化学プラントや工場で大量の熱を効率よく冷やすために欠かせない設備、それが冷却塔です。冷却塔は一見すると屋上や外周に設置された普通の設備に見えますが、水の蒸発原理を活かした重要な冷却装置です。
本記事では、冷却塔の基本原理から構造、循環水の管理方法まで、初心者にもわかりやすく解説します。
この記事は、塔シリーズの一部です。
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冷却塔の役割
冷却塔の原理を解説します。冷却塔は水を冷却するための設備です。冷水塔と呼ぶ場合もあります。

一般には循環する水を冷却するために使います。例えば化学プラントでは下のようなループを辿ります。

プラントで発生した熱を循環する冷却水で吸収して、循環水は暖かくなります。これを冷却塔(冷水塔)に送り、冷えた循環水を再度プラントに送ります。
こうして、冷却塔周りの水は循環するので、循環水と呼ぶこともあります。丁寧に言うと冷却塔循環水となりますね。冷水をチラー水と呼ぶのと同じく、間違えやすいので適切に使い分けましょう。冷却塔循環水はプラント以外にも、冷凍機の冷却源としても多用します。
冷水の冷凍機を冷却水で冷やす。こんな風に書けばちょっとした混乱を招きそうです。
チラー水の冷凍機を冷却塔循環水で冷やす。こう書くと誤解する確率は下がるでしょう。
冷却塔の原理
冷却塔の原理を紹介します。蒸発の原理を利用しています。水と空気が接触している状態をイメージしてみましょう。

あたかも、100%の水と100%の空気という完全に別の物質が接触しているように見えますよね。ところが、空気には水が一定量含まれています。空気には水の蒸気が含む力があり、能力以上の水の蒸気がある場合は液体の水として排出されます。これが雨となって地面に降り注ぎます。
- 水はその温度に応じた蒸気圧を持つ
- 空気には水を保有する力がある(湿度)
空気よりも多少暖かい水が空気と接触すると、どうなるか見てみましょう。

空気より暖かい水は、空気と接触すると蒸発しようとします。この蒸発の具合は、水の温度と空気の温度・湿度に関係します。水が蒸発するためには、蒸発熱が必要です。この蒸発熱は水自身から供給されます。
言い方を変えると、水の一部が蒸発すると残りの水の温度は下がります。この原理を使って、水の温度を下げるのが冷却塔の原理です。夏に玄関先に打ち水すると涼しいのも、蒸発の原理を使っていますね。
冷却塔の構造
冷却塔の構造を紹介しましょう。水の蒸発をできるだけ促進するのが、冷却塔に求められる機能です。水の蒸発をさせるためには、水と空気をできるだけ多く接触させると都合がいいです。こういう時に登場するのが分散の機能。

空気と水が接触するような領域を設けるのが、冷却塔には必要です。同じような発想で、気液接触をするために充填塔がありますね。
全体図
冷却塔の全体図を見てみましょう。

上に取り上げた水と空気の接触は充填物で行います。充填物の機能はプレート熱交のような波型の板で作る(開放式)か、チューブのような物で作るか(密閉式)に分かれます。
水が自然落下する現象を利用するため、充填物の上から循環水を流し下に抜けていきます。空気は水と接触させるために、充填物の下もしくは横から流し上に抜けていきます。空気は蒸発熱をもらって温度が上がることで密度が下がり、上に抜けようとします。空気の流れを促進するために、上部にファンを設置して強制的な流れを作ります。
循環水入口
冷却塔の各部品の詳細を少し見てみましょう。まずは循環水の入口です。

循環水の入口部分には分散の機能が求められます。
上部まで配管で循環水を流しても、冷却塔の全体に循環水を流そうとすると分散版のような設備が必要になります。わずかに液を溜める箱を作り、上部にスリットを適切に配置し、スリットから液を流すようにします。スリット以外にもパイプで形成する場合もあるでしょう。この辺りも充填塔と同じです。
ファン
ファンは冷却塔の上部に設置します。

ファンは冷却塔の中心に設置して、ファンの回転で全周に均等な流れを作ろうとします。ファンが回転するために、冷却塔は円筒型の方が好ましいです。
ただし、大型になると据付面積的に損するので、角型の冷却塔も多く存在します。ファンは冷却塔の中心にあっても、モーターは中心から外した部分に付けます。モーターとファンを接続するためには、シャフトとギアで作るかベルトで接続します。
ベルトやギアはメンテナンスをうっかりと忘れ去られがちですが、冷却装置であり連続的に動かす設備なので疎かにしないようにしましょう!
循環水出口
循環水出口はそれなりに工夫が必要です。

循環水出口部は水を一定量貯めるプールの機能が必要です。
というのも、冷却塔起動時にはプラントなど負荷設備には水が入っていないからです。冷却塔の循環水をプラントに送る場合に、ポンプで送ることが普通。ポンプで送った循環水が再び冷却塔に戻るまでに、水が無くなってしまったらポンプが止まってしまいます。
冷却塔出口部のプールだけで足りないケースもあるでしょうから、専用のピットを準備する場合が多いです。通常は地面下にピットを付けますが、最近では地上に設置するパターンが出てきました。プールである循環水出口には、循環水の元である水を入れる接続口が必要です。
接続口には、ボールタップなどの制御装置を付けると便利です。水を入れ続けると充填物を水で覆ってしまって設備を故障させてしまうので、オーバーフロー配管を付けます。
もちろん払い出すための循環水出口も必要。使わないときのために液抜きも必要ですね。
オプション
冷却塔のオプション的な要素を解説します。現実的にはほぼ必須となるでしょうが・・・。
ブロー
冷却塔ではブローを考えます。これは水が蒸発するという冷却塔ならでは。
水は100%水というわけではなく、不純物を一定量含みます。水を蒸発させてもこれらの不純物は蒸発しません。循環水を冷却塔に通し続けていくと、水は少なくなり不純物は残り続けます。
水が少なくなると運転できなくなるので、水は補給します(ボールタップはここで活躍)。補給された水には不純物が含まれています。冷却塔を使い続けていくうちに、水の量は一定値を維持しつつ不純物だけが溜まり続けていきます。
これが運転に影響を与えるので、水と不純物を一定量捨てるブローをしないといけません。
水質管理
冷却塔の循環水は水質管理のために薬剤を投入します。これは、不純物によって設備が腐食したり閉塞したりするのを防ぐため。
蒸発した水を補給したり、水をブローしたりするうちに、薬剤の効果は薄くなるので定期的な補充が必要です。一般にはセンサーも含めて専用の投入装置を冷却塔に付属させます。
白煙防止
街中の冷却塔だと白煙防止を考えます。特に冬季では冷却塔の性能はとても高くなります。ファンを回さなくても、空気によって循環水は冷えます。循環水の温度と空気の温度の差があると、冷却塔の出口で白い煙が見えます。
排ガス焼却設備の出口の塔から白い煙が見えるのと同じ。水なので環境的には問題ないのですが、見た目の問題があります。白い煙が水であるかどうか知っているのは処理している人だけ。街中など一般の人には分かりません。あたかも物が燃えている可能用に見えてしまうことも。視界も遮ります。
これを解決するためには、白煙を出さないようにすることが必要です。対策としては温度差を無くすようなバイパス的な機能を持たせます。プラントの冷却塔といえども、街中に近いならば考慮は必要です。
参考
冷却塔は古い設備ですが、汎用的に使われます。
原理的には単純で面白いので、機械初心者が手を付けるには良い機械だと思います。
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最後に
冷却塔は、化学プラントや工場で水を効率的に冷却するための重要な設備です。水の蒸発熱を利用することで熱を取り除き、循環水として再利用可能にします。構造は水と空気の接触を最大化する設計がなされており、循環水の管理やブロー、水質管理、白煙防止なども運転のポイントです。冷却塔の基本を理解すると、他のプラント設備の理解も進みます。
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【著者:ねおにーーと】
化学プラントで20年以上、設計→製造→保全→企画まで一気通貫で経験したユーザー側エンジニア。 バッチプラントの設備・運転・トラブル対応を中心に、現場で本当に役立つ知識を発信しています。 → 詳しいプロフィールはこちら

コメント
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