化学プラントの機電系エンジニアが、社内プロジェクト(project)を数回経験したときに起こりやすい勘違いを紹介します。
プロジェクトを担当する人は、その組織内でも優秀と認められた人や成長させたいと期待している人が多いです。
そういう目で周りからも見られます。本人も自覚します。
だからこそ、プロジェクトを達成した人は、いわゆる天狗状態になりがち。
ところが、プロジェクトが終わった後に日常業務に戻ったら、意外と痛い目をみてしまいます。
人のふり見て我がふり直せということで、私が実施してしまった間違いや、他の人の間違いをまとめて7つ紹介します。
〇〇億のプロジェクト(project)をした
私は○○億円のプロジェクトをした(参加した!)。だから凄いんだ!
この発言はたまに聞きます。
同じ事業所内なら金額規模がなくてもプロジェクトの実態を認識してもらえても、事業所が変わったりすると金額規模くらいしか説明する術がありません。
だから金額を説明するのですが、これってどうかなって個人的に思います。
- プロジェクト全額のうち、自分が担当するのはその一部
- 自分がその金を持っているわけでなく、会社が金を持っているから可能
- プロジェクトの難易度は金額だけでなく、あらゆるリソースに依存
この辺りの発想が抜けがちです。
ある程度の規模のプロジェクトを初めて完成したときなど、達成感を得るために金額感を覚えておくことは意味があります。
しかし、そこには多くの人が関わって協力したからこそ達成できたという意識だけは持っておきたいです。
(たとえ、周りの人がほとんど動かなくて、自分が動き回ったプロジェクトであったとしても…)
プロジェクト(project)が最優先
プロジェクト担当者は自分が最優先だと認識しがちです。
- プロジェクトはみんなが注目しているから失敗できない(他の仕事は失敗できる)
- プロジェクトは忙しいので、○○の雑務は免除してほしい
- プロジェクトは忙しいので、周りの部署から応援を出すのは当然だ
いずれも、「あるある」です。
プロジェクトはその会社の中で目立ちやすいです。
だからこそ失敗は避けたいと強く思ってしまいます。
極端に走ると、プロジェクトとしてはランクの低い仕事は失敗しても良いとすら思い始めます。
機械系であれば配管資材が足りなくなるとプロジェクトが破綻するから、他の雑案件から流用しようということが起こります。
掃除や教育などのみんなが行っていることも、免除してもらおうとします。
プロジェクトを企画するとき、メンバーはいろいろな部署から寄せ集めをすることになります。
その部署ではメンバーが純粋に減ることになるので、一般には苦労します。
その辺りのことを考えずに、プロジェクトメンバーが既存部署に強く当たってしまうと、プロジェクト完成後に戻る部署での立場が無くなってしまいます。
プロジェクト(project)を経験したから昇給・昇進できる
プロジェクトを経験したから昇給や昇進ができるという錯覚をします。
昇給なら可能性はあるでしょう。
興味のない評価者なら、プロジェクトを完遂しようがしまいが評価が同じだったりします。
気にしない方が良いでしょう。
プロジェクトの完遂は分かりやすいアピールにはなるが、昇進は年次で決まります。
その前後で多少の金額差が発生するだけです。
逆に言うと、それだけのために努力しても仕方がないとも言えます。
期待しない方が良いでしょう。
プロジェクト(project)を経験したから後は楽勝
プロジェクトを経験したから以降の業務は楽勝と勘違いする人が居ます。
深刻に考える必要なく気楽に仕事に迎えたり、余裕を持ったりする分にはOKです。
これが行き過ぎると、
設備更新なんか簡単!
なんて言いはったりします。
そういう人ほど、本質を考えずに仕事をこなしている可能性があります。
プロジェクトでは新たな設備や設計をするために、本質的な検討をいろいろすることになりやすいです。
そこで本質的な思考を身に着けることができて日常の雑業務にも展開できるようになれば、確かに簡単と思えるようになってくるでしょう。
だけど、プロジェクトでは往々にして以下のようになりがちです。
- 全体像が見えないなか、一部分に特化して仕事をしていた(そこでは本質的な思考をしていたかもしれない)
- プロジェクトが末期的な戦場になって、耐えた経験だけしか覚えていない(いざとなったらこれで何とかなると思えてしまう)
- プロジェクトに参画した人は、選ばれた人で質の高い議論をできているから、そうではない雑業務では適当にやってもバレない
プロジェクトを完遂したら確かに成長できますが、だからと言って一人前となるわけでもありません。
普段の業務に対して、プロジェクト前とプロジェクト後での向き合い方の違いを認識して、効率的・本質的・多角的に取り組めるようになって実績を積むことで一人前になります。
○○プロジェクト(project)ではこうだったと言いがち
良く分かっていない人ほどこのセリフを言います。
○○プロジェクトではこういう仕様にしたから、それと同じで。
例えばポンプ回りのヘッダーの組み方は、既存プラントでは格好が悪いとして、新規プロジェクトで採用した形をそのまま踏襲しようとしましょう。
ここで既存がとにかくダメだから、新しい方法を採用しようと提案してしまいます。
- 新しいヘッダーの形はなぜ良いのか
- 既存のヘッダーはなぜ今の形になったのか
新規と既存のメリット・デメリットを比較できないで、新規案を妄信してしまうパターンです。
あまり内容を理解していない初心者エンジニアが、プロジェクトでの高等な議論の中身は理解してないけど、結果だけは分かっているという場合に起こります。
多くの人は、そういう分かってない人から受けた提案でも、「○○プロジェクト経験者が言うから反対できない」と諦めざるを得なくなります。
仮に反論しても、昔の方法にこだわって新しい考えを取り入れない頭の固い人、というレッテルを張られてしまいます。
周りの決心が遅い
プロジェクトなどで速度重視などの経験をした後で、日常業務に戻った時に感じます。
進みが遅い
これを勘違いしていくと、担当者の力量が低いから進みが遅いのだと思ってしまいます。
プロジェクトが高速で処理できているのは、その仕事にだけ全力で取り組める環境を作ってもらえているから。
周りの人の協力があってこそ、です。
日常業務では多くの仕事を並行処理しないといけず、優先順位を下げざるを得ない仕事もあります。
多くの人が多くの業務を行う中で一業務だけ関わるという時に、相手の事情を考えてリードタイムを設定しましょう。
これは機電系エンジニアなら、外部メーカーなどとやり取りするときにも気を付けたいことですね。
設備が使いにくいと文句をいう製造に落ち込む
この設備は使いにくい!
こういうお叱りはプロジェクトだけでなくて日常業務でも受けることでしょう。
プロジェクトであれば、せっかく努力して何とか完成したにもかかわらず、この一言で心が折れそうになります。
一度でも経験すると日常業務でも、トラウマのように思い出されます。
こういう場合は問題を分散化させましょう。
- 設備の使い方をエンジニアが知らないのは確かに問題。しかし、知る機会が極端に少ないのは自分だけのせいではない
- オペレータがエンジニアに直接文句を言うのはルートが違う。上位の製造管理者に文句を言うべき
- 製造管理者がエンジニアに文句を言う場合は、プロジェクトの進め方がそもそもおかしい。意見があるならプロジェクト遂行中に言える環境や進め方を構築すべき。それでも文句を言うなら、管理者としておかしい。
一昔前なら、製造様はとても苦労しているのでいつでも文句を言っていいものだ、という雰囲気がありました。
エンジニアもこういう環境でやっていくのが辛くなり人が集まらなくなってきて、製造部も少しずつですが考え方を変えているでしょう。(弊社はかなり変わりました)
参考
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最後に
化学プラントのプロジェクトを経験した人が陥りやすい勘違いを7つ紹介しました。
一般には天狗になりやすい傾向で、プロジェクトを経験したから偉い・昇進する・他の雑務は楽勝と思いがちです。
逆にプロジェクトで製造部からトラウマになるような扱いを受けるかもしれません。自責にとらわれずに問題・責任を分散化させましょう。
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