送風機・ファン・ブロアーの設計では、単に気体を送るだけの機械と考えてしまいがちです。
ところが、多くのプロセスでは液体分を含んだガスを送ることになり、送風機・ファン・ブロアーでは液体が溜まってしまう問題があります。
最悪閉塞するということも起こります。
気体を送るはずなのに、閉塞なんて起こるはずがないだろう。
そう思ってもおかしくありません。
原因・結果・対策のそれぞれを解説します。
ガスに液体が含まれる原因
送風機・ファン・ブロアーというガスを送る設備では、液体が含まれる可能性があります。
考え方はキッチンの換気扇と同じです。
化学プラントでは、以下のような形でガスを吸うプロセスが多いです。
直接
洗浄
直接型はプロセスで発生したガスを直接吸い上げる方法で、洗浄型は洗浄塔などで水洗浄を間に挟みます。
洗浄型は水で洗っている以上、気体中に液体が含まれるイメージはしやすいでしょう。
洗浄塔のように塔径がそれなりにある場合には、線速が低くなって液体が落下していきますが、完全に液体が気体から取り除けるわけではありません。
同じように、直接型でも水や有機溶媒は蒸気圧分の蒸発があるので、気層部には窒素以外の成分を含みます。
例えば80℃くらいの条件のガスを吸って、送風機・ファン・ブロアーでは常温になっている場合には、温度が下がっていることで凝縮することがあります。
純粋な空気を吸ってどこかに送り出すという使い方ではないので、何かしら液体分が含まれると考えて良いでしょう。
送風機・ファン・ブロアーに液が溜まった結果
送風機・ファン・ブロアーに液が含まれると、どういうことが起こるでしょうか。
これは最終的に起こりえる閉塞という結果を見てみると、分かりやすいでしょう。
送風機・ファン・ブロアーはインペラに液体が付着します。
液体の粘度が高かったり、液体中に含まれる固形分が残留して、インペラには固形分が付着していきます。
これは送風機・ファン・ブロアーの性能を著しく悪化させます。
単に羽根を回しているだけの機械に見えて、精密なバランス調整をしている機械です。
ここに多少の固形分が付着しただけでもバランスが壊れ、振動が大きくなります。
インペラへの付着量が多くなると、インペラが重たくなって、消費電力も上がっていきます。
送風機・ファン・ブロアーの出口配管にも固形分が付着して、配管が閉塞していきます。
これは口径を小さくする意味があるので、バルブを絞るのと同じ流量を低下させることになります。
消費動力は増え、流量は低下するという点で、エネルギー的に悪影響が出てしまいますね。
送風機・ファン・ブロアーに液を持ち込まない対策
これらの問題を起こさないためには、送風機・ファン・ブロアーに液体を持ち込まないことが第一の対策となります。
例えば、以下のような対策が考えられます。
デミスタ
洗浄塔などの、ミストが発生しやすい設備にはデミスタを付けることが一般的です。
ミストでなくてヒュームのレベルになると効果はありませんが、ミストレベルなら除去効果は大きいです。
デミスタはフィルターの一種なので、定期的な洗浄や交換が必要となります。
完全に除去できるわけではありませんが、それでも送風機・ファン・ブロアーへの影響を抑えるという意味で、設置した方が良いでしょう。
サイクロン
液体を気体中から取り除く方法として、サイクロンが考えられます。
液体を取り除く効果は大きくメンテナンスがほぼ不要ということで、設置しない手はありません。
何となく高価な設備に見えますが、配管費の一部と考える方が良いでしょう。
サイクロンでは、液体と気体を分離する都合上、液体を排出するラインが必要となります。
これが意外と難しいです。
常時廃液
送風機・ファン・ブロアーには液体が溜まる可能性があるので、液体を常時排出するシステムが必要です。
単にドレン抜きラインを付けるだけでは駄目です。
- バルブを付けても開け忘れて効果なし
- 単に液抜きラインを付けたら、逆流が起きて液は抜けない
送風機・ファン・ブロアーが、周囲よりも圧力が低いという点に着目しましょう。
1つの答えが、Uシールを作ること。
Uシール中に液体が溜まっていて、送風機・ファン・ブロアーの静圧よりも高い液中であれば、周囲の空気が逆流することはありません。
送風機・ファン・ブロアー内で溜まった液は自動的に落下していき、Uシール部から外部に放出されます。
とはいえ、これも結構難点があります。
- 運転前に水でシールする必要がある
- 定期的な監視と液の補充が必要
廃液場所も一定の考慮が必要です。洗浄塔側に返すのが理想的ですが、送風機・ファン・ブロアーは低い位置に置くので、できるのはサイクロン側だけでしょう。
参考
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関連情報
最後に
送風機・ファン・ブロアーが閉塞する問題の原因と対策を解説しました。
水など固形分を含む液体が、気体と一緒に流れてきます。
インペラを固着させて消費電力を上げたり、配管を閉塞させて流量を下げたりと、デメリットがあります。
液体を持ち込まないように、デミスタ・サイクロンなどの装置や、常時排出装置を考える必要があるでしょう。
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