。

私の職場の場合だと3くらいが一般的です。

これはプラント建設時に比べて以下の費用がカットされるからです。

新製品導入時にカットされるラング係数要素
  • 土木建築費
  • 一部の配管工事費
  • 高圧電気盤
  • 非常用発電機

プラント建設のうち大きな品目が新製品導入時には省略できます。

これがラング係数5のうちの2であれば5-2=3という計算になります。

1.5とか2.5とか工場によるので、データ蓄積が大事です。

ここでは3で進めましょう。

投資額

設備額とラング係数を使って掛け算をすると、以下の値が得られます。

5.7×3=17.1

ここで完結しません。

設備額を引き算しなければいけません。

投資額の計算に用いた設備額はラング係数の導出のために使っただけです。

実際には設備を流用するのに、投資額に含めるのはおかしいですよね。

設備をどれだけ流用したとしても、7.2億の設備のうち2割程度がリプレースされます。

7.2×0.2=1.4億

この値が実際の設備額になります。

ということは、ラング係数のために使った設備額5.7億円と実際の設備額1.4億円との差

5.7-1.4=4.3億円は投資額から引かないといけませんね。

17.1-4.3=12.8億円

この値は、新製品導入の設備投資額としてはかなり標準的な値です。

最後に

化学工場で使用するラング係数について紹介しました。

概算見積が瞬間で可能。精見積のダブルチェックが可能。投資判断の勉強が可能。

過去実績の統計値を集めて、タイムリーな投資判断をするために活用します。

実績値を入手しやすい機電系エンジニアの腕が試させるところ。

この記事が記事が皆さんのお役に立てれば嬉しいです。

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