腐食(corrosion)をちょっとでも防ぐための現場レベルの対策を紹介します。
化学プラントでは多数の腐食性薬液を扱います。
鉄やステンレスの材質の設備や配管を巧みに使い分けるのが、機械系のエンジニアの仕事。
知識体系としては学問的なアプローチで習得可能ですが、現場レベルでの対応となると次元が異なります。
乾燥
乾燥は腐食を防ぐ現実的な対策です。
水があると腐食しやすくなります。
腐食を電池反応として考える場合、水が電気のやり取りを促進する効果を持ちます。
腐食を少しでも抑えたいなら乾燥させましょう。
どちらも物理的な液たまりを除去する効果だけでなく、空気中の水分も除去する効果があります。
掃除
掃除も立派な腐食対策です。
ゴミやチリ埃がついたままの設備は腐食が速く進みます。
これは水を貯めこむ要因となり隙間腐食を誘発すると考えるのが分かりやすいでしょう。
金属表面で局部的な電池反応ができて腐食生成物を作る要因ともなります。
ちょっと掃除するだけ。
ところがその掃除がとても面倒です。
腐食を考えるべき装置や配管がとても多いからです。
タンク内に入って手洗いで装置内のスケーリングを取り除くなど、特定の部分に限って掃除をするくらいが限界でしょう。
塗装
塗装は腐食の進行を止めるための有効な対策です。
塗装が剥がれてきたら、塗装を剥がして塗りなおしをマメにすることが大事です。
鉄板床に対する塗装はマメに行うでしょう。
SDMのたびに計画的に床塗装をします。
ペンキ塗装だけでなくメッキも対策が必要です。
一部の配管やダクトなどに亜鉛メッキを掛けていますよね。
防食材
腐食をちょっとでも防ぐために、防食材を施工することがあります。
典型例が埋設配管の外側のテープ。配管とサポートにも使います。
鉄でもステンレスでも使えます。
配管・サポート・Uボルトのシステムを考えると、配管材質とサポート・Uボルトの関係は以下のような感じになるでしょう。
配管 | 鉄 | ステンレス |
サポート | 鉄 | 鉄 |
Uボルト | 鉄 | 鉄 |
ここで、システム全体が鉄である方が実は好ましいです。
配管がステンレスだからと言って、サポートやUボルトが鉄の場合はちょっと注意。
異種金属接触腐食が起こります。
雨や水などで鉄とステンレスの間をつないでしまうからですね。
鉄のサポート・Uバンドが腐食するだけならまだいいのですが、ステンレス配管を腐食してしまう場合があります。
目に見えないけど危険です。
それを嫌がるために配管に防食テープを巻くという発想は大事なこと。
ちょっとした一手間ですが、配管施工時でないとできないことです。
いったん施工してしまうと後で行うとしたら時間や手間がかかります。
工事基準として定めたいレベルの話ですね。
板厚を上げる
腐食を抑えるということと直接的な関係はありませんが、板厚を上げることは1つの対策になります。
腐れ代
板厚を上げる思想は腐れ代に見られます。
圧力容器の強度計算で登場する考え方です。
有名なJIS B 8265「圧力容器の構造」ですね。
腐れ代は特段の要望が無ければ腐食が予想される部材で1mmの設定をします。
強度計算結果で、最高使用圧力に対する板厚が10.6mmであったとして腐れ代1mmを考慮して
10.6 + 1.0 = 11.6 → 12mmの板厚
というような選定をします。
腐食速度
腐れ代は腐食速度からくる考え方です。
腐食速度はmm/yという単位できまる1年間に予想される腐食量のこと。
~0.05mm/y | 腐食しない |
0.05~0.13mm/y | わずかに腐食 |
0.12~0.25mm/y | 腐食される |
腐れ代1mmで腐食速度0.25mm/yというと1/025=4年で持たなくなるという意味。
これって怖すぎますね。
0.05mmyなら1/0.05=20年。
これくらいは持たせたいと思うのがエンジニア的な発想でしょう。
プラントなら30年と言わず40年は持たせたいと思うので、設備も20年は持たせたいでしょう。
全面腐食
板厚を上げることそのものは腐食対策ではありません。
間接的な対策として採用することがあります。
塩が多い水に対する設備や配管として鉄製で板厚を上げるという発想です。
ステンレスの場合、塩濃度が高かったり温度が高いと応力腐食割れの可能性があります。
鉄だと、全面腐食を期待するので板厚を上げた方がいいだろうという設計です。
ステンレス材の単価と鉄材の使用量とのバランスで設備費用が決まってきます。
予想寿命と交換費用を天秤にかけた設備のライフサイクル。
腐食(corrosion)は自然反応
腐食は自然に起こる反応です。
化学反応はエネルギー的に低い状態に移ろうする方向に自然に動きます。
鉄は酸化鉄の状態が安定しています。
酸化鉄だと錆びだらけなので人間が有効に活用することができません。
そこでエネルギーを加えて酸素を取り除き、純粋な鉄の状態にして各種加工を行います。
鉄は自然界に置いておくと酸素と反応して酸化鉄に戻ろうとします。
自然な現象です。
現場レベルでできる対策はこの自然現象にどれだけ逆らおうとするかという、泥臭い対策になります。
それでも投資を削減して寿命を延ばせるので、会社としては非常に大事なことですね。
参考
最後に
化学プラントの現場レベルでできる腐食対策について紹介しました。
乾燥・清掃・塗装・防食材などがあります。
装置全部に対してカバーすることは非現実的ですが、洗浄作業や工事作業の一つとして標準化したい部分もあるでしょう。
板厚を上げるというのも間接的には腐食対策になります。
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