料理(cooking)を通じて化学プラントの操作を知ることができます。
私も料理はほとんどできません。
適当にクッキーを適当に作ったときに「あれ?これって化学プラント現場で既視感がある」とふと思いつきました。
機電系エンジニアで料理を自分からする人はあまりいないでしょう。
寮にいたら寮食もしくは外食、独り暮らしでもコンビニに依存、奥様がいる場合は手料理なんて言う例もあるかもしれませんね。
昼食でカップのインスタントラーメンなどを食べる人をよく見かけますが・・・。
食生活と料理が切り離されている感じがします。
今回、簡単なクッキーの作り方を化学プラントの操作と結びつける例を紹介します。
料理は身近な化学工学です。
こういうバックグラウンドがある人に対しては、化学プラントで行っていることは意外と説明しやすい気がしています。
お湯を入れるだけの世界から脱却したいですね。
クッキーの作り方(cooking)
超簡単なプレーンクッキーの作り方を例に、化学プラントの操作と結び付けましょう。
プレーンクッキーの作り方です。
- 卵を割ってかき混ぜる
- バターを溶かしておく
- バターと小麦粉と砂糖と卵をボウルに入れて混ぜる
- 手などで適当な形にしあげる
- オーブンで焼く
これくらいですね。
ざっくりしているでしょう。
ここから化学工学的に重要な要素を抽出してみましょう。
- 仕込方法
- 温度調整
- 撹拌
- 加熱
仕込方法
クッキーの原料を卵・バター・小麦粉と砂糖の3つに分割したとして、これボウルにそのまま投入すれば良いというわけではありません。
下準備が必要です。
例えば・・・
- 卵は予めかき混ぜていた方が、バター・砂糖と混ぜやすい
- バターは冷蔵庫に入れておくと硬いので、空気中で少し溶かしておく
- 小麦粉や砂糖は袋から計量カップに仕込んで大体の量を測る
という準備が必要です。
化学工学的には
- 卵を割る設備と、受け入れて撹拌をする設備が必要です。
- バターを保管する場所が必要です
- 小麦粉や砂糖を仕込み計量するための設備が必要です。
こんな工程が含まれるでしょう。
プロセスフロー
料理を意識していないと、ボウルで混ぜるという工程だけでもこんなイメージで考えるでしょう。
化学工学的には以下のような設備を必要とします。
いかがでしょうか。
化学プラントっぽくなりましたよね。
卵を割る工程とか卵の殻を捨てる廃棄の工程なんかも別にちゃんと考えます。
仕込みの順番が大事な場合は自動弁とシーケンスで順番を決めることもあるでしょう。
バターを溶かす工程も考えないといけませんね。
小麦粉と砂糖は同じ容器でまとめて計量するということもありえます。
その辺を細かく書いてみると、こんな感じになるでしょう。
立派なプロセスフローになりました。
料理をしながらこんなフローを頭の中に思い浮かべると、気の狂った人のような気がしますね。
小分け作業
砂糖や小麦粉を小分けする作業は、工場現場でも似たような操作があります。
砂糖や小麦粉の場合は
- 袋や樹脂の容器に入っている状態からスプーンで掬う
- 袋や樹脂の容器を傾けて小分けする
という作業をします。
スプーンで行うととても手間がかかりますね。
スプーンに相当するひしゃくにアース線を付けて静電気対策をするなど忘れがちな要素が増えます。
袋を直接傾ける場合、袋の持ち方を考えないと適切に仕込めないことを学べます。溢れますよね。
粉体の物性の違いも知ることができるでしょう。
砂糖は粉立ちしませんが、小麦粉は細かいと粉立ちします。
粉立ちすると洗浄しないといけません。製品の得量をロスします。
粉立ちしないように仕込み速度を調整することを覚えるでしょう。
こういう調整が発生するがゆえに、仕込み作業には一定の占有時間が必要です。
バターを溶かす
バターを空気で溶かすという工程をあえて入れてみました。
これはバターを冷蔵庫から取り出すという工程と、温度調整時間が必要なことを意識しています。
上記の小麦粉・砂糖の仕込みに一定の時間が必要であって、バターは空気中に一定時間放置する時間が必要ということから、
バターを空気中に置く → 小麦粉・砂糖を小分けする
という順番を明確に定めることが大事です。
工場的には、
バターを空気中に置く
タイマーをセットする
小麦粉・砂糖を小分けする
タイマーもしくは温度を見てバターが溶けたことを確認する
という作業が発生します。
実際にはバターを溶かす時間の方が遥かに長いですが・・・。
仕込みの順番
仕込みの順番は私はバターを最初にします。
というのもバターを溶かす工程を最初に実施したいから。
空のボウルにちょっと溶けたバターを入れて、ヘラで潰していきます。
そこに他の原料を一気に投入します。
順番は適当です。
この工程をそれっぽく表現すると以下のようになります。
- ステップ1バターを仕込む
- ステップ2撹拌する
- ステップ3卵・小麦粉・砂糖を仕込む
- ステップ4撹拌する
仕込みの前後で元の容器とボウルの両方を目視確認して仕込みができたことを確認する作業や、ステップ3で撹拌をしながら仕込むなと、運転と料理ではちょっと違う部分があるでしょう。
撹拌
ボウル内に原料をすべて投入したら撹拌工程に入ります。
ここは手動で行ってみましょう。
いろいろ分かります。
- お玉で混ぜるべきか、泡立て器で混ぜるべきか
- 撹拌速度はどれくらいに設定するか
- 撹拌方向は?
- バッフル効果を手動で機能させるにはどうすればいいか
手で混ぜるという作業をしていると、化学工学の撹拌のイメージを実際に体感できると思います。
設計者なら、撹拌機を設計する前に手で撹拌を体験しておきたいですね。
加熱
ここは機械が自動的に行うのであまり気にすることはありません。
同じことが化学プラントでも起きます。
全自動の機械なら人はチェックしない。
これはメンテナンス上知っておいた方が良いです。
設備が壊れた時、保全担当者は現場の人にヒアリングします。
でも現場の人は答えに詰まるでしょう。
当たり前です。
見ていないのですから。
それでも見ていないと正直に答えることはできません。
設備を使う側の責任として。
だからこそ回答に困ります。
全自動であるがゆえに監視機能を機械的に設置するなど、保全担当者は考える時代かもしれませんね。
後片付け
加熱時間で待っている間に大事な工程があります。
後片付けである洗浄工程です。
後片付けまでが料理です。製造です。
特にボウルはちゃんと掃除が必要ですね。
- 付け置きの洗浄効果
- 水の入れ替え
- 水の温度
- 手洗い
など洗浄に関わる影響を知ることができるでしょう。
ここだけなら掃除とくに風呂場の洗浄を経験する方が、設備の洗浄に近いイメージを抱けます。
後片付けという意味で、プロセスの判定条件を初期条件に戻すシーケンスを付けたり、机の上を片付けるという事務作業の基本だったりと、学ぶことは多いです。
参考
最後に
機電系エンジニアは下手をすると家庭科の調理実習以外で料理をしたことがないという人もいます。
それでも生活上は困りませんが、料理から化学工学を体験することは可能です。
実生活を豊かにするだけでなく、実務の習得速度も上げられる。
クッキー程度の簡単な料理でも学びはいっぱいありますよ。
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