私は機械系の大学院を終了して化学会社に入社。機電系エンジニアとして仕事を始めました。基本的には機械系だけでキャリアを終えるのが基本の職場。製造をお客さんと考え、製造のために全力を尽くす仕事。それが当たり前と思っていました。
ある時に製造に異動することになり、以降、複数の部署を転々として見れる範囲が広くなりました。最初に視野を広げることとなった製造でのことを振り返ります。生産技術職が製造からどう見られているかを強く実感した時代です。
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設備と製造の位置関係
最初に化学工場の機電系エンジニアと製造の関係をおさらいします。化学工場の製造を成立させるために、多くの間接部門が支えています。以下のような構図です。

ここで、機電系エンジニアは「設備」を担当します。私もこの設備関係の仕事をしており、製造の仕事に異動することとなりました。下のように、設備から製造へのチェンジです。

設備は単に製造の一部
設備関係の仕事をずっとしているとその仕事が当たり前に見えますが、製造に移った瞬間に「設備は製造の一部」しかないことに気が付きます。設備が仕事の100%であったはずが、それがたったの一部。
製造の仕事をしているといろいろな問題が起きます。これを誰に依頼するかを考えるところから、最初は悩みます。
・設備に異常があれば設備
・品質に異常があればQC・・・と言いたいところだが、合理化にも依頼
・廃棄物は物流・・・と言いたいところだが、企画にも影響
どの部署に依頼するかを考えるということは、視野が広がることにもつながります。
製造をしていると設備以外にも多くの仕事があることに気が付きましたが、その大きさに愕然とした記憶があります。自分が10年くらいかけて学んだことと同じかもっと深い仕事が、ほかにも山のようになる。10年経ってもこんなことすら実感していませんでした。
設備の仕事だけをして製造とだけ仕事をしてきたので、視野が狭くなるのは仕方がありません。
設備は判断機会が少ない
設備の仕事は判断機会がかなり少ないです。逆に製造が毎日判断の連続とも言えるでしょう。
設備では仕様の決定や今後の方針を考えるときに判断は入りますが、一日に何回も決定をするわけではありません。他の間接部門の仕事も似たようなものです。
一方で、製造では毎日判断だらけ。運転の傾向を見て修正をしたり、他の部門からの問い合わせに答えたり、メンバーなどの困りごとに答えたり。頻度が圧倒的に違います。
製造に移った瞬間に、日々判断を求められる現実に直面しました。ある程度慣れれば判断も少なくなるでしょうが、それでも他の部門よりも多いことは間違いありません。製造に移ってから、判断を毎日している製造が格好いいとか、設備は大した仕事ではないとか思い始めました。
設備は仕事の速度が遅い
設備は仕事の速度が遅いということを製造に移ってから実感しました。設備は設備の専門家なので、時間をかけてじっくり考えて答えを出さないといけない。そう思っていました。設備でも特に設計は、1年~2年掛けて仕事を処理する以上、時間間隔が遅めです。
ところが製造では毎日起きる問題をその日に回答する仕事。そうしないと仕事がいつまでも解決しません。製造以外にも合理化や企画でもこの考え方はある程度そろっていて、何か月も返事をしないことは異常という感覚です。設備では1か月返事がないということも珍しくなかったのですが、それがおかしいということを製造に移って気が付きました。
のちに設備の仕事に戻ったのですが、メンバーの仕事の遅さにイライラして結果的に問題になったのですが、同じ敷地で同じ技術系の仕事をしていても、これだけ考え方が違うのかと驚いています。
設備は関連部署との調整が少ない
設備は関連部署が少なく、製造と接点を持っていればほぼOKです。製造以外の部署と共同で何かをすることはほとんどありません。逆に製造は、支援してくれる多くの部署と何かしら仕事を一緒にします。
関連部署の大小は、会社生活でいろいろな影響を与えます。
・昇進速度
・自分の知識レベルの向上
・周囲の人の考え方
・自分に関わる組織の課題
関わる人やタイプが多い方が、個人レベルでは良い結果になりやすいと思っています。設備関係だとどうしても関わる人が少なくて、保全・メーカー・工事会社などと似たジャンルの人との接点だけになってしまいます。化学工場の機電系の弱点の1つですね。
設備の仕事だけをしていると、ある程度すると慣れてきます。自分で考えなくても標準化・基準化がある程度できて、「この質問はこれが答え」と反射の世界になってきます。そこで分からないものは、ほぼすべて製造に聞けば何かしら答えが出てきます。この状況が続くと、自分で考えることはなく製造に聞いて答えを出すだけとなり、思考の訓練ができなくなってきます。
設備は出張しやすい
設備関係は出張がしやすいです。メーカー工場に検査や修理の方針打ち合わせなどの名目で出張ができます。逆に製造は、その工場を運営することが使命なので基本的には出張がありません。
出張は国内程度なら、そこまで負荷にはならないです。移動そのものは体力を使うとしても言語が同じである以上、何とかなるでしょう。メーカーの場合は、どこでも同じような話になるので、新しい場所の出張でもこれまでと同じような方法でも、問題になりにくいです。出張で気分転換もできるでしょう。
設備は人が集まらない
設備関係は人が集まりにくいです。生産技術という名前が良くない表現で使われていますよね。それだけでも人が集まりにくいのに、化学プラントの機電系というとジャンルそのものがニッチなので、ほとんど人が来ません。地方の工場だと人気がないのでますます。
製造だと大きな会社ならとにかく人を集めようとします。新入社員だけでなく他部門からの異動でも教育と称して集めます。私が設備から製造に異動したのもこの一環でしょう。
様々な人が集まって同じ仕事をすることはやはり刺激があります。これは設備関係では得られない製造ならではでしょう。
参考
最後に
機電系エンジニアが製造を経験すると、設備という仕事の限界がはっきりと見えてきます。
・設備は製造の一部でしかない
・判断機会やスピード感が大きく異なる
・関係部署の広さが視野に影響する
・標準化が思考停止につながる可能性がある
これらを理解した上で、設備の専門性をどう活かすかを考えることが、本来の役割につながります。製造経験は、単なる異動ではなく、エンジニアとしての視野を広げる大きな転機になります。
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【著者:ねおにーーと】
化学プラントで20年以上、設計→製造→保全→企画まで一気通貫で経験したユーザー側エンジニア。 バッチプラントの設備・運転・トラブル対応を中心に、現場で本当に役立つ知識を発信しています。 → 詳しいプロフィールはこちら

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