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地震・火災・津波・洪水|化学プラントの緊急処置の思想

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天災関係が起きた時の緊急処置対応(Emergency response)について解説します。

製鉄所などでは地震が起きた時にフレアスタックのパージをしたりするのは、近隣地域に住んでいると割と常識的なことでしょう。

これは緊急処置の手順として定めています。

しかしこれを知らない一般の方にとっては、火事が起きていて工場は何もしていないように見えるでしょう。

安心してください。相当しっかり考えています。

バッチ系化学プラントではそういう目立った対応をすることがないのですが、天災が起きた時の対応は考えて訓練しています。

この記事を読むと、緊急時にどういう対応しているか理解することができます。

一言で言うと「止める」ですが、種類は様々。

緊急停止ボタンのイラスト

地震

まずは地震から解説します。

地震はいつ起きるかが分からないのが最大の問題。

まずは安全確保

何はともあれ、まずは安全確保です。

数分後には地震は収まるので、それから現状把握です。

生産設備

生産設備は地震が起きた時は、すぐに緊急停止の処置を行います。すなわち、

  • 原料供給遮断
  • 加熱源停止
  • 冷却

これらの処置を、考える余地なく最速で実施します。

DCSのボタン1つで自動的に実施できるような環境が整備されているでしょう。

緊急停止という1つの手順になっているはずです。

そのほかに、現場で火災が起きていないか・配管などから漏液が起きていないかを速やかにパトロールをして把握する必要があります。

緊急時には、現場パトロールの方がDCS操作よりも遥かに重要です。

用役設備

用役設備は、電気スチームに分けて考えます。

地震が起きた時は停電している可能性があります。

地震が起きるとまず安全状態を確保することが最優先なので、安全に停止できる処置が必要です。

これには電気が必要。

非常用発電機を常備しています。

この発電機の容量内で最低限の処置を行います。

すなわち冷却

とにかく冷却さえしてしまえば安全になることがほとんどです。

冷却しすぎて固まってしまって復元がとても難しくなるプロセスも存在しますが、暴走するよりはるかにマシ

地震が起きた時の最低限の電気の役割
  • 危険反応のプロセス反応器を撹拌し続ける
  • 冷却水供給ポンプを動かし続ける
  • 除害ブロアー・ポンプを回し続ける。

危険反応のプロセス反応器は運転中は温度が高いことが普通です。

これを冷却させるためには反応器を撹拌し続けないといけません。

非常用発電機のバッテリーがなくなるまで。ひたすら。

合わせてジャケットに冷却水を通し続けます。

とにかく冷やし続けます。

緊急処置の対応をしっかり考えている工場では、非常用発電機が使える時間と反応物の冷却時間を正確に把握して、発電機の容量が足りていることを確認しているはずです。

とても大事なこと。

電気とは違ってスチームはほぼ問答無用で停止する側です。

ボイラーが止まって自動的に復帰しないようにする工場もあるでしょう。

貯蔵設備

貯蔵設備は、とにかく停止することが使命です。

工場への原料を緊急停止するためには、貯蔵設備側でもカバーしなければいけません。

貯蔵施設にある屋外タンクは特に大容量の危険物を保有しているので、すぐにバルブを閉じて拡散漏えいを防がないといけません。

地震でバルブや配管が漏れている場合にも、防油堤で遮断できているかどうか確認しないといけません。

カバーする範囲が広いので、体力勝負です。言葉どおり走り回ります。

入出荷設備

入出荷設備も原料設備とほぼ同等です。

ローディングアームなどの専用設備が存在するため、それを遮断します。

タンクローリーや船などが多数存在する場合、それらを安全な場所に避難させることも必要です。

大変なのは出荷側。

多数のドラムや紙袋などが倉庫のラック上に山積みになっているでしょうが、高確率で崩れ落ちます。

並べ崩れ落ちた品は力仕事で並べ直していかないといけません。

袋が破けて拡散した場合は、回収して再処理をしないといけません。

どちらにしても大変。

現地工事

現地工事は問答無用で中止です。

火気使用工事や入槽作業などの特殊な作業を行っている場合があります。

火気使用工事は即停止。

残り火が無いことを確認します。

入槽作業中は、外に出ないで様子を見る方が良いです。

外で火災が起きていたり、危険な状態になっているのかどうか把握できないからです。

そのために入槽作業では外部に監視人を設けていると言っても良いでしょう。

車両を運転していた場合は、運転を中止し、振動が収まったら左側に停車。

足場工事や足場と使った高所作業をしていた場合は、足場の健全性を確認してから再開です。

足場工事中に地震とか想像したくもないですね・・・

火災

火災は天災としては考えにくい現象です。

運転時の事故としては想定される現象なので、消防訓練などを毎年定期的に行っているでしょう。

地震と違うのは発生範囲が狭いということ。

担当者と関係者を明確に分けて対応します。

生産設備

火災が起きた場合、その直近の生産設備は停止します。

意外かもしれませんが、火災が起きた時にその当該プラント運転員は火災処置に全力を費やしません。

プラント全体を安全に停止することに全力を費やします。

その周囲の生産設備が運転を少し止めて消火活動に応援を出します。

バッチプラントなので工程継続中ならほぼ様子見ができ、次の工程に移る手前なら待てば良いからです。

時間的余裕が作りやすいのはバッチ運転の良いところかも知れませんね。

そもそも連続運転なら常時時間が作れそうですが・・・。

用役設備

プラントで火災があっても用役設備は基本的に動かします。

用役設備で火災が起きた時は、逆にプラント側は全停止の処置に入ります。

地震と同じ格好です。

貯蔵設備

プラントで火災があっても貯蔵設備は変化ありません。

貯蔵設備で火災が起きた時は、貯蔵設備担当や周囲プラントから応援を出します。

入出荷設備

入出荷設備も貯槽設備と同じ考えです。

工事

工事で火災が起きた時は、工事作業者と当該プラントの担当者が消火活動を行います。

溶媒タンクの爆発など大事故でない限りは小火程度なので、初期消火で収まってしまいます。

津波

津波は基本的に地震と同じ対策になります。

想定する被害のパターンが地震とは違います。

生産設備

生産設備の停止パターンは地震と同じです。

生産設備が津波で被害を受ける場合なら、そのダメージは相当大きいです。

1階のポンプ等の設備はほぼ使えなくなっているでしょう。

部屋で囲われた部分も水没してしまって使えません。

時間的に生産停止の手順が取れない可能性がでてきます。

頻度が少ないですが想定する被害はとても大きいです。

対策を完ぺきにするには相当のコストが掛かりますね。

・・・というところで終わるパターンが多いでしょう。

用役設備

用役設備も地震と同じく基本的に停止です。

津波の場合は、冷却水ポンプが使えなくなるシナリオが一番痛いです。

東日本大震災の東京電力がこのパターン。

綺麗な水で浸水するのではなく、汚い海水で浸水してしまうのがやっかいなこと。

貯蔵設備

貯蔵設備も地震と同じような対応。

屋外タンクが津波で流されてしまうくらいの被害なら、もうどうしようもないですね。

入出荷設備

入出荷設備も地震と同じような対応。

製品はほぼ使えなくなるでしょう。

工事

工事は津波が来る前に停止して、安全な場所に避難することが原則です。

地震が先に来るので、津波としての対応はほとんどありません。

工事資器材が津波にさらわれてしまうという被害はありますが・・・。

洪水

洪水も地域によっては考える必要があります。

地震・津波とは違って時間的猶予が比較的長いのが特徴です。

というのも洪水は大雨で発生することが予想されるもので、注意報・警報が前もって分かっているからです。

注意報が来た段階で安全停止、警報が来たら避難

というような対応を構築していることでしょう。

洪水が起きた時の被害は津波に近い物があります。

参考

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最後に

化学プラントで地震が起きた場合でも、人命最優先です。

そのまま放置していると危険な状態になる可能性があるため、安定な状態に即移行させる必要があります。

そのためには、化学プラントでどのような設備を使っているか、その優先順位はどうなっているか、体系的にとらえる必要があります。

プラントエンジニアなら「水のポンプ」と安易に考えていても、工場心臓部の冷却ポンプと考えれば、重要度は一気に上がります。

これは特に若いうちは気が付きにくいので、強調しておきます。

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