水蒸気(steam)について解説します。
化学プラントではごく当たり前に使うスチーム。
スチームを使う理由や使いみちはエンジニアとしては是非とも理解しておきたいところです。
入社1年までの間に知っておきたいけど、実際は2~3年目で初めて知るという人もいるでしょう。
スチームもしくは水蒸気はどちらも同じ意味で使い、水の気体のことです。
蒸気は有機溶媒の気体のことを言う場合があり、水蒸気もしくは蒸気という表現は誤解を招きそうなのでなるべく使いません。
有機溶媒の気体はガスと呼びます。
- スチーム 水の気体
- ガス 有機溶媒の気体
加熱源
スチームは加熱源として使用します。
加熱源で真っ先に思いつくのは火ですよね。
化学工場では火は火災の原因となるので、運転中は普通は使いません。
有機溶媒に引火させる可能性があるからです。
火が使えないとなると、選択肢は急に少なくなります。
火の次に出てくる選択肢が、スチーム。
蒸気機関とかの歴史をたどると、蒸気(水蒸気)は古典的な加熱源と言えるでしょう。
スチームのメリットを紹介します。
- スチームは水なので燃える心配がない
- 保有熱量が大きい
- 飽和圧力と飽和温度が1:1で制御しやすい
化学プラントでは特に飽和水蒸気を好みます。
スチームは化学プラントでは以下のような場所で使います。
- 反応器のジャケットに加熱源として
- 配管トレースの加熱源として
- 水とスチームを混ぜて温水を作るため(水を温める)
- 水蒸気蒸留の加熱源として
バッチプラントでは反応器のジャケットにほぼ必ずと言っていいほど、スチーム配管を繋げます。
仮にプロセスでスチームを使わないとしても、です。
これは設備洗浄用ですね。
熱源として使用することから、配管の保温用にトレースにスチームを通すことも多いです。
最近では電気トレース7も使われだしていますが、一応現役です。
スチームの熱を使って水を温めて温水にするという方法も、加熱源としての利用ですね。
水蒸気蒸留は近年ではかなり減少しています。原理的には面白いです。
真空源
スチームは真空源として使用します。
- スチームエゼクタとして使用
スチームエゼクタが重宝されるのは
- スチームが高い圧力を持つこと
- 気体であること
- 凝縮すること
という性質があるからです。
近年では省エネ目的で水封式真空ポンプに代わることが多いです。
水封式真空ポンプでも高真空を得ようとすると、前段にスチームエゼクタは必要ですので、まだまだ現役ですね。
スチーム(steam)の周辺知識
スチームに関するトピックスのような周辺知識を紹介します。
ドレン
スチームは使用していると冷却されて水になります。
これをドレンと言います。
ドレンが混入したスチームを使っていると、運転にいろいろな不具合が出ます。
気体としてのスチームだけを送りたいのに、水としてのドレンが混じっていますからね。
伝熱性やウオーターハンマーなどの問題を引き起こします。
ドレンを排出するためにはスチームトラップが必要です。
スチームトラップは配管の組み方も大事です。
顕熱はあまり使用しない
スチームを加熱源として使用するとき、潜熱だけを考えます。
運転をしていると自ずと顕熱も一部は使われていますが、実質は潜熱だけです。
顕熱を利用しようとすると、スチームドレンの回収という方法になるでしょう。
ドレンを使って温水を作るというプロセスも実際にあります。
バッチプラントではスチームの使用量が少なく使用時間も安定していないので、バッファタンクを十分に持たせる必要があります。
連続プラントよりも難しい点の1つですね。
お金がかかる
スチームは加熱源としても真空源としてもお金が掛かります。
スチーム代 > 電気代
という関係があるからです。
電気で代用できる部分は、なるべく電気化しておく方が良いでしょう。
- 加熱源としては、例えばトレースは長期的には電気の方がメリットが出やすい
- 真空源としては、水封式真空ポンプでもかなりの真空が出せる
トレースは電気トレースの施工費や断熱の施工費が一般には高く、イニシャルコストとランニングコストの計算が大事です。
真空源はスチームエゼクタなら2段3段と複数段で組まないといけないので、スチーム代が掛かります。
ランニングコストではデメリットがあります。
スチームエゼクタは静機器なので、真空ポンプのような動機器に比べて故障しにくいという点がメリットでしょう。後は材質の問題。
参考
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最後に
化学プラントでスチーム(水蒸気)が大事な理由と使用箇所を解説しました。
火が使えない化学プラントでは加熱源としてスチームは重宝します。
反応器ジャケットやトレースなどに使います。
真空源としてスチームエゼクタにも使用します。
ドレン回収や費用面での問題もあるので、省エネの話題になりやすいです。
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