エンジニアリングで紙(paper)っていうと文書のことを指します。
膨大な紙の書類を扱うのがエンジニアリングだ!って思考停止をするエンジニアも多いです。
建設時はそれなりに活用しているのに、その後は器用に活用できる例は少なく、紙を保管していることにのみ価値を感じている人も。
机の上には大量の紙の書類が放置されていたりします。
DXの推進もあって電子化が進むと思いきや、相当の抵抗勢力が存在します。
紙と電子化というキーワードで機電系エンジニアリングを見ていきましょう。
紙(paper)のメリット
まずは紙のメリットを整理します。
安心感がある
紙のメリットは一言でいうと安心感。
昔から紙を使っているので安心感は抜群。
試験前に過去問をコピーすると満足するという経験は皆さんはありませんか?
機械エンジニアはこの思想が定着しきっています。
学生時代は試験直前に試験勉強をするでしょう。
その前に、過去問集めがあります。
過去問をコピーすれば安心という経験を続けた結果、紙を自分の手元に持っておくと安心というマインドが形成されていくのだと思います。
実物主義
製造業では、3現主義という表現を使います。
現地・現物・現認
機電系エンジニアといえど製造業に所属しているとこの思想が染みついています。
体系立てができる
紙で書類を管理する場合、体系立てて整理することが比較的楽です。
これは電子データでも可能そうに見えますよね。
でも、電子データだといくらでも変更が効くので、ルール化が難しいという問題があります。
フォルダ名の付け方・ファイル名の付け方・半角全角・・・
いろいろなルールを付けてそれを徹底させないと、すぐにカオスな状態になります。
これなら目に見える形で整理した方が良いと思う人が居てもおかしくはありません。
過去の習慣に縛られる
過去問集めって、貴重な情報の入手元とアクセスが限定されているから行います。
他人にお願いしたり、ネットのデータが削除されたり…
そういう不信感を払拭するために、確実な形として紙で保管したいのでしょう。
これは、仕事の書類や基準体系でも同じです。
どこに何の書類があるか分からない。
こういう雰囲気が職場に蔓延しています。
緊急時に大活躍
異常時や火災爆発が起こったときに、紙のデータは大活躍します。
災害対策本部を設置するときは、電気が止まっている可能性があります。
電子データを出力することができないからダメ、紙やホワイトボードなどのアナログが基本。
という0-100の理論で、電子はダメ・紙こそが正義という思考に陥る人が非常に多いです。
紙(paper)のデメリット
次に紙のデメリットを見ていきましょう。
作業場所が限定される
紙が多いということは、作業場所が限定されるということです。
紙を保管している場所の近くで、執務しないといけません。
紙の情報にアクセスするために、人が移動する必要があります。
執務場所と、紙の保管場所が遠い場合は、移動時間のロスが無駄。
これを延長していくと…会議で質問があっても、即答がしにくいというデメリットもあります。
パソコンにデータがあれば、その場で調べることができます。
紙のファイルを保管するための棚が必要で、執務場所や通路すら圧迫します。
運搬が大変
1年~2年の機械屋の仕事を、真面目にキングファイルに保管すると1人当たり10~20冊くらいの分量になります。
同じ事務所で、機械・電気・計装・土建のエンジニアが居れば、各人のために紙でコピーして配布します。
その書類は実際には年に数回しか閲覧することがありません。
そして、1~2年の仕事が終われば、90%以上の書類を処分。
それでもコピーを続けている。
彼らは紙を愛しているとしか思えません。
紙の書類があっても良いけど、一元管理すればいいだけなのに^^
処分が大変
キングファイルの処分は非常に大変です。
- 機密文書とそれ以外の書類に分割
- ホッチキス・クリップ等の金属を取り除く
- 付箋を取り除く
- シュレッダーに掛ける
- ごみ袋を処分する
これらの作業をこなさないといけません。
1冊のキングファイルで10~15分くらいはかかるでしょう。
紙が大好きな人間たちは、紙を処分することは嫌いです。
紙が処分される姿を見たくないのでしょう、きっと。
紙をため込んでしまって、自分たちで処分できなくなったらどうするでしょうか?
- 外部の人に処分を依頼する
- 避難倉庫を建てる
という非建設的な、コストアップの方向に動き出します。
日々の仕事で注意して、処理をしていくだけで、これらの不要な仕事は発生しません。
簡潔に言うとサボりです。
性格が雑です。
日常の仕事に追われ、目が行っていないのです。
文書を整理する能力が育たない
紙で仕事をしていると、文書整理能力はほぼ育ちません。
とにかくキングファイルに保管すればいいという思考で、無限にキングファイルを増やしていくからです。
情報の取捨選択の時間がもったいないので、とにかく保管していく。
キングファイルに貯めこんでいく時間すらもったいないので、文書管理を専門にする事務屋を雇う
こういう思考が進んでいきます。
これもコストアップ。
大きなプロジェクトでは仕方がない部分はありますが、オーナーエンジニアリングではそんなプロジェクトは10年に数回しかありません。
残りは、エンジニアのマインドでなんとかできる業務ばかり。
そこに目を向けず、外部リソースに依存。
仕事を意図的に増やしたいのでしょうか。
機電系エンジニアニングで電子化するもの
紙を無くそうとしたとき、機電系エンジニアリングでできることをまとめてみました。
自社発行資料
自分たちで作る資料は電子化できるはずです。
設計書・仕様書・工事資料・査定資料・依頼書
これらは基本的にパソコン上で作成します。手書きなんて絶滅。
PDFにすれば電子承認なんてあっという間に終わります。
それをせずに、承認するためだけに印刷して捺印して紙として保管します。
その紙が増え続けているのが問題なら、承認を電子化すればいい。
これだけのはずです。
それができないのは、ハンコを押したいから。
社内もしくは社内の関係会社に出すくらいの書類なら基本的に電子承認で何の問題もないのに。
なぜか過度にハンコにこだわっている人が居ます。
この辺は組織のリーダーの素質によるでしょう。
機電系エンジニアリングの場合、例えば配管図などは紙で検討する方が効率的だし、その配管図を現場に持ち込むには紙の方が都合がいい場合もあります。
だからといって、すべてを紙で管理するというのは筋違いですがそんな発想には至らないようです。
今や工事現場でもタブレットなどで配管図を眺めている人も普通にいるのに。
大企業ほど時代遅れになるようですね。
カタログ
これ非常に地道な作業で面倒です。
電子データ化の取り組みで真っ先にできることであり、やるべきことです。
ところが結構難しいです。
- サイトからダウンロードすると登録が必要
- どのカタログが必要か精査しないといけない
この辺はドキュメントをコントロールする事務係の出番ですね。
メーカーの資料はメールで
メーカーから図面などが紙で送られることって未だにありませんか?
私の職場でもまだ数社は紙で送ってきます。
何回言っても、仕様書にどれだけ書いても、紙で送ってきます。
思考停止もここまでくると病的です。
ドキュメントコントローラーに依頼するためには紙の方が楽だからでしょうね。
社内の業務システムの問題だけなのに、変えるのが面倒。だから紙を継続する。
電子化が進まない理由
さて電子化すべき資料はかなりありそうなのに、意外と進みません。
その理由を整理してみましょう。
すでに今までに述べていることも含んでいますが・・・。
仕事の見直しが面倒
多分、大半の理由はこれです。
誰かが仕事の仕方を変えよう!って旗を上げても、関係者全員がそこに乗るとは限りません。
- 変えるのが面倒だから今のままでいい。
- 変えるためにはいろいろ考えないといけないので、面倒だったり時間が掛かるので嫌
- ゆっくりやればいいのに
こんな意見が本当にゴロゴロ出てきます。
変化を否定する材料を出す天才たち。
化学という変化を扱う会社で、変化を否定するとは・・・。
パソコン操作が苦手
機電系エンジニアはパソコンが得意というわけではありません。
若い人はスマホやタブレットに慣れているからという理由で得意ではないようですが、
中堅以降は学生時代にパソコンもスマホも扱わなかったデジタルになれていない人が多いです。
これが、ファイル操作などにも現れます。
紙でコピーすればシステムに乗って配布される書類。
電子化するためには自分がスキャナで読み込んだりメールしないといけない。これが面倒。
そう考える人が本当に大勢います。
紙で配布する作業をする人に電子化の作業を依頼すればいいのに。
例外ばかり探す
パソコンが普及してから、紙で手書きで書く機会は減りました。
それでも、デジタル偏差値の低い人は紙を見ながらパソコンに手入力を平気でします。
化学プラントでは、工事会社や設備メーカーからの見積書が届きます。
工事会社は紙で提出することが多く、設備メーカーはメールで提出することが多いです。
メールで届いた資料を紙で印刷して、紙を見ながらパソコンに直打ち。
この作業に時間を掛けている社員があまりにも多いです。
みんながどんな仕事をしているのだろう、と作業しているシーンを見ていると
紙とパソコンをにらめっこしている場面が多いです。
- 紙の方が見やすいから
- 紙で提出されるから
- PDFで提出されるから
こういう言い訳をしてデジタル化に取り組まないエンジニア。
本当に、本当に、多いです。
標準的なフォーマットを作って、手入力の部分を減らせばいいのに、
やれ権限だ・やれ紙のサイズだ・やれ通知方法だ、と問題点だけを上げて解決案を考えようとしない人ばかり。
移動の副次効果を主張
紙で印刷したりファイリングしたり配布したり、これらの作業には共通して移動という要素が含まれます。
移動を削減しようというのがデジタル化の効果の1つ。
できない言い訳を作るのが得意なデジタル化偏差値の低いエンジニアは、こう答えます。
移動して誰かと対面することで、その人に関連する要件を思い出す。この副次効果があるから、移動は大事!
いや、もう、ここまで言い切られると救いようがありません。
「他の用件を思い出す」ということが問題です。
これは、タスク管理ができていない証拠。
メーラー等のタスクスケジューラを使わず手帳で記録するだけだったり、手帳も使わず頭の中で記憶しているだけ。
こんな人が本当に多いです。
レベルが低いと言われても仕方ありません。
紙(paper)と電子データの使い分け
時代はとっくに電子化の流れです。
100%電子化はありえないでしょう、実態としては電子化は5%くらいしか進んでいないのが例えば私の職場。
0%か100%かでしか考えられずに電子化を進めていかない流れですが、使い分けが現実的でしょう。
機電系エンジニアリングにおいて、紙と電子データの使い分けの例を紹介します。
図面チェックは紙
図面チェックは紙が基本です。
これは機電系エンジニアなら常識でしょう。
簡単なプロジェクトでも50枚程度の紙を扱いますし、
少し複雑なプロジェクトなら100枚~500枚クラス。
大規模プロジェクトになると1000枚以上の紙を扱います。
P&IDや配管図は、それぞれのページを関連付けで確認しないといけません。
その繋がりの組み合わせは100や200どころではありません。
それを電子データ、詰まりパソコン上だけで確認していくのは時間がすごく掛かります。
やってできないわけではないけど不自由さを感じるはずです。
まるで2画面モニターに慣れた人が1画面に戻れないかのように・・・。
P&IDや配管図はしっかりチェックしないと、プロジェクトの成果が極端に悪いものになりかねません。
そこは大量の情報を同時に自由に閲覧でき、場所を選ばない、紙のメリットですね。
体系だった情報は紙や本
体系だった情報は紙や本がやはりメリットがあります。
プロジェクトの工事資料一式を集めてファイルをまとめ、棚や机の上に置いておく。
プロジェクトの工事段階のドタバタしやすい時期はこれで良いと思います。
それらの書類は工事が終われば、廃棄できます。
一次的なものです。
本も完全には無くなりません。
例えばプラント配管ポケットブックは今でも重宝しています。
配管寸法や重量だけでなく、バルブや断熱、サポートなどの情報も載っており
パラパラめくるだけでも、思わぬ発見があります。
そういう情報はキーワード検索のリンクでは見つからない場合も。
本のメリットの1つですね。
各種の官庁申請も紙が基本ですので、なかなかなくなりません。
特に頻度の多い消防法の危険物製造所等変更許可申請。
こういう書類が最後まで紙として残るでしょう。
現場資料は紙
現場で扱う文書は紙の方が良いでしょう。
電子化できそうな気もしますが、アプリ開発に時間が掛かったりメリットを見出せないようです。
こういう書類は紙から脱却するのはまだ難しいでしょう。
保存管理は電子
保存管理は電子が強いです。
電子データが省スペース・省資源と言われてメリットとして主張されていますよね。
化学プラントのエンジニアリングでも基本は同じです。
とはいえ、電子化が面倒だから紙の方が良いという極端な思考に行くのが、化学プラントのエンジニア。
0か100かではないのだから、うまく使い分ければ良いのに、基準では紙で保存することになっているから、紙で保存!
というように基準を盾に思考停止するのも、化学プラントのエンジニア。
100枚のA3の紙をPDFに取り込んで、ファイル名を変えて、特定のフォルダに格納する。
確かに面倒ですけど、100枚のA3の紙を5部印刷して紙を折って配布するということに比べれば圧倒的に楽なはずですけどね。
電子化する手間を何とかして創出すれば、紙で大量に保管したり廃棄したりする手間はなくなります。
こういうのはドキュメントコントローラという専門の人を雇うのが良いでしょう。
参考
最後に
化学プラントの機電系エンジニアと紙の関係を解説しました。
機電系エンジニアリングでは紙の文書を大量に扱います。
紙のメリット・デメリットを整理したうえで、電子化すべきものと電子化が進まない理由を解説しました。
現実的には紙と電子データの使い分けをして、電子データの割合を徐々に上げていくしかないでしょう。
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