近年の機電系エンジニアを眺めていると、受け身(passive)の仕事をしている人が多い印象です。
意識だけを見ると、明らかにレベルが落ちています。仕事の成果・質という意味では目立ちにくいですけど^^
この原因は。人の意識そのもの
「意識の低い」という単語はいろいろな意味を持っています。
ここでは、「仕事を何としても仕上げよう」という意識が低い人をターゲットにしています。
昔の人が持っていた意識を、すっぽり無くしてしまった人たちが増えています。
昔の人が持っていた意識の中には良い部分も悪い部分も当然ありますが、良い部分を失った影響の方が圧倒的に大きいです。
ここを意識するだけでも、周囲から一つ頭が出た存在として目立てるようになりますよ。
機電系エンジニアの受け身(passive)な仕事の実態
機電系エンジニアが受け身な仕事をしている実態を紹介します。
マネージャー・担当・若手の3つの切り口を使います。
マネージャー
機電系マネージャーは仕事を受けるだけという傾向が強いです。
大きなプロジェクトになるとマネージャーである課長クラスが仕事を取ってきます。
その課長クラスが、プラントの特性も知らずにプロジェクト規模だけを考えて仕事を判断します。
○○億円の仕事だからAに担当させよう!
Aさんには仕事の概要を説明せずにとりあえず仕事を割り振り、詳細は製造部から話を直接聞いてくるように指示します。
これってマネージャーの価値あるでしょうか?
このケースではマネージャーは部下に以下の内容を説明できないといけません。
- プロセスの概要
- プロジェクトの概要
- そのプロジェクトで最も課題となる項目を数点
- 必要なリソース
- 目標の予算・工期
このうちの半分も説明できるマネージャーはほぼいませんね・・・。
担当エンジニア
担当エンジニアは保全と設計に分けます。
設備保全エンジニア
設備保全エンジニアは単に直すだけを仕事と思っている人が多いです。
製造部から「○○が壊れたから直してほしい!」と依頼が来ます。
それを設備保全エンジニアは「分かりました」といって、上司に報告して、メンテナンス会社に依頼して直すだけ。
修理をすると言っても、本来は設備保全エンジニアは色々なことを考えて対応しないといけません。
- 設備の使用条件
- 設備の保全方式、保全計画
- 予備品の考え方
- 応急処理の方法
- 恒久対策
- 点検前の原因の推定
- 点検後の本質原因究明
いろいろありますよね。
でも、ほとんどの設備保全エンジニアは「応急処置」くらいしか理解できていません。
製造部の人もそこは諦めます。
彼らも、設備保全エンジニアに対しては、現物を見て早く治してほしいとしか期待しません。これって窓口としての機能しか持たないですよね。
設備設計エンジニア
設備エンジニアは設備の基本仕様を考えるだけというケースが多いです。
〇m3のSUSのタンクを作って欲しい
こんな依頼を受けて、標準スペックからサイズを選定して、必要なノズルを決めて終わり。
こんな設備設計エンジニアも多いです。
設備保全エンジニアの場合と同じで、設備設計エンジニアも考えるべき例を紹介します。
- 設備の運転方法や考え方
- 最適な設備配置
- 据付撤去が容易になるような配管構成
- 運転だけでなく計器や設備の点検作業に必要な設備
特に設備の運転方法を理解しようとする方向が弱く、〇m3のSUSのタンクを作って欲しいだけしか理解していない場合が多いです。
そのタンクはどんな目的で使うのかは実は大事なこと。
単体の機器を更新する設計しかしていないとこんな発想になります。
使用方法が分かれば設備をほぼ自動的に決めることができるのに、そこを知ることなく基本設計が無いと機器の仕様を決めることができないという価値の低いエンジニアができてしまいます。
プラント設計思想が無いと、支離滅裂なプラントが出来あがりと放置して、何十年にわたって担当する運転員や設備保全エンジニアをいかに楽にさせるかについては興味がない。
若手エンジニア
意識の低さが目立つ若手の例を紹介しましょう。
仕事の進め方を独断で行う
意識の低い若手エンジニアは仕事の進め方を独断で行うことが多いです。
- 緊急性の高い仕事だけに取り組む
- 間に合わなかったら諦める
- 自分の担当しか考えない
ザックリ書くとこんな表現になります。
緊急性の高い仕事だけに取り組むと、自分で仕事の優先順位を考えません。
周りに振り回されます。これを良しとする組織は非常に疲れます。
緊急性の高い仕事だけに取り組んだ結果、1年程度のスパンで考えないといけない仕事の進捗が遅れていって間に合わないという結果が起こりえます。
ここで、間に合わないから諦めようって思考にすぐに到達する若手エンジニアが量産されています。
自分の担当しか考えずに、設計者は設計のことだけ・保全者は保全のことだけというように自分のエリアでしか物事を考えない人が増えています。
機械・電気・計装・土建という区分ではほぼ縦割り化しています。
どこの部門と調整するかも含めて仕事の進め方は担当者が考えることでしょうが、それを全く考えずに自分のことだけを考える傾向になっています。
指導の受け方
最近の機電系エンジニアは指導の受け方が非常に悪いです。
「最近の若者は~」なんてセリフは古代エジプトの時代からあったようですね。
実力を持ち責任感もあり中核として第一線で活躍するベテラン層から見ると、新入社員にはどの時代でも文句をつけたくなるものです。
それはそれとして・・・私が働く職場の機電系エンジニアが指導を受けるときには以下のような特徴があります。
- メモを持参しない
- 上司が説明に使った資料は使わない
- 上司が書いているのを見るだけ
- 上司が説明のための資料を探している時は、座っているだけ
全体的に学校の授業を受けている感覚の若手が非常に多いです。
上司が口頭で話をして、部下は必至でメモを取る。
こんな風景はほぼ絶滅しました。
部下はその場で話を聞いて理解しているかと思えば、理解していません。
あとになって確認してみると全く理解してなかったってケースばかり。
理解できないとも言えず、理解しようとメモを取ることすらしない。
メモを取れと指摘して初めてメモを取るというのが実態です。
メモは古くてちゃんとしたマニュアルがあるべきだという反論をする人もいますが、こういう人はマニュアルがあっても見ません。
マニュアルが多くて見る気になれないって反論します。
彼らはそのマニュアルがどこにあるかを解説したり、紙の資料の置き場所を説明しても興味がなさそうにします。
パソコンで検索したら出てくるとでも思っているのでしょう。
検索システムを構築するためのコストや検索時間そのもののコストを認識できない例ですね。
現場で習得しようとしない
上司が現場を歩いている場合、格好の勉強材料になりますが、付いていかない部下が増えています。
化学プラントでは現場は教科書と言われます。
ここを疎かにしすぎるエンジニアが急増しています。
現場で分からないことを聞いたり、教えてもらえる関係性は、早いうちに築いておくべきでしょう。
後ろに付いていくだけでOKです。
勝手に会話が始まります。
忙しそうだから、怒られると怖いから・・・
こんな事を言っている暇はありません。
上司も部下が速く成長してくれることを期待しています。
いろいろな理由を付けて、上司から教わる機会を見過ごすのはチャンスを失うことそのものです。
本人にやる気があるかどうかという問題に帰着するはずです。
それなのに「上司の教え方が悪い」と言われるのが現在ですけど^^
機電系エンジニアの依頼者と受付者としての立場
仕事を受ける時は依頼者と受付者の立場関係が課題になります。
一般には、依頼者の方が立場が強い関係にあるでしょう。
依頼者 | 受付者 |
強者 | 弱者 |
全ての「依頼者」「受付者」の関係がこの通りなら、綺麗な関係になります。
でも、そうはいきませんよね。
機械屋の場合でいくつかの例を紹介しましょう。
製造部の言いなり
依頼者が製造部・受付者が機械屋というケースを見てみましょう。
機械屋が仕事を受けるという場合はこれがスタンダードです。
製造部がプロセスエンジニアに置き換えてもOKです。
依頼者 | 受付者 |
製造部 | 機械屋 |
強者 | 弱者 |
この場合、製造部の方が圧倒的に強者です。
情報を持っている方が強者ですからね。ここは仕方がない。
工事屋の言いなり
機械屋が工事屋に依頼するときは、依頼者が機械屋・受付者が工事屋になります。
ここでも機械屋は弱者の立場になりがちです。
依頼者 | 受付者 |
機械屋 | 工事屋 |
弱者 | 強者 |
工事屋はいっぱい存在するから、どこかに依頼すればいいだろうと考えれる環境は大手企業の企業城下町的な部分に限定されるでしょう。
依頼者の条件は厳しすぎるから受け付けれない、と拒否をする工事屋の方が多いです。
調達部の言いなり
機械屋が設備を購入するときは、依頼者が機械屋・受付者が調達部になります。
ここでも機械屋は弱者になりがち。
依頼者 | 受付者 |
機械屋 | 調達部 |
弱者 | 強者 |
というのも、調達に関しては調達部の方が専門的で情報が集約されているから。
情報を持っている方が強者になりやすい依頼関係では、調達部の方が強者になりやすいです。
設備メーカーの言いなり
調達部と同じで設備メーカーにも言いなりになりやすいです。
依頼者 | 受付者 |
機械屋 | メーカー |
弱者 | 強者 |
構図は調達部と全く同じ。
受付者の人数が少なく情報が集約されているから、強者になりやすい。
電気屋・計装屋の言いなり
機電系エンジニア内でも強者・弱者関係は発生します。
依頼をする側の機械屋の方が弱者になりがちです。
依頼者 | 受付者 |
機械屋 | 電気屋・計装屋 |
弱者 | 強者 |
電気屋・計装屋の仕事が専門的で自分の守備範囲を堅持しようとする結果として、調整をすべて機械屋に押し付ける格好になるからです。
電気屋・計装屋は結構かんたんに無理と依頼を断ってきます。
その瞬間に機械屋が何とかしないといけなくなります。
機電系エンジニアは学習しない
機電系エンジニアは言いなりになりやすいですがそれはなぜでしょうか?
学習しない
これがほぼ全て。
自身の殻に閉じこもる受け身的な人は、言いなりになります。
それをそれぞれの接点で確認しましょう。
化学工学を学習しない
化学プラントの機械設計者にとって、化学工学はバイブルです。
極端に言うと、機械部品の知識以上に重要です。
機械設計者は大卒・院卒が多く機械系は物理が相対的に得意のため、計算が得意な傾向があります。
この点においてだけは、機械屋は化学工学者よりも優れている点です。
でも気が付いていない機械エンジニアは非常に多いです。
計算や数式を触るのが得意であれば、化学工学の理解はできます。表面的な部分だけでOKです。
化学プラントで使う学問的知識は、その膨大な知識のうちの表面の部分だけです。
特に化学工学は実学で近似式が非常に多いですが、その近似式の中身まで理解する必要はほとんどありません。
原理原則を理解していれば十分。それは数日でできます。
その知識を習得して業務で使おうとしない限り、プロセスエンジニアの言いなりになってしまいます。
安全を学習しない
製造部との議論で最重要なのは安全。これに尽きます。
プロセスの安全はプロセスエンジニアも考えます。
しかし、現場作業の安全性は製造部でないと分かりません。
製造部の管理者は安全を最優先にします。
- その彼らに対して、設備面で安全性を提示する。
- より安全性の高い作業となる設備を提示する。
これは設備屋の大きな使命です。
ちゃんとした製造部の管理者なら、この重要性を知ってくれています。
ところが最近の製造部の管理者は、この辺を雑に扱う傾向があります。
ある意味で設備屋にお任せ。
製造部でも設備屋でも化学プラントの安全に対しては最初は素人です。
製造部の方が日常的に安全に関わるから勉強速度が速いだけ。
設備屋でも学習すれば十分に議論に参加できます。その学習をしないだけ。
電気制御を知ろうとしない
機電系エンジニアは自分の殻にこもりがちです。
「電気屋は~」「計装屋は~」というふざけた発言を、何の意識もなく使うのがその証拠。
この発言をしていいのは、工事会社などの他社とのやり取りにおいてのみです。
自社内で同じような職場・同じような環境にいる社員の間でこんな縦割りは不要。
機械屋は取りまとめをして電気屋・計装屋は自分の殻に閉じこもっていると、お互いの仕事を学習しようとする力が弱まります。
これを言うと、電気屋・計装屋の方がよっぽど勉強しないことになりますが^
関係会社の環境を考えない
設備メーカー・工事会社・ドラフトマンとのやり取りは社外とのやり取りです。
大企業にいるほど、関係会社の方が企業の体力が弱いことに気が付かないパターンが多いです。
その結果、自社の要求が過剰であったり独特であったりしても、関係会社に無理矢理応対してもらう格好になりがち。
短期的には設計者として満足のいく結果が得られるでしょうが、長年続くと手の施しようがない深い問題に発展します。
最終的には、関係会社がお手上げの状態になります。
そこで慌てて仕様の変更や見直しをしようとしても、設計者にその実力がなくなっています。
- なんでこんな特殊仕様にしたのだろう?
- この仕様を変えたらどんなことが起こるだろう?
こんな推測ができないと、あっという間に関係会社の言いなりになります。
- 特殊仕様だと高いですよ
- 他社はこの仕様で買ってくれていますよ
こう言われて反論できなくなりますからね。
関係会社の立ち位置を想像しつつ、自社の技術を高めて、対等に議論できる関係性を作っていきたいですね。
どちらかが強すぎても弱すぎてもよくありません。
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最後に
化学プラントの機電系エンジニアが受け身の仕事をする理由を解説しました。
マネージャー・担当・若手どの立場でも基本的に受け身です。
機電系エンジニアは情報量が少ないというのが本質でしょう。
これを緩和するためにはやっぱり学習ですよ。
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