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化学工学

晶析の超基礎的な部分だけ機電系エンジニア向けに解説

晶析 化学工学
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晶析(crystallization)について解説します。

この辺りの話を理解しようとすると、化学的にとても専門的な内容になってしまい、機電系エンジニアは敬遠しがちな内容です。

事実、知らなくてもプラント設計にはほとんど影響がないレベル。

それでも、知っていた方が良いかもしれない・・・という範囲に絞って解説します。

生産管理・プロセス開発・品質保証など、機電系エンジニアでも製造プロセスを知りたい人向けの、ちょっと背伸びした内容でしょう。

結晶取り出し

晶析とは、溶液中から結晶を取り出すことを言います。

結晶(crystallization)

機電系エンジニアとしてはこの表現ではとても分かりにくいでしょう。

そのプラントの最終製品が粉体である場合には、晶析はその手前に必ずと言っていいほど発生する工程です。

プラント内で各種の化学反応を行って、溶液中に最終製品が溶けている状態まで到達します。

ここで晶析を行って、溶液中から粉体を取り出します。

これを濾過・乾燥させて最終製品とします。

その意味で、

晶析→濾過→乾燥

という流れは1セットと考えて良いくらいです。

プラントの最終製品が液体なのか粉体なのかを知らないエンジニアは意外といます。特にバッチ系では製品が複雑で、1つのプラントをずっと見れるわけでもないから後回しにしてしまいます。それでも一応は仕事を進めることができてしまいます。

晶析(crystallization)の方法

晶析と一言でいっても、方法はいくつか存在します。

冷却晶析

冷却晶析は温度を下げて結晶を得る晶析方法です。

晶析というと、一般にはこの方法が最初に思いつきます。

温度が下がる → 溶解度が下がる → 結晶が析出

という原理を使っています。

飽和溶解度以上の粉体が存在すれば、溶液中には溶けずに結晶として現れます。

理科の実験で塩水などで経験した記憶がある人もいるでしょう。

蒸発晶析

蒸発晶析は溶媒を蒸発させて晶析する方法です。

結晶の飽和溶解量 = 溶液に対する粉体の飽和溶解度 × 溶液量

という関係から、溶液量を少なくしてしまおうという発想です。

冷却晶析は前者の飽和溶解度を変える操作でしたね。

酸析

酸析は溶液のpHを下げることで、結晶を析出する方法です。

最初に酸析という単語を聞いたときは、晶析と違う特別な方法だと思い込んでいました。

深く考える必要はなく晶析の一つと捉えていれば良いでしょう。

pHが下がる → 溶解度が下がる → 結晶が析出

溶解度がpHによって変わるという性質を利用したものです。

逆にアルカリ側に持って行って晶析する方法もあるでしょう。

この辺は、機電系エンジニアとしては深く考えない方が良いです。

晶析をするときに、プロセス液以外に酸やアルカリを投入していたら、pH調整をしていると思っているくらいでちょうど良いでしょう。

塩析

塩析は食塩などの塩を投入することで、結晶を析出させる方法です。

これも溶解度を変える作業になります。

晶析(crystallization)で気を付けたいこと

機電系エンジニア的には晶析を行うプロセスは、あまり重要視しないことが多いです。

設備の能力的に大事な、圧力や温度が一般にはシビアでないから。

この瞬間に、甘く見てしまいがちです。

ケアすることは結構あって、意外と工事も多くなりますので注意しましょう。

温度調整

晶析を行うプロセスでは温度調整は重要な要素です。

溶解度が温度に直結するという話もそうですが・・・

晶析によって結晶が析出すると温度が上がる場合があるからです。

結晶化熱と呼んだりします。

温度が上がる → 溶解度が上がる → 結晶が溶ける

というプロセスを経てしまったら、せっかく目的物として得たい粉体の量が少なくなって、損をする運転となってしまいます。

この意味で温度調整がとても重要。

設備的には、加熱・冷却のための温水・冷水だったり、温度調整の自動弁・調整弁・計器が必要になります。

設備を構成する配管も多くなり、配管設計で意外と困る部分です。

撹拌機

撹拌機の形状やバッフルの形状は、晶析の重要な要素の1つです。

形を少しでも変えてしまうと、結晶の形が変わって運転が変わってしまうという場合もあります。

特に既存設備の更新をする場合には、注意しましょう。

逆に何でも既存と同じ形状にすると思想が固定化してしまうと、本来なら形状を変更できたチャンスを無くしてしまいます。

結晶投入

結晶投入の設備は、晶析ではとても大事です。

晶析では単純に冷却や蒸発などの操作をするだけではなく、結晶の種を投入する場合があります。

溶解度を超えたから急に結晶が出るわけでなく、他の固形分などによるが必要となる場合が多いです。

この核として、結晶そのものを使うという方法です。

装置に投入することになるので、専用の投入設備が必要になります。

参考

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最後に

晶析について化学プラントの機電系エンジニアが知っておいた方が良い部分を解説しました。

溶液の溶解度を利用して目的の結晶を得る方法で、冷却・蒸発・pHなどを操作します。

温度調整・撹拌機の形状・結晶投入などの装置が必要で、配管設計で意外と困ることになります。

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